介護保険の基礎知識 介護保険の基礎知識

さまざまな介護サービスを、1~3割の自己負担で受ける
ことができるのが「介護保険」です。

介護保険料を滞納していませんか?ペナルティと対応方法

介護保険料、滞納していませんか?恐ろしい3つの時系列ペナルティと対応方法

介護保険料、滞納していませんか?恐ろしい3つの時系列ペナルティと対応方法

介護保険料を滞納すると、恐ろしいペナルティを受けることをご存じですか。今、高齢者を中心に介護保険料の滞納者が増加しています。介護保険の未納を放置すると、滞納期間別に重さの異なるペナルティを課せられ、介護保険サービスの利用が難しくなるという重大な問題に発展します。どのような内容のペナルティか、また滞納期間別の対応について解説します。

目次

増加する高齢者の介護保険料の滞納

介護保険制度とは簡単に、介護を必要とする人を国内全体でサポートするために始まった制度です。原則、40歳以上の誰もが納める介護保険料などから、要支援者・要介護者に支援を行います。

  • 2016年度 13,371人(前年比32%増)
  • 2015年度 10,118人(前年比28%増)
  • 2014年度  7,900人

上記の値は、介護保険料を2年間以上の長期間にわたって滞納し、市区町村から資産の差し押さえを受けた人数です。

市区町村は差し押さえ処分をする前に滞納介護保険料の支払い督促を行います。差し押さえ前に滞納介護保険料を支払った人もいると推測され、滞納の経験がある人は上記の人数よりもかなり多くなると考えられます。

滞納者が増加している理由

介護保険料の滞納者が増加している理由の1つに単純に65歳以上の高齢者の増加が上げられます。しかし、ここ数年の高齢者人口増加率は前年比の2%から4%程度のため滞納者が増加している本質的な理由は別にあると考えた方が自然でしょう。

滞納者が増加する大きな理由としては、介護保険料が大幅に引き上げられてきたためと考えられます。

介護保険制度が開始した2000年4月の全国平均介護保険料は月額2,911円/1人(年額約3.5万円/1人)でした。しかし、介護保険料は、市区町村が3年ごとに見直しを行います。

その結果、それ以降の全国平均介護保険料は以下のように引き上げられていきました。

時期(年度) 月額(単位:円) 年額(単位:万円)
2000年から2002年 2,911 約3,5
2003年から2005年 3,293 約4
2006年から2008年 4,090 約4.9
2009年から2011年 4,160 約5
2012年から2014年 4,972 約6
2015年から2017年 5,514 約6,6

最初の介護保険料に対して2017年度は約1.9倍に増加。今後も2018年から2020年は月額6,771円(年額約8.1万円)、団塊の世代が75歳になる2025年が含まれる2023年から2026年には月額8,165円(年額約9.8万円)になると厚生労働省は予測しています。この数字は2000年の2.8倍です。

一方、高齢者の主な収入源である年金受給額は、2017年度と厚生労働省のデータで確認できる最も古い年度の2005年度の受給額は次のとおりです。

年金の種別 2017年度 2005年度
国民年金の満額受給者 年額約78万円/1人 年額約79万円/1人
厚生年金受給者 年額約133万円/1人 年額約140万円/1人

(注)厚生年金受給者の金額は、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金受給額を国民年金との比較のために2で割った金額です。

上記のとおり2005年度と2017年を比較すると、年金受給額が減少していることが伺えます。今後も増加することは考えにくいでしょう。さらに介護保険料の負担が重くなることが懸念されます。

うっかり未納を防ぐには介護保険料の支払い方法に注意

介護保険料は、65歳になるまでは会社勤務の人は給与から天引きされ、自営業者などの国民年金加入者は国民健康保険と一緒に徴収されます。そのため支払いを忘れることはありません。

65歳を過ぎると年金の受給額が18万円以上のときは、年金から天引きされますが、それ以下のときは納付書で支払うか、口座振替で支払います。年金からの天引きを特別徴収と呼び、天引きされない徴収方法は普通徴収と呼ばれます。

普通徴収の納付書による支払いでは、支払いを忘れる可能性があります。忘れると督促手数料や高い金利の延滞金を支払うことになるので忘れないようにしましょう。

介護保険料を滞納したときのペナルティ

普通徴収で介護保険料を納付期限までに支払わずに20日を経過すると市区町村から支払い督促状が届きます。督促状の納付期限に遅れると督促手数料と延滞金が加算される場合があります。

督促料や延滞金の金額計算は市区町村によって異なり、以下のような料金が発生します。

督促料(1回あたり) 100円
延滞金(翌日~1ヶ月未満) 年4.3%~14.6%増加
延滞金(1ヶ月以上) 年14.6%増加が一般的

ただし、介護保険料が2,000円未満の場合、延滞金はかかりません。また、延滞金の計算は1,000円未満の保険料は切り捨てて計算されます。そのため3,900円の場合、3,000円を基準に延滞金が計算されます。延滞金の計算の結果、その金額が1,000円未満であれば延滞金は発生しません。1,000円をこえると100円未満の端数は切り捨てられて請求されます。

未納期間が長く続くと滞納期間別に延滞金以外のペナルティが発生

介護保険料を1年以上滞納すると、督促料・延滞金以外に追加ペナルティが延滞期間別に課せられます。内容について次に紹介します。

3つの滞納期間別のペナルティ内容

  • ① 滞納期間1年以上1年半未満
  • ② 滞納期間1年半以上2年未満
  • ③ 滞納期間2年以上

① 滞納期間1年以上1年半未満

滞納が1年以上1年半未満になると、介護保険サービスを受けたときの利用料の支払い方法が変わります。滞納がないときはサービス料の1割(収入によっては2割)を支払うことで介護サービスを受けられましたが、全額を支払わなければ介護サービスが受けられなくなります。

また、全額支払いが完了しても、全額負担の9割は2カ月以上経過しないと戻ってきません。この支払い方法は償還払いと呼ばれます。なお、例外として滞納がなくても介護保険サービスが適用される住宅改修の費用は償還払いとなります。

② 滞納期間1年半以上2年未満

滞納期間が1年半以上2年未満になると、償還払いされる金額から滞納した介護保険料が徴収されるため必要な介護サービスの利用に支障がでる可能性があります。

③ 滞納期間2年以上

滞納期間が2年以上になると、自己負担金額が3割に引き上げられます。また、時効が生じ滞納した介護保険料を支払える余裕があっても支払えず、滞納期間に応じて3割負担でしか介護サービスを受けられません。その期間は高額介護サービス費の払い戻しも受けられなくなります。

もちろん、償還払いされる7割分からは滞納保険料が徴収されます。また最悪の場合、財産を差し押さえられて滞納保険料に充当される可能性もあります。

介護保険の支払いが困難と思われるときは早めの相談を

介護保険料の滞納を長く続けると介護が必要になったときに適切な介護サービスを受けにくくなります。経済的な理由で支払いが厳しいときは以下の2つの方法があります。

介護保険料の減免措置の申請

市区町村の介護保険の担当窓口に相談し、一定の要件に該当すると介護保険料の減免措置を受けられます。これにより滞納にならずに今までと同じ条件で介護サービスを利用できます。

生活保護の申請

介護保険料だけでなく生活そのものが経済的に厳しいときは、生活保護の申請を行いましょう。生活保護の受給に抵抗を感じる人も多いですが、生活保護が受けられると介護保険料分が上乗せして支給されます。

介護保険の滞納で困るのは未来の自分

介護保険料を滞納すると段階的に厳しいペナルティを受けることについて、その内容を紹介しました。滞納理由としては、うっかり支払いを忘れることもあるかもしれませんが、経済的な理由によるものが多いと思われます。その場合、行政に相談することで滞納を回避できる方法についても紹介しました。滞納による介護サービスの利用ができないと老後の生活に大きな支障がでます。本記事を参考に介護保険料の滞納を回避しましょう。

 
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