有料老人ホームの選び方 有料老人ホームの選び方

どの施設が自分に適しているのかを
知っておきましょう。

グループホームと特別養護老人ホームの違いとは?

「介護施設・老人ホーム」には、グループホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など、さまざまな種類があります。介護施設を探し始めたばかりの時期だと、施設の違いがよくわからない人も多いのではないでしょうか。

本記事では、とくにグループホームと特別養護老人ホームに注目して、施設の特徴や入居条件、費用面の違いなどを詳しく解説します。

目次

グループホームと特別養護老人ホームの特徴

前提として、介護施設・老人ホームは、民間企業が運営する「民間施設」と、地方自治体や社会福祉法人などが運営する「公的施設」の大きく2つに分けられます。「民間施設」には、有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅などがあります。

一方「公的施設」には、特別養護老人ホーム(以下、特養)、介護老人保健施設、ケアハウス(軽費老人ホーム)、介護医療院(介護療養型医療施設)の4種類があります。

これらをふまえたうえで、まずはグループホームと特養の特徴を確認していきましょう。

グループホームとは?

グループホームとは認知症高齢者の介護に特化した施設で、「認知症対応型共同生活介護」とも呼ばれています。グループホームの大きな特徴は、1ユニット(単位)5〜9名の入居者が介護職員とともに共同生活を送るという点です。

施設内では、ユニットごとにリビングルームを中心として、共有のキッチンやトイレ、浴室、個別の居室などが配置されています。各家庭に近い生活環境が認知症の進行を遅らせたり、症状を緩和させたりする効果があるとされています。

一方で、グループホームには看護師の配置義務はありません。
看護師がいない場合、医療行為が必要になった際に退去を検討することになる可能性があります。

【関連記事】
グループホームとは?

特養とは?

特養は、常に介護が必要な方を受け入れる公的な介護施設です。介護保険制度上では「介護老人福祉施設」と呼ばれます。特養は原則として終身で利用できる施設であり、「終の棲家」としての役割も担っているのが特徴です。居室は、共有スペースを個室が囲う「ユニット型個室」や、廊下に沿って個室が並ぶ「従来型個室」、複数人で1部屋を使用する「多床室」などさまざまなタイプがあります。

【関連記事】
特養と有料老人ホームの違いは?

グループホームと特養の入居条件の違い

次に、入居条件の違いを見ていきましょう。

グループホームの入居条件

グループホームの入居条件は、以下の4つを満たすことです。

・医師から認知症の診断を受けている
・原則65歳以上
・要支援2もしくは要介護1以上の認定を受けている
・施設と同じ市区町村に住居と住民票がある


ただし、65歳未満の方でも「初老期認知症」や「若年性認知症(若年性アルツハイマー)」と診断された方は入居できる場合があります。

特養の入居条件

特養の入居条件は、下記の通りです。

・65歳以上で要介護3以上の認定を受けている
・40~64歳で特定疾病が認められており要介護3以上の認定を受けている

また、要介護1・2でも、やむを得ない事情がある場合は特例として入居できる可能性があります。

グループホームでは「認知症の診断」「施設と同じ市区町村に住民票があること」、特養では「要介護3以上」が入居条件となっていることが大きな違いです。

グループホームと特養のサービスの違い

続いて、サービスの違いについて確認しましょう。

グループホームのサービス

グループホームでは、以下のようなサービスが提供されています。

・食事提供、介助
・入浴・排せつなどの介助
・生活支援(掃除や洗濯、調理、買い物代行など)
・レクリエーション
・生活相談
・リハビリテーション


グループホームでは、認知症ケアの専門的な知識と経験のある介護職員が常駐し、認知症の方に寄り添った生活支援や介護サービスが提供されています。認知症の進行抑制や筋力維持のために運動と脳トレを同時に行う取り組みも行われています。

また、掃除や洗濯、調理などの家事は、入居者の能力に応じて介護職員のサポートを受けながら共同で行われます。また、入浴介助や排せつ介助などの介護サービスは入居者の状態に応じて受けられます。

近年では、看取りへの対応も求められるようになってきているようです。

特養のサービス

特養では以下のようなサービスが提供されています。

・食事提供、介助
・入浴・排せつなどの介助
・健康管理や緊急時の対応
・生活支援(掃除や洗濯、調理、買い物代行など)
・レクリエーション
・リハビリテーション、機能訓練
・看取り

寝たきりなど要介護度の高い方が多い特養では、入居者の身体状況に応じた手厚い介護サービスが提供されています。

また、身体をほぐすマッサージやリハビリテーション、レクリエーション、イベントなどが実施され、なかには機能訓練に対応できる施設もあります。

さらに、看取り体制が整っている施設では、個人や家族の希望を尊重した看取りケアが行われています。

サービスの違いをまとめると、グループホームは認知症の方へのケアが手厚く、個人の残された能力を発揮できるように介護職員がサポートする形でサービスが提供されています。

一方、特養では主に要介護3以上の方に対する身体的な介護を中心にサービスが提供されています。

グループホームと特養の費用面の違い

次に、費用面からグループホームと特養の違いをみていきましょう。

グループホームの費用

グループホームには「初期費用」と「月額費用」の2つがあります。

●グループホームの初期費用

入居時にかかる初期費用は賃貸住宅の敷金のようなもので、多くのグループホームでは、「入居一時金」または「保証金」などと言われています。

初期費用には返還金制度があり、一定の期間内に退去すると施設ごとのルールに基づいて返還金が受け取れます。

「入居一時金」は、施設利用の権利を得るために支払う費用として位置づけられており、以下のような名称で示されていることもあります。

・入居金
・入居保証金
・入居申し込み金
・終身利用権
・施設協力金 など

「保証金」とは、一般的な賃貸物件の「敷金」に相当する費用のことです。居室の修繕費、退去時の清掃費、家賃の滞納がある場合に差し引かれた金額が退去時に返金されます。

金額や償却期間、返還の有無は施設によって異なります。

【関連記事】
費用の仕組み

●グループホームの月額費用

グループホームの月額費用の内訳は次の通りです。

(1)介護サービス費
(2)サービス加算
(3)日常生活費


(1)介護サービス費
介護サービスを受ける際に発生する費用のことです。介護保険が適用されるため、所得に応じた1~3割の自己負担が発生します。

(2)サービス加算
グループホームでは、施設がサービス体制を強化した場合に「サービス加算」として追加費用が請求されることがあり、これも月額費用に含まれます。

(3)日常生活費
日常生活費として、以下のような費用がかかります。日常生活費には介護保険が適用されないため、全額自己負担です。

・居住費(賃料)
・食費
・光熱費
・雑費(おむつ代、理美容代、レクリエーション代) など

【関連記事】
グループホーム費用・料金

特養の費用

特養への入居時に必要な費用は「月額費用」のみで、初期費用はかかりません。また、特養などの公的施設では、所得に応じた利用料の負担軽減制度が設けられています。

厚生労働省の資料には、対象者の要件が下記のように記されています。

軽減の対象者は、市町村民税世帯非課税であって、次の要件の全てを満たす者のうち、その者の収入や世帯の状況、利用者負担等を総合的に勘案し、生計が困難な者として市町村が認めた者とする。

① 年間収入が単身世帯で150万円、世帯員が1人増えるごとに50万円を加算した額以下であること。
② 預貯金等の額が単身世帯で350万円、世帯員が1人増えるごとに100万円を加算した額以下であること。
③ 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと。
④ 負担能力のある親族等に扶養されていないこと。
⑤ 介護保険料を滞納していないこと。

出典:厚生労働省『社会福祉法人等による利用者負担軽減制度について』

●特養の月額費用

特養の月額費用の内訳は次の通りです。

・施設介護サービス費
・居住費(賃料)
・食費
・日常生活費

施設介護サービス費とは、施設で受ける介護サービスにかかる費用のことです。介護保険が適用されるため、所得に応じて1〜3割の自己負担が必要です。

また、公的施設の居住費と食費は、国が水準となる金額(基準費用額)を定めているため、高額な請求をされることはありません。

なお、公的施設で使用するおむつや尿取りパットの代金は、施設側が負担します。

費用面の違いをまとめると、民間施設であるグループホームに入居する場合には「初期費用」と「月額費用」が必要となります。一方、特養で必要な費用は「月額費用」のみで、所得に応じた介護保険の負担軽減制度も利用できるため、民間施設と比べると安い費用で入居できます。

【関連記事】
特別養護老人ホーム 費用・料金

グループホームと特養の人員配置の違い

老人ホームなどには職種や人数について、スタッフの人員配置が定められています。こちらでは、グループホームと特養の人員配置の違いについて確認しましょう。

グループホームの人員配置

グループホームの人員配置には、次のような基準があります。

・昼間の時間帯:入居者3名に対して介護職員1名
・夜間の時間帯:ユニットごとに介護職員1名


また、グループホームでは介護職員のほかに、施設管理者とケアマネジャーの配置が義務づけられています。

特養の人員配置

特養の人員配置は、以下のように定められています。

・入居者3名に対して介護職員もしくは看護職員が1名以上


ただし、夜間帯(22時から翌5時まで)の人員配置はこの限りではなく、職員数が少なくなる施設も。

また、特養では介護・看護職員のほかに施設長、医師、生活相談員、機能訓練指導員、ケアマネジャー、栄養士などさまざまな職種の配置が義務づけられています。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省『介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)』

まとめると、特養では医師・看護職員の配置が義務化されていますが、グループホームでは定められていない点が大きな違いです。

【関連記事】
介護施設の「人員配置基準」とは?職員体制が充実している施設を探すときの注意点も解説

グループホームと特養のメリット・デメリット

ここでは入居する場合のそれぞれのメリット・デメリットを確認していきましょう。

グループホーム

●メリット

・認知症ケアに関する専門的な知識や経験がある介護職員がいる
・少人数制でコミュニケーションが取りやすい
・住み慣れた地域で生活を続けられる


グループホームでは認知症ケア専門の介護職員が常駐し、適切な対応をします。そのため、認知症の進行予防や症状の緩和が期待できます。

また、1ユニット5〜9名の少人数で生活を送るため、ほかの入居者や職員とコミュニケーションが取りやすいこともメリットです。さらに、住み慣れた地域で生活を続けられるため、親戚や友人などが訪れやすく、大切な人や地域とのつながりを感じながら過ごせます。

●デメリット

・特養より費用が高め
・定員が少ないため、入居まで時間がかかる
・医療的ケアが必要になると退去を求められる場合がある


グループホームでは入居時に初期費用がかかることや、所得に応じた負担軽減制度を一律で利用できないなど、特養より費用が高くなる傾向にあります。

また、入居者の入れ替わりが少なく、申し込みをしても入居までに時間がかかるケースも。

加えて、グループホームは基本的に日常生活を送るための介護施設なので、医療体制という点では十分とは言えない施設が多く、日常的に医療的ケアが必要となった場合には退去を求められる可能性があります。

特養

特養に入居する場合のメリット・デメリットは以下の通りです。

●メリット

・費用を安く抑えられる
・介護度の高い人が入居できる
・原則、終身で利用できる


特養に入居する大きなメリットは、公的施設であるため費用を安く抑えられる点です。

また、主に要介護3以上と認定された方を対象とした施設であるため、寝たきりや看取りケアなど要介護度の高い人や介護者のいない方(あるいは介護できない状況の方)などが優先的に入居できます。一度入居すると、原則、終身で利用できることも特長と言えるでしょう。

●デメリット

・入居できるまで数か月〜数年かかることも
・入居条件が基本的には要介護3以上の人に限られる
・医療依存度が高くなると退去せざるを得ない場合がある


特養は初期費用なしで入居できる施設のため入居希望者が多く、申し込みをしても、施設によっては入居できるまでに待機期間が必要な場合があります。

また、入居条件が基本的には「要介護3以上」と定められているため、誰でも入居できる施設ではありません。
さらに、特養は「生活施設」であるため、医療依存度が高くなった場合には退去を求められる場合があります。

グループホームと特養のメリット・デメリットをまとめると、グループホームは認知症ケアに特化していることがメリットである一方、特養よりも月額費用が高めであることが多いです。

逆に、特養は常時介護が必要な高齢者が少ない費用負担で入居できますが、入居できる対象が主に要介護3以上に限られており、入居待機者も多くいるのが現状です。

グループホーム・特養の選び方と注意点

次に、グループホームと特養を選ぶ際に注意するポイントを解説します。

グループホームの注意点

ここまでの内容をふまえて、グループホームを選ぶ際には、以下のポイントに注意しましょう。

・医療的ケアには対応できない
・少人数での共同生活となる
・費用が予算内であるか


グループホームは医療・看護スタッフの配置義務がないため、日常的に医療的ケアが必要な人は入居を断られる場合があります。

また、少人数で共同生活を送ることになるため、誰かと一緒に過ごすことが苦手な方はストレスを感じる可能性があります。

さらに、グループホームの費用は施設によって異なるため、事前に確認して予算内で支払いができる施設を選ぶようにしましょう。

特養の注意点

特養を選ぶ際には、以下のポイントに注意しましょう。

・高度な医療ケアが必要な方には対応できない
・入居できるまで待機期間が生じる(いつ入居できるかわからない)
・ユニット型の特養は費用が高くなる


特養には医師の設置義務がありますが、毎日医療ケアが必要な人など医療依存度が高い場合には入居を断られる可能性があります。

また、入居希望者が多く、申し込みをしてもすぐに入居できないため待機期間が長くなる場合があります。

さらに、「ユニット型個室」の特養は、「従来型個室」と比べると費用が高くなる傾向にあるため、契約前に確認が必要です。

サービス内容やその目的、費用感などに大きな違い

グループホームと特養を比べてみると、ケアの目的の違いから、対象者や提供するサービス内容、生活スタイル、人員配置、費用感などに違いがあることがわかりました。

介護施設を探すときには、こうした施設ごとのメリット・デメリットをしっかりと理解し、本人や家族の希望条件と照らし合わせて判断しましょう。

また、公的施設と民間施設でも特徴や条件などは大きく異なります。どちらが適しているかを検討したうえで、そのなかからどの施設が合うかをケアマネジャーや家族と相談しながら決めましょう。

さがしっくすでは、電話での問い合わせにも対応しています。施設探しで気になることやお困りのことがありましたら、どうぞお役立てください。

【関連記事】
養護老人ホームとは?

 
ページトップ