介護保険の基礎知識 介護保険の基礎知識

さまざまな介護サービスを、1~3割の自己負担で受ける
ことができるのが「介護保険」です。

介護保険施設とは?受けられるサービスの種類や特徴

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介護保険施設とは、介護保険サービスで利用できる公的な入居施設のことです。同施設には、 特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(療養病床)、介護医療院の4つがありますが、それぞれがどのようなサービスを受けられる施設かをご存じの方は、意外に少ないのではないでしょうか。今回は、介護保険施設のサービス内容や特徴を解説します。ご自身に合った施設へ入居するためにも、よく理解しておきましょう。

目次

介護保険施設とは?

介護保険施設とは、介護保険法に基づき、介護保険サービスで利用できる公的な入居施設です。介護保険施設を利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。また、要介護度によって利用できる施設や負担する費用は変動します。

介護保険施設は公的な施設を指し、入居時の初期費用は発生しません。また月額費用についても、民間の老人ホームと比較して割安となっています。ただし施設によっては、ユニット型個室の利用で費用が高くなることもあります。

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介護保険施設にはどのような種類がある?

介護保険法で指定された施設は、以下の4種類です。

  • (1)特別養護老人ホーム(特養)
  • (2)介護老人保健施設(老健)
  • (3)介護療養型医療施設(療養病床)
  • (4)介護医療院

ここでは、この4つの施設について特徴を簡単に解説します。

(1)特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養)は、病気や障害などにより長期にわたって介護を必要とする高齢者を受け入れ、食事や入浴、排せつなどの介護サービスを提供する施設です。「特別養護老人ホーム」は老人福祉法上の呼称であり、介護保険法では介護老人福祉施設と呼ばれています。

特養で受けられるサービスとしては、主に以下の項目があげられます。

  • ・食事の提供
  • ・部屋の清掃
  • ・入浴介助
  • ・排せつ介助
  • ・レクリエーションやイベント
  • ・看取り(施設による)

特養は、寝たきりや認知症など、自宅での介護が困難な方も入居が可能です。そのため、地域や時期によって差はあるものの、ご入居待ちの期間が比較的長くなる傾向にあります。

一方で、医師の常駐は義務付けられていません。また、看護師の配置数も他施設より少なく、夜間常駐は基本的にありません。このため、途中でたん吸引・胃ろうのような医療処置が必要になった場合、施設によっては退去を求められ、ほかの施設に移らなくてはならないケースもあるので注意が必要です。

特養の入居条件は、2015年4月より基本的に要介護度3以上の高齢者に限定され、やむをえない理由がない限り、要介護1・2の方はご入居ができなくなりました。

(2)介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設(老健)は、病院を退院したものの自宅での暮らしに不安が残る高齢者向けの施設です。施設にはリハビリの専門家が常駐しており、医療的なケアと合わせて在宅復帰のためのリハビリを行うことを目的としています。

老健で提供されるサービスとしては、主に以下の項目があげられます。

  • ・食事の提供
  • ・入浴介助
  • ・排せつ介助
  • ・医療ケア
  • ・機能訓練(リハビリテーション)

老健の入所条件は、要介護度1以上の高齢者です。要支援1・2の高齢者はご入所できません。

なお、老健はあくまで在宅復帰を目指す施設であるため、在宅復帰が可能と判断された時点で退所を求められます。そのため長期的なご入所を望む方には向きません。

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(3)介護療養型医療施設(療養病床)

介護療養型医療施設(療養病床)は、医療的なケアやリハビリが充実した施設です。食事や入浴・排せつといった日常生活上で必要な介護サービスも提供されています。

しかし要介護度1以上から入所が可能であったり、予想以上の長期入所者の多さから、社会保障費や医療費を圧迫する一因として指摘されていました。また、療養型病院との区別が明確にできておらず、利用する人にも差がなかったことなどを理由として、2024年3月以降は廃止されることが決定しています。

(4)介護医療院

介護保険法改正に伴い、2018年4月に長期的に医療ケアを必要とする方の入所先として「介護医療院」が新設されました。介護医療院はⅠ型とⅡ型に分けられており、Ⅰ型は慎重な身体管理が必要な身体疾患を抱える方や、認知症高齢者の方が入所する施設、Ⅱ型はⅠ型よりも容体が比較的安定した方が入所する施設とされています。

介護医療院の提供するサービスとしては、主に下記の項目があげられます。

  • ・食事の提供
  • ・入浴介助
  • ・排せつ介助
  • ・機能訓練(リハビリテーション)
  • ・専門的な医療ケア

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介護保険施設の特徴と受けられるサービスの種類

以下、廃止予定の介護療養型医療施設を除く3つの介護保険施設の主な特徴と、提供されるサービスの種類を表にまとめました。

特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 介護医療院
主な目的 常時介護が必要な要介護度が高い高齢者の受け入れを行う 主にリハビリを行うことで在宅復帰を目指す 専門的な医療やリハビリを行い在宅復帰や在宅支援を目指す
要介護度 3以上 1以上 1以上
日常生活上
必要な介護
医療ケア
認知症の
受け入れ
リハビリ
レクリエーション
看取り

「△」は施設ごとに対応に差があることを表します。また「◎」は、特に手厚い対応が受けられること、特に充実していることを表します。

それぞれの介護保険施設はどのような方におすすめ?

最後に、それぞれの介護保険施設がどのような方におすすめできるか、特徴をふまえて解説していきます。

特別養護老人ホームはこんな方におすすめ

身体的・精神的に著しい障害があり重度の要介護度で、常時介護が必要な高齢者向けの施設です。ただし施設によって医療ケアが充実していない場合があるので、たん吸引や経管栄養などの医療的な処置が必要な場合は、ご入居できないこともあります。

介護老人保健施設はこんな方におすすめ

介護老人保健施設の目的は、あくまで在宅復帰です。病院を退院して症状は安定しているものの、在宅復帰が難しいと感じる方に向いています。施設では、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などの専門家によるリハビリを受けることも可能です。一方で、在宅復帰が可能になったと判断された場合は退去を求められるため、長期的なご入所を希望する方には向きません。

介護医療院はこんな方におすすめ

介護とあわせて、高度な医療ケアを必要とする高齢者に向いている施設です。ほかの介護施設で対応できない医療ケアが必要な場合も、介護医療院であれば受けられる可能性があります。

一方、介護医療院は医療ケアが中心となる施設です。専門的な医療ケアを必要としない方には向いていないと言えるでしょう。

各介護保険施設で提供されるサービス内容を知って、適切な施設選びを

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院はそれぞれ目的が異なり、ご入所を検討する方にとって向き不向きがあります。前述の通り、提供されるサービスもそれぞれ異なります。

特別養護老人ホームでは手厚い介護が受けられ、介護老人保健施設では在宅復帰に向けたリハビリができるのが特徴です。一方、介護医療院では高度な医療ケアが受けられます。ご入居される方の身体状態やご要望に合わせて、適切な介護保険施設を選ぶと良いでしょう。

 
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