有料老人ホームの費用 有料老人ホームの費用

まずは入居費用のしくみを理解し、
資金計画を立てることが大切です。

老人ホームの費用相場は?月額や内訳について

実際に老人ホームへの入居を考える場合、気になることの一つが「どのくらいの費用がかかるのか」という点です。

自分に合った理想的な老人ホームを見つけても、入居時費用や月額費用が予算を超えて高額だと入居は難しいですし、無理に入居しても支払いが困難になった場合には退居しなければならない事態に陥ってしまいます。

本記事では、老人ホームの費用の仕組みと相場感などについてわかりやすく解説しています。「老人ホームの費用について一からしっかり理解したい」という方は、ぜひ参考にしていただき、資金面の不安なく入居できるホーム選びにお役立てください。

目次

老人ホーム・介護施設ごとの費用相場

まずは、現在の老人ホーム・介護施設の費用相場についてご紹介しましょう。

高齢者の方向けの入居施設は、国や自治体、社会福祉法人などが運営している「公的施設」、企業やNPO法人などが運営する「民間施設」の2種類に大きく分けられます。

公的施設
・特別養護老人ホーム(以下:特養)
・ケアハウス(軽費老人ホームC型)


民間施設
・介護付き有料老人ホーム
・住宅型有料老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅
・グループホーム


では、各施設の一般的な費用相場について、以下でご紹介しましょう。

          
初期費用(入居一時金)月額費用
公的施設 特養 0円 数万円~15万円
ケアハウス 数十万円~数百万円 10数万円~30万円
民間施設 介護付き有料老人ホーム 0円~数億円 10数万円~数十万円
住宅型有料老人ホーム 0円~数千万円 10数万円~数十万円
サービス付き高齢者向け住宅 0円~数十万円 10数万円~30万円
グループホーム0円~数百万円 10数万円~30万円

●特養・ケアハウス
公的施設では、公費が投入されているため費用はやや安めです。ただし、特養でもユニット型特養のような全室個室型の施設だと月額費用はその分高くなります。また、ケアハウスも、介護付き有料老人ホームと同水準の介護体制を整えている施設(特定施設)であれば初期費用、月額費用とも高額になりやすいでしょう。

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●介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは一定水準以上の人員配置体制、運営体制、設備を整えているため、費用はやや高めです。ただし、その分充実した生活環境が整い、手厚いケアを受けられます。

●住宅型有料老人ホーム
施設によって料金体系には幅があります。安い費用負担で入居できる施設もあれば、旅館・ホテルのような豪華さや高級感が特長の施設もあります。また、訪問介護事業所やデイサービスなどを併設している施設もあり、実際に入居先を探す場合は、個別の施設ごとに費用・サービス内容がどのようになっているのかを確認する必要があるでしょう。

●サービス付き高齢者向け住宅
制度上の区分が有料老人ホームとは異なるため、初期費用は比較的安く設定されています。ただし、少数ですが介護付き有料老人ホームと同じケア体制を整えた特定施設の場合だと、入居一時金は高額です。

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都道府県ごとの料金設定のちがい

老人ホームの費用は地価や物価の影響を受けるため、都道府県によっても変わってきます。入居一時金、月額費用が比較的安い都道府県としては、「石川県」「富山県」「山口県」などがあげられます。これらの県は地価が安い傾向にあるため、結果として入居費用の額も総じて低めとなっています。

一方、入居一時金と月額費用が高めなのは「東京都」「京都府」「兵庫県」などです。これらの都府県に共通する点として、地価が高く、交通網が高度に発達している点があげられるでしょう。都市部だけでなく郊外地域も公共交通機関でアクセスしやすいので、入居のニーズが高く、結果として高価格帯の料金設定が多くなります。

老人ホームの費用の仕組み

次に、老人ホームの料金体系について、詳しく解説しましょう。

老人ホームの入居費用を調べる際、以下の2つについて押さえる必要があります。

・入居時にかかる「初期費用」
・入居後に毎月支払っていく「月額費用」


詳細について、次でそれぞれ見ていきましょう。

老人ホームの初期費用と月額費用

初期費用とは、入居の際に支払う費用のことです。

有料老人ホームやケアハウス、グループホームなどの施設では、初期費用は家賃などの前払いとしての性格をもち、「入居一時金」とも呼ばれます。

サービス付き高齢者向け住宅の場合、制度上の区分では高齢者向けの住まいとして位置づけられているため、初期費用としては一般的な賃貸住宅と同じく敷金などが発生します。

ただし、同じサービス付き高齢者向け住宅でも、介護付き有料老人ホームと同じ特定施設の指定を受けている施設では、有料老人ホームと同様の入居契約をし、家賃の前払いとしての入居一時金を求められる場合もあります。

一方、月額費用は、家賃や光熱費、管理費、介護費用、おむつ代などに充てられる費用です。

なお、特養や介護老人保健施設(以下:老健)、介護医療院などのいわゆる介護保険施設では入居一時金などの初期費用は不要で、支払うのは月額費用のみです。

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老人ホーム・介護施設の種類によって費用は異なる

老人ホームの種類によって、初期費用、月額費用ともに変わってきます。

公的施設の特養や老健、介護医療院では基本的に初期費用がかからないため、入居時の費用負担の心配はありません。

また、一般的な「賃貸借契約」により入居できるサービス付き高齢者向け住宅も、初期費用として支払うのはいわゆる敷金であるため、通常の賃貸住宅を借りるときと同様の感覚です。

一方、有料老人ホームの場合、多くの施設で「利用権方式」による契約形態が採用されているため、初期費用が高額になる場合があります。

利用権方式とは、その施設を終身利用できる権利を取得する契約のことです。契約の性質上、家賃・サービス費用の一部について、入居時に前払いを求めるケースが多いのです。

利用権方式を採用している有料老人ホームの場合、入居一時金が高額となるケースが少なくありません。高級施設や医療体制が整っている施設だと、入居一時金だけで数百万円~数千万円かかることもあります。

ただし、最近では入居一時金を安く設定している施設も多く見受けられます。入居時の費用負担をできるだけ抑えたい方は、そのような施設を探すと良いでしょう。この場合の入居一時金は家賃の前払い金としての性格をもつため、施設のなかには以下のような料金プランを設けているところもあります。

・入居一時金を支払うことで、月額費用を安くするプラン
・入居一時金を安くするまたは0円にして、月額費用を高めに設定するプラン


月額費用についても、公的施設である特養などは、民間施設と比較して費用が安めです。

一方、所定の人員配置基準・運営基準・設備基準を満たして特定施設の指定を受けている民間有料老人ホームの場合、月額費用はやや高めとなる傾向があります。

自立~軽度の方向けの施設が多い住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅だと、家賃・食費などが安めの施設が多く、月額費用を抑えやすいでしょう。ただし、富裕層向けの高級施設などではサービスや設備がさらに充実している分、月額費用が高額になってきます。

老人ホーム・介護施設の月額利用料の内訳

次では、月額費用の内訳についてご説明します。
主に発生するのは、以下のような費用です。

・施設介護サービス費
・介護保険対象外のサービス費
・居住費(賃料)
・食費
・管理費
・サービス加算
・上乗せ介護費
・日常生活費
・医療費


それぞれの詳細を見ていきましょう。

施設介護サービス費

特養や老健、介護医療院などの介護保険施設で、介護サービスを受けるためにかかる費用です。要介護認定の段階に応じて毎月定額で支払います。介護保険の自己負担額は所得額に応じて1~3割と定められており、所得によって毎月かかる費用が異なるので注意しましょう。

介護保険対象外のサービス費

介護保険が適用されるサービスは、食事・入浴・排せつの介助や身の回りのお世話など限られた範囲のみです。理美容代、病院の付き添いや買い物代行などのサービスは、介護保険外のサービスとして提供されることが一般的です。

これら介護保険適用外サービスを利用した場合は、全額自己負担のうえで利用できます。もともと保険が適用されないサービスなので、要介護認定を受けていない自立の方を含むすべての入居者が利用可能です。

居住費(賃料)

公的施設か民間施設かによって、居住費のあり方は変わってきます。

●公的施設の場合
公的施設の居住費は法律によって定められます。
基本的には居室のタイプによって異なり、特養の場合であれば、その施設がユニット型、準ユニット型、従来型個室、多床室なのかによります。また、要介護認定の段階によっても費用は変わり、段階が上がるほど高額です。

なお、自己負担額には限度額が設けられているので、一定以上の金額を請求されることはありません。

●民間施設の場合
居住費は施設によって大きく異なります。
一般的な賃貸物件と同じく、立地場所や間取りによる費用の違いは大きいでしょう。また、各居室に設置されている設備の内容によっても異なり、ミニキッチンや大きなクローゼットなど、充実しているほど高額な設定になっています。

食費

食費も公的施設か民間施設かによって、費用のあり方が異なります。

●介護保険施設の場合
食費は所定の金額を1日3食分支払う必要があります。もし何らかの事情により「朝食抜き」や「夕食抜き」とした場合も、3食分は徴収されるので注意しましょう。

入院などによる長期間食事を摂らない場合は、事前に施設側にその旨を伝える必要があります。また、居住費と同じく自己負担限度額が設定されているので、一定額以上の請求はされません。

●民間施設の場合
食費の内容は施設ごとに異なります。1日単位で計算して毎月定額を請求する施設もあれば、定額ではなく1食単位で請求する施設もあります。入居時に確認しておきましょう。なお、介護保険施設とは異なり、毎月定額で食費が発生する場合でも、食べなかった分の食費は月額費用から減額されることが多いです。

施設によってはレストラン・料亭のような豪華な食事を提供していることもあります。その場合、食費は高くなるものの、日々の食事に対する満足度はより高まるでしょう。

管理費

一般的に、掃除や洗濯などの生活支援サービスにかかる人件費、事務費、水道光熱費、施設管理維持費などが管理費に該当します。

ただし、どのような費目を管理費に加えるのかは施設によって異なるので注意が必要です。たとえば、居室清掃や買い物代行を管理費に加えるところもあれば、個別の有料サービスとして計上するところもあります。この点も、前もって施設側に確認しておきましょう。

サービス加算

サービス加算とは、制度上定められている基準以上の人員・設備耐性でサービスを提供している場合に、その強化内容に応じて別途加算される費用です。より充実したサービスを受けられる分、別途費用が追加されます。

加算の対象となる項目は制度上規定されており、サービス提供体制は施設によって異なるので、加算される金額も施設ごとに変わってきます。

上乗せ介護費

介護付き有料老人ホームなどの特定施設において、制度上の規定よりも多くの人員を配置している際に発生する費用です。

特定施設とは、制度上定められた人員配置基準、設備基準、運営基準を満たし、都道府県や市区町村から事業指定を受けた施設です。この指定を受けている施設では、毎月定額での介護サービス(特定施設入居者生活介護)が提供されます。

この特定施設における制度上の人員配置基準は「要介護者3人につき、介護・看護職員を1人」です。しかし、「要介護者2人につき、介護・看護職員を1人」を配置している場合など、制度で規定されている以上の手厚い介護体制を整備している施設では、上乗せ介護費が発生するのです。

制度上の基準以上の人員体制で介護を行っているので、より手厚いケアを受けられることがほとんどです。その分、費用も多く発生するわけです。

日常生活費

入浴時に使う石けんやシャンプーなどの日用品、お菓子やジュースなどの嗜好品にかかる費用のことで、原則、個人が負担します。

なお、おむつ代については、民間施設では毎月自己負担となるケースがほとんどですが、公的施設では介護給付に含まれるため費用は発生しません。

医療費(薬・往診・入院)

医療費や通院費、薬代などは介護保険適用外のため、自己負担が必要です。

老人ホームのスタッフに通院の介助をしてもらう場合、通常は別途費用がかかります。ただし、施設によっては、協力医療機関や一定の距離内に立地する病院への送迎や付き添いについては無料とする場合もあるので、事前に施設の入居相談員に確認しておきましょう。

入居一時金とは

有料老人ホームやケアハウス、グループホームなど、利用権方式の入居契約時に発生するのが入居一時金です。

サービス付き高齢者向け住宅(特定施設ではない)のような賃貸借契約方式だと、初期費用は敷金であり、「家賃の1~2か月分」など比較的わかりやすい計算方法で初期費用を算出できます。しかし、家賃などの前払い金としての性格をもつ入居一時金は、計算方法や支払形式が少し特殊な内容となっています。

以下では、入居一時金のメリット・デメリットや、償却の仕組み、返還金の計算方法などについて詳しく解説しましょう。

入居一時金のメリット・デメリット

入居一時金は家賃の前払い金としての位置づけであるため、入居時に支払っておくと、月額費用を抑えられます。この点は、入居一時金がもつ最も大きなメリットです。

一般的な費用感としては、入居一時金を支払うことで、月額2万円~5万円程度が安くなるとも言われています。ただし、具体的にどのくらい安くなるのかは、施設によって異なります。

一方、まとまった額を入居時に負担することになるので、予算のシミュレーションが欠かせません。たとえば病院から退院後、急いで施設入居するような場合はとくに、慎重な資金計画が必要です。

入居一時金は安い場合でも数十万円、高い場合だと数千万円に上ることがあり、入居する上での大きなハードルとなりやすいのです。

初期償却・償却の仕組み

支払った入居一時金は、毎月の家賃などに一定額ずつ充てられていきます。これを「償却」、入居一時金がすべて償却されるまでにかかる時間を「償却期間」と呼びます。

年・月ごとの償却額が大きいと償却期間は短く、償却額が少なければ償却期間は長くなるわけです。償却期間は入居者の「想定居住期間」に基づいて施設ごとに設定されています。
なお、償却は家賃などに充てられますが、償却期間が終わったからといって家賃が急に上がることはありません。同じ月額費用で住み続けられます。

ここで償却について理解するうえで注意すべきなのが、施設によっては「初期償却」が行われているという点です。

初期償却とは、支払った入居一時期金のうち何割かが入居時に償却されることです。初期償却の割合は施設によって異なり、3割の施設もあれば5割の施設もあります。

初期償却がある場合、一定期間ごとに行われる入居一時金の償却は、初期償却を差し引いた金額で行われるので注意が必要です。老人ホーム選びの際は、初期償却の有無や計算方法を必ず確認しましょう。

退去時に返還金が戻ってくる

償却期間が終わる前に退去した場合、償却されていない分の入居一時金は「返還金」として受け取れます。

このとき、退去者が「本来もらえるはずの返還金がもらえない」と施設側とトラブルとなるようなことを防ぐためにも、入居時に返還金の計算方法・返還額について施設側としっかりと話し合っておきましょう。
なお、初期償却が行われている施設では、初期償却分は返還されませんので注意が必要です。

●返還金の計算方法
入居一時金300万円、償却期間5年、初期償却率25%の施設に入居し、2年後に退去した場合の返還金を計算してみましょう。

この場合、初期償却率は25%なので、毎年の償却に回される金額は残った225万円です。225万円を5年かけて償却していくため、1年間の償却額は45万円。入居2年後に退去した場合、償却分165万円、未償却分135万円となるので、返還額は135万円です。

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クーリングオフ(90日ルール)は可能?

老人福祉法29条第10項に「短期契約特例」が定められています。これは、入居一時金という形で前払い金を受け取る老人ホームに対し、「3か月以内で契約が終了した場合、入居した日にち分の家賃・サービス提供費用の実費相当額を差し引いた上で、前払い金を返還する」という規定です。

クーリングオフは法律で一律に定められているため、施設ごとに別途ルールを定めることはできません。

入居中に施設が倒産した場合

入居一時金を支払って入居し、償却される前にその施設が倒産してしまった場合、「保全措置」の制度が適用されます。

保全措置とは未償却の前払い金を保障するための制度です。この制度により、施設が倒産してしまった場合には最大500万円の未償却分が返還されます。介護保険制度改正により、2021年4月以降、すべての有料老人ホームが保全措置の対象です。

入居一時金(前払い)が不要な施設

老人ホームのなかには、入居一時金がかからない施設もあります。介護保険施設や入居一時金を0円としている有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などです。

特養は入居一時金がかからない

特養をはじめとする介護保険施設では、入居一時金は発生しません。入居一時金が発生するのは、利用権方式を採用している民間施設のみです。

入居一時金(初期費用)が0円の有料老人ホーム・サ高住

有料老人ホームなど利用権方式の施設においても、入居一時金を0円としている施設もあります。入居時にまとまった支払いは発生しないため、入居時の費用負担を抑えたいという方の選択肢として需要があります。

入居一時金は前払い金でもあるため、支払わない場合はその分、家賃が高めになる場合もあるので注意しましょう。しかし最近では、入居一時金が0円でも月額費用をかなり抑えている施設もあります。

特定施設ではない一般型のサ高住でも、初期費用がかからないように敷金を0円としている施設は多いです。逆に、有料老人ホームで入居一時金は0円でも敷金として入居時費用がかかる施設もありますので、詳細を確認しましょう。

年金だけで老人ホームに入れる?

現状、老後の収入源を年金にのみ頼っている高齢者の方は多いようです。収入が年金のみの方でも、老人ホームへは入居できるのでしょうか。

厚生年金・国民年金の平均受給額

厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、年金の月あたりの平均受給額は、厚生年金が14万4,000~14万5,000円、国民年金は5万5,000~5万6,000円ほどです。

もっとも、これはあくまで平均額であり、国民年金の保険料の未納期間などがあればさらに低くなってきます。

公的施設なら年金のみでも入れる

厚生年金の受給者の場合、月額費用14万円以下の費用が安めの施設であれば入居可能ですが、基本的に民間施設だと選択肢は限られてきます。

特養などの公的施設であれば、初期費用が不要かつ毎月の費用を抑えられるため、年金だけでも入居しやすいでしょう。

生活保護を受ける

年金受給者であっても、条件に該当している場合は生活保護の受給が可能です。

とくに、国民年金しか受給しておらず、かつ老人ホームへの入居を検討しているなら、生活保護を受けて入居先を探すのは有効な方法と言えます。老人ホームのなかには「生活保護の方の入居可」としている施設があります。郊外や地方に検討範囲を広げる必要は出てきますが、そうした施設に条件を絞って検索する方も少なくはありません。

生活保護を受ける場合、まずはお住まいの市区町村役場の生活支援担当窓口に相談しましょう。要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネジャーに相談すると良いでしょう。

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生活保護や低所得者でも入居が可能な老人ホームは?

費用を抑えるコツとは?

老人ホームの費用は、行政が行っている各種助成制度を利用したり、選び方を工夫したりして抑えられます。

制度や補助を活用する

●介護保険サービスによる医療費控除など
介護保険サービスには、低所得者に対する減額制度や助成制度があります。介護保険施設に入居する場合、あるいは民間施設で入居後に介護保険サービスを利用する場合、それらの対象になるかどうかを役所の担当窓口で確認してみましょう。

また、市町村が独自に助成制度を設けていることもあります。

●高額サービス費支給制度
介護保険サービスの自己負担額が、所定の限度額以上となったときに、超過分が払い戻しされる制度です。申請をしないと払い戻しはされないので、忘れずに申請しましょう。

●介護保険施設の特別減額措置
所得・貯蓄額が所定の基準額を下回っている場合、介護施設の入居中に発生する食費と居住費が減額される措置です。特養など公的施設に入居する場合にのみ適用されます。

●利用者負担軽減措置
施設を運営しているのが社会福祉法人で、かつ利用者負担軽減制度の利用を申請している場合は、低所得の利用者は介護費用が25%軽減されます。

本来の介護費用の75%のみの負担で済むため、入居を希望する施設で利用できるかどうか、適用条件も含めて前もって確かめておくと良いでしょう。市町村役所の福祉課に問い合わせてご確認ください。

●市区町村・自治体の独自サポート
自治体が老人ホームで生活している方の負担を軽くするために、独自の助成制度を設けている場合があります。

どのような制度があるのかは自治体によって異なり、ホームページなどで確認できます。老人ホーム・介護施設に入居中でも受けられる助成とその条件をチェックしましょう。

老人ホーム選びで費用を抑える

●都市部から離れた郊外の施設を
人口の多い都市部では地価が高めであり、そのため老人ホームでも家賃相当額がどうしても高額になってきます。有料老人ホームなどでは、家賃が高いとその前払い金である入居一時金も比例して高額になりやすいです。

一方、郊外地域に立地する施設だと、地価が安いのでその分家賃相当額も低めとなっています。都市部から離れ、郊外の施設で費用負担を抑えて暮らすことも、老人ホームの上手な選び方のひとつです。

●駅から遠くて築年数が古い
一般的に駅周辺に立地する施設は地価が高めでニーズも高く、費用が高めになりがちです。そのため、多少不便ではあっても、駅から離れた場所にある施設だと比較的料金が安めに設定されている傾向があります。

また、築年数が古い施設を選ぶのも一つの方法です。建物は古くても、施設そのものや職員の実績が豊富で優れている老人ホームもあります。

●個室よりも多床室タイプのほうが安い
特養など介護保険施設では、多床室が珍しくありません。多床室は個室タイプのユニット型と比べると、家賃がかなり安めに設定されています。

●認知症でも受け入れ可能かは要確認
費用が安いからといって、希望するケアを受けられない施設は避ける必要があります。とくに高齢になると認知症になるリスクが高まるため、認知症になっても生活が継続できるのかどうかを前もってチェックしておきましょう。

老人ホームの利用料の支払い方法

利用権方式をとっている有料老人ホームでは、契約入居一時金をどのように支払うのかによって、主に4つの支払い方法に分けられます。詳細を見ていきましょう。

支払い方法

●全額前払い方式
入居時に想定居住期間分の家賃をすべて前払いで支払う方式です。たとえば想定居住期間を10年としたなら、入居時に10年分の家賃をすべて支払います。入居後は食費や管理費など家賃以外の料金が月額費用として発生します。

●一部前払い方式(入居一時金方式)
想定居住期間に発生する一部を入居一時金として支払い、残額を家賃として月額費用に含めて支払う方式です。

●月払い方式
いわゆる「入居一時金0円プラン」で、家賃を一切前払いせずに入居後に家賃全額を毎月支払っていく方式です。本来の家賃額がそのまま発生するため、月額費用は上記2つよりも高額です。

支払い方法ごとのメリット・デメリット

●全額前払い方式
入居後に家賃負担がないので、月額費用を最も安くできますが、入居時にまとまった費用を用意する必要があります。

●一部前払い方式(入居一時金方式)
月払い方式よりも月額費用を安くでき、かつ全額前払い方式よりも入居時の費用が安くなります。バランスがいい反面、一定の初期費用が発生し、かつ全額前払い方式よりも支払総額が高くなることは多いので、確認が必要です。

●月払い方式
入居時に費用がかからないので、短期間だけ入居するときの料金プランとして最適です。
たとえば、特養の待機期間だけ入居する場合などが考えられます。
一方、家賃の前払いをしていないため、毎月の費用負担は大きくなります。

老人ホーム・介護施設の費用が支払えないときの対処方法は?

では、老人ホームへの入居後、何らかの事情で月額費用を払い続けられなくなったときはどのように対応すべきなのでしょうか。

すぐに追い出されるわけではない

月額費用を支払えなくなったらといって、すぐに退去させられることはありません。一般的には数か月程度の猶予期間がもらえ、その間に対処法を考えます。

支払いが滞ったときの猶予期間については、入居時の契約書などに記載されているのが通例です。入居の際に確認しておきましょう。

料金の安い施設への転居

費用が支払えなくなったときの対処法として、まず費用の安い施設への転居が考えられます。

転居先を選ぶ際は、施設を移ることで生活上必要となるケアを受けられなくなったり、施設の場所が遠すぎて家族が訪問しづらくなったりなど、それまでの生活と変わる点について注意しましょう。

また、有料老人ホームなどで前払い方式で入居していた場合、入居時に支払った一時金の返還がどうなるのかについても、事前に確認が必要です。

困ったら施設職員に相談

もし入居費用に困ったら、まずは施設のスタッフに相談しましょう。費用の安い転居先を紹介してくれたり、支払日に融通を聞かせてくれたりする場合があります。

老人ホームへの入居を考えるときは費用の仕組みをしっかりと理解して

老人ホームの費用は施設の種類によって大きく変わりますが、全体として公的施設は民間施設よりも料金が安めと言えます。一方で、個別に見ると、公的施設の特養でもユニット型だとやや高額になります。

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅については、低料金を売りにしている施設なども多くあります。老人ホームの費用を調べるときは、個々の施設の料金プランをしっかりと確認しましょう。

また、有料老人ホームなど入居一時金が発生する施設の場合、償却方法や初期償却の内容をチェックするのが大切です。前述のように、行政の助成制度や補助制度を調べて活用することもあわせて検討すると良いでしょう。

 
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