介護保険の基礎知識 介護保険の基礎知識

さまざまな介護サービスを、1~3割の自己負担で受ける
ことができるのが「介護保険」です。

【介護保険のQ&A】支払うのは何歳から?

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介護保険制度について何も知らなくても、対象の年齢になれば自動的に保険料の徴収が始まります。ここでは、実際にいつからいつまで介護保険料を支払うのか、支払い方法、利用条件など、介護保険制度の年齢にまつわる疑問点を一挙に解説します。

目次

介護保険料を支払い始める年齢

介護保険とは、要介護認定を受けた高齢者が1~3割負担で介護サービスを使える公的制度です。40歳に達した月から(詳細は後述)すべての人が加入し、保険料を生涯支払い続けることになります。介護保険料の支払いは、2000年4月から義務化されています。

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介護保険料の支払い方法

介護保険の対象は40~64歳の第2号被保険者と、65歳以上の第1号被保険者に分類され、それぞれ保険料の支払い方法(納付方法)が異なります。

40~64歳(第2号被保険者)の場合

前述の通り、すべての人は40歳の時点で第2号被保険者となり、介護保険料を支払います。実際に支払いが発生するのは、「40歳の誕生日の前日」を含む月から(被保険者の資格取得が前日の満了時となるため)です。

【例】

誕生日が7月2日の方は、その前日(7月1日)が含まれる7月分から介護保険料が徴収されます。一方、誕生日が7月1日の方は、その前日が6月30日なので、6月分から徴収されます。


このように、誕生日が各月1日の場合は、前月分からの徴収となるので注意しましょう。

第2号被保険者は、加入している公的な医療保険制度の保険者を通じて介護保険料を支払います。民間企業に勤めている方の場合はそこで加入している健康保険の保険料とあわせて、自営業者のように国民健康保険に加入している方の場合は国民健康保険料とあわせて徴収されます。

65歳以上(第1号被保険者)の場合

65歳以上の第1号被保険者の場合、介護保険料の支払い方法には「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。

特別徴収の対象者は、年額18万円以上の年金を受給している方です。特別徴収では、2か月ごとに年金から介護保険料が差し引かれます。仮に年金を複数受給している場合は、 老齢基礎年金、通算老齢年金、退職年金、障害年金、遺族年金の順番で徴収の対象が決まります。

一方、普通徴収の対象となるのは、主に年金の受給が年額18万円未満の方や65歳になったばかりの方です。普通徴収では、口座振替もしくは納付書により介護保険料を支払います。納付書の場合、銀行やコンビニでも支払えます。

介護保険が利用できる年齢は?

介護保険は、満40歳に達して加入したときから利用可能です。ただし、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上64歳までの第2号被保険者とでは利用できる内容が異なります。

第1号被保険者(65歳以上)の場合

第1号被保険者は、要介護認定を受けたあと、要介護度に合わせた介護保険サービスを利用できます。具体的には、「訪問介護」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3つです。

・訪問介護...ホームヘルパーによる自宅での日常生活の介助など
・施設サービス...特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護療養型医療施設(介護療養病床)へ入所して受けるもの
・地域密着型サービス...要介護の高齢者が住み慣れた地域で生活を続けるための支援(グループホームやデイサービスなど)

介護保険サービスについての詳細は下記の記事で説明しています。

【関連記事】
介護保険サービスとは?種類を一覧でチェック

40~64歳(第2号被保険者)が例外的に利用できるケース

第2号被保険者の場合、介護保険制度の適用には条件があります。たとえば交通事故によって介護が必要になったケースでは、介護保険によるサービスを受けられません。

下記の指定された疾病(特定疾病)で要介護認定を受けた場合に限り、介護保険のサービスが利用できることになっています。

疾患 疾病の特徴や条件など
ガン ガンのなかでも、医師により回復の見込みがないと判断された場合や、末期の場合に介護保険サービスの対象となる
関節リウマチ 関節が炎症を起こして腫れや痛みが生じ、のちに変形してしまう病気
筋萎縮性側索硬化症(ALS) 脳の命令を筋肉へ伝える役目を果たす運動ニューロンが侵される病気。筋肉が動かしにくくなり、自立した生活ができなくなっていく
後縦靱帯骨化症 脊柱を縦に走る靭帯が骨化する病気。脊髄に障害が生じることで、手のしびれや歩行困難、排尿コントロールが困難になる
骨折を伴う骨粗鬆症 骨のなかがスカスカになって強度が落ち、骨折しやすくなる症状。症状が進むと寝たきりの状態になることもある
初老期における認知症 40~64歳の初老期にかかる認知症を指す。具体的には、アルツハイマー病、ピック病、脳血管障害など
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及パーキンソン病 脳の神経細胞が異常をきたし、手指の震えや筋肉の硬化、歩行障害などが生じる病気。最終的には、寝たきりの状態となる人が多い
脊髄小脳変性症 小脳に障害が生じて、お酒に酔ったように歩行が困難になったり呂律が回らなくなったりする病気
脊柱管狭窄症 背骨のなかでも神経の通り道の役割を果たす脊柱管が狭くなることで、腰痛や下肢の痛みが生じる病気
早老症 「早期老化症」とも呼ばれ、実際の年齢より早く全身に老化の現象がみられる疾患の総称。若年性の白内障や動脈硬化、糖尿病などを併発する
多系統萎縮症(MSA) 小脳・大脳基底核、自律神経など神経系の複数の系統が侵されて生じる疾患。症状は歩行障害や排尿障害、体温調節障害など
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 糖尿病を原因とする合併症を指す。神経障害や病腎症、網膜症など
脳血管疾患 脳動脈の異常により生じる病気の総称。具体的には、脳卒中や脳梗塞、くも膜下出血など
閉塞性動脈硬化症 足の血管が動脈硬化を起こし血流に支障が生じる病気。手足のしびれや冷感のほか、ふくらはぎの痛みや痛みによる歩行困難などが生じる
慢性閉塞性肺疾患 少しの動作でも息切れや息苦しさを引き起こしたり、咳や痰が出たりする病気。ひどいときには、喘息のように呼吸困難な状態になることもある
両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 軟骨がすり減るなどして膝が変形し、痛みや腫れが生じる病気。軽度の痛みから始まり徐々に痛みが増すことで、起立や歩行が困難になる

上記疾患の場合であっても、介護保険制度を利用するためには要介護認定を受ける必要があります。

介護保険料はいくら支払うの?

介護保険料の具体的な金額については、気になる方も多いのではないでしょうか。介護保険料は、加入している保険区分などのさまざまな条件を基に決められています。ここでは、社会保険加入者と国民健康保険加入者の2パターンに分けて支払う金額を見ていきましょう。

社会保険加入者が支払う保険料

企業などで社会保険に加入している方の場合、介護保険料の金額は標準報酬月額によって決まります。毎年4~6月に支給された給料の平均金額を等級で分けていき、標準報酬月額表で該当する等級に応じた金額を支払う仕組みです。

ただし、各都道府県や企業が入っている健康保険組合によっても、標準報酬月額表は異なります。詳しくは下記の関連記事でも解説しているので、チェックしておきましょう。

国民健康保険加入者が支払う保険料

自営業者など国民健康保険に加入している方の場合は、個々の所得や被保険者の人数、資産などから、市区町村が世帯単位で介護保険料を決定します。

具体的な介護保険料の金額を知りたい方は、市区町村の窓口やホームページで確認してみてください。

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介護保険料はいくら?納付額や支払い方法を解説

介護保険料はいつまで支払う?滞納したら?

介護保険料を納付する期間は、40歳になった月(もしくは前月)から一生涯です。介護保険料を支払えず滞納した状態が続いた場合には、延滞金の支払いや財産の差し押さえが発生し、さらには介護サービスを利用できなくなる可能性があります。

実際に介護保険料の負担が増加していることから、介護保険料の滞納者も増加傾向にあります。2019年度には、介護保険料が支払えずに預金や不動産などの差し押さえを受けた65歳以上の高齢者は、21,578人と過去最高を記録しました。

滞納してしまった場合のペナルティや対処方法は、下記の記事で詳しく紹介しています。

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介護保険料を滞納していませんか?ペナルティと対応方法

介護保険の支払い時期と適用条件は年齢で定められている

介護保険料の金額や支払い方法、利用条件など、意外と知らないことが多かった...という方もいらっしゃるのではないでしょうか。介護保険は、40歳になると自動的に徴収され、多くの場合は65歳以上で要介護に認定された時点から利用を開始します。

今回の記事を参考に、介護保険制度を正しく理解して、いざというときに備えましょう。

 
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