介護のお役立ちコラム

【医師監修】サルコペニアの予防で健康的な老後を。症状やフレイル、ロコモとの違いも解説|介護のコラム

【医師監修】サルコペニアの予防で健康的な老後を。症状やフレイル、ロコモとの違いも解説|介護のコラム

更新日:2021.10.06

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加齢によって筋肉量が低下する現象をあらわす「サルコペニア」をご存じですか。高齢者の健康に対する意識が高まりを受けて、使われるようになった言葉です。今回の記事では、サルコペニアを防ぐためにできるトレーニングや生活習慣の改善などを考えます。


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


「サルコペニア」とは全身の筋力が低下すること

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「サルコペニア」は1989年にアーウィン・ローゼンバーグにより提唱された概念で、ギリシャ語で「筋肉」を意味する「Sarx」と「喪失」を意味する「Penia」を組み合わせた造語です。

サルコペニアになると、全身を支える筋力が落ちてくることで歩行スピードが遅くなったり、ペンや箸を握りづらくなったりするほか、転倒しやすくなるなどの症状が見られます。そのため、杖や歩行を補助する器具が必要になる可能性もあります。

また、ちょっとした運動でも息が切れやすく、疲労感を覚えるようになります。そしてますます体を動かすことが億劫になり、さらなる筋力低下を招くといった悪循環に陥ってしまうのです。

診断基準は国によって異なり、日本では日本サルコペニア・フレイル学会が「AWGS(アジアにおけるサルコペニアワーキンググループ)」の定める基準を採用しています。たとえば、以下のように「筋肉量の減少」にあわせて「筋力の低下」ないしは「歩行速度の低下」が見られるとサルコペニアと判定されます。

【サルコペニアの診断基準】※一部抜粋
・下腿周囲(ふくらはぎの最も太い部分)が男性で34cm未満、女性で33cm未満
・握力が男性で28kg、女性で18kg未満
・歩行速度が秒速1m以下

また東京都健康長寿医療センター研究所の調査結果によると、サルコペニアの有病率は75~79歳で約2割です。80歳以上で見ると、男性で約3割、女性では約5割にも達しています。さらに、サルコペニアになると死亡・要介護のリスクが約2倍になるとのことです。

サルコペニアやフレイル、ロコモの定義とは?

日本では、加齢に伴う心身機能の衰えを一括して「老年症候群」と呼んでいます。筋力の衰えを意味するサルコペニアも老年症候群の一種と考えられます。

また、似たような意味をもつ言葉に「フレイル」がありますが、フレイルは「虚弱」を意味する単語で、消化不良や意欲の低下などの機能や精神的な衰えも含まれます。あくまで筋力の衰えに限定しているサルコペニアと比較して、フレイルはより広い意味合いをもつ用語と言えます。

このほか、「ロコモ」(ロコモティブシンドローム)という言葉も使われます。ロコモは「運動器症候群」と言われており、筋力の低下などによって移動のための機能に低下が見られる状態を指します。そのため、ロコモはサルコペニアが進行(悪化)した状態と考えることができます。

サルコペニアの予防法:運動面

筋力維持のためには、トレーニングが必要です。無理のない範囲で、毎日5~10分間を目安に運動に取り組んでみてください。たとえば、以下のようなトレーニングが有効です。

上体起こし(腹筋)

膝を曲げて仰向けに寝た状態で、へその部分をのぞき込むようにして上体を起こし、そのまま10秒間ほど体勢を維持します。その後、ゆっくりと上体を床に下ろします。

お尻上げ(背筋)

膝を曲げて仰向けに寝た状態で、腰を浮かせて10秒間ほど体勢を維持します。腰が床に落ちたり首や肩に過度の負担がかかったりしないよう、両手を床にしっかりと付けましょう。

太腿上げ

手すりなどにつかまった状態で、片足を宙に持ち上げた状態でその体勢を維持します。これを左右両足で交互に繰り返してください。バランスを保つのが難しい場合は、椅子に座って片足を水平に上げる動作だけでも大丈夫です。

足上げ

うつ伏せに寝た状態で、片足を床から上に持ち上げ、その体勢を数秒間維持します。また、横向きに寝た状態で片足を上げるパターンにも挑戦してみましょう。こちらも左右両足順序よく取り組んでみてください。

サルコペニアの予防法:食事面

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まず、肉、大豆、卵などに多く含まれ、筋肉のもととなるタンパク質を摂取しましょう。肉には脂肪も多く含まれるため、なるべく赤身部分がおすすめです。脂肪の過剰摂取は、動脈硬化の原因となってしまいます。そのほか、レバーやマグロ、カツオなどの赤身魚もタンパク質を多く含んでいます。

また、炭水化物も重要な栄養素です。炭水化物は体を動かすのに必要なエネルギー源となることから、米、パン、うどん、パスタなどをしっかり食べるようにしてください。

ビタミン、食物繊維、カルシウムも丈夫な体作りのために必要です。栄養が偏らないよう、野菜、果物、乳製品、海藻などをバランス良く食べるように心がけましょう。

サルコペニアの予防法:生活面

トレーニングなどの運動で筋力低下を防ぐだけでなく、日常生活を見直すだけでもサルコペニアの予防につながります。たとえば、買い物や家事などを人任せにせず、できる範囲で自分で取り組みましょう。

また、夜更かしや暴飲暴食、飲酒・喫煙を避け、規則正しい生活リズムを身に付けることも重要です。高齢者はちょっとした体調不良やストレスによって、活力を失ってしまうことも考えられます。とにかく心身ともに健康でいられるような生活を送りましょう。

体を動かす習慣作りが重要

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サルコペニアになると、全身の筋力低下によって動くことが億劫になり、行動量が落ちてさらなる悪化を招くといった悪循環に陥る可能性もあります。メリハリのある生活習慣を心がけ、要介護状態になるのを予防するために、少しずつでも動く習慣を取り入れると良いでしょう。

 

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