介護のお役立ちコラム

【医師監修】「軽度認知障害」(MCI)の症状と診断方法|認知症のコラム

【医師監修】「軽度認知障害」(MCI)の症状と診断方法|認知症のコラム

更新日:2017.03.15

高齢の家族と一緒に暮らしていると、日常生活のあらゆる側面で、高齢者の行動や発言に思わず首をひねってしまう瞬間が出てくることもあるでしょう。たとえば、いつも観ているテレビに出てくるタレントや総理大臣の名前が出てこなかったり、息子と孫の名前を言い間違えたり......。

こういう言動が見られると、「年をとったから仕方ないね......」と「物忘れ」だと笑って済ませている方もいることでしょう。しかし、これらの症状がエスカレートして認知症になると、コンロの火を点けたまま忘れてしまったり、自宅の場所がわからず外出したまま行方不明になってしまったりと、大事故につながる恐れも出てきます。

今回は、ちょっとした「物忘れ」、そして認知症になる前段階である「軽度認知障害」について、そのリスクや検査方法なども含め解説していきます。


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


軽度認知障害(MCI)とは?

軽度認知障害は、簡潔に説明すると正常な状態と認知症のちょうど間の段階です。この状態を「Mild Cognitive Impairment=MCI」と呼び、日本語では軽度認知障害と訳されています。日常生活で行動以上は見られないものの、認知機能が阻害されている症状が現れます。軽度の記憶障害や見当識障害が見られるようになると、認知症一歩手前の状態と言えます。軽度認知障害(MCI)の定義は、以下のようになります。

【MCIの臨床的な定義】
●記憶障害の訴えが本人または家族から認められている
●客観的に1つ以上の認知障害?(記憶障害や見当識障害)が認められる
●日常生活動作は正常
●認知症ではない

また軽度認知障害(MCI)は、大きく「記憶障害タイプ」と「非記憶障害タイプ」の2つに分けられます。下記は軽度認知障害(MCI)のタイプからどのように認知症へと移行していくかの関係性を表示したものです。

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<厚生労働省「認知症予防・支援マニュアル」より引用>

それぞれの認知症の種類を詳しく知りたい方は、下記をの記事を御覧ください。

【専門医監修】認知症の種類と症状一覧
https://www.sagasix.jp/column/dementia/matome/

軽度認知障害で見られる症状と兆候

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では、軽度認知障害(MCI)の具体的な症状や兆候を解説します。認知症も物忘れなどと勘違いしやすいものですが、もしご家族に下記のような症状・兆候が見られたら簡単な診断テストや病院での専門的な診断をおすすめします。

●同じ会話をすることが多くなった
●同じ質問を繰り返す
●段取りが悪くなり、家事や炊事がスムーズに行えない
●外出時に服装や髪型に気を使わなくなった
●最近会った人や仲の良い人の名前を思い出せない
●物の置き忘れやしまい忘れが増える
●道に迷う

軽度認知障害になったかどうかの判断は、病院での診察と検査を受けてみなければわかりません。そのため、かかりつけ医がいる場合、まずはその病院の医師に相談してみましょう。

そこで、より詳細な検査が必要と判断された場合、脳神経外科や「もの忘れ外来」と呼ばれる、認知症を専門に診る医師のいる比較的大規模な病院を紹介されることになります。 病院では、CTやMRIでの画像診断、血液採取による検体検査などを使って検査をおこないます。これによって軽度認知障害の予兆を早い段階で見つけられます。

また、認知症のチェックツールとして、「長谷川式簡易知能評価スケール」などの記憶力や認知機能に関わるテストも実施しています。「長谷川式簡易知能評価スケール」では、本人の生年月日に確認や簡単な計算式、単語の記憶などの問題で正答率、認知・記憶障害のレベルを測ります。

最近では、精度の高い軽度認知障害チェックツールとして、「あたまの健康チェック 簡易認知機能確認スケール」というサービスも登場しました。サービス利用のためには、まずインターネットで専用のカードを購入。利用者(高齢者)はカードに記載されている連絡先(フリーダイヤル)に電話をし、10分程度の検査を受けるという流れです。検査結果は後日郵送されます。この「あたまの健康チェック」は、一般的な認知機能を評価するツールであり、病院での診断とは異なるものです。3,500円(税別)で購入できます。認知症への理解を深めてもらえるかもしれません。

◎「もしかして認知症 !?」と思ったら試しておきたい手軽な診断テスト

軽度認知障害高齢者の約半分がそのまま認知症になってしまう

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軽度認知障害(MCI)は、放置しておくと症状が悪化する可能性が非常に高く、軽度認知障害(MCI)と診断された高齢者のうち、約半分が認知症に発症します。

しかし一方で、認知機能が正常化する"リバート"も少なくないとされており、年間で10%〜40%は認知機能を取りもどすといわれます。そのため、早期発見・早期治療が重要となります。

記憶障害など認知症の症状が少しでも見られた場合は、専門医にいち早く相談しましょう。認知症は不治の病と言われますが、軽度認知障害(MCI)の段階で発見することで認知症の原因となる病気を発見できる可能性、早期からの認知機能低下に対する治療介入、将来にむけた対策をするなど様々なメリットがあります。

軽度認知障害(MCI)の予防と対策

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軽度認知障害(MCI)の予防や対策は、早期が要となります。ここでは薬物治療ではなく、日常生活の心がけで認知症機能低下への対策となる主な方法を紹介します。

①食生活の改善

バランスの良い食事が大切です。特に認知症の予防には、肉より魚が良いとされています。野菜や果物を多く摂取する他、塩分過多は高血圧のもととなるので注意しましょう。

②スポーツや運動で体を動かす

適度な運動は認知症の予防に効果的なだけではなく、全身の血行・血流の改善につながり、脳の活性化が期待できます。

③睡眠を十分に取り、規則正しい生活を

しっかりと朝に起床して、夜に十分な睡眠をとるという規則正しい生活を心がけましょう。

④知的行動を増やす

将棋や囲碁、麻雀などの他、手芸など指先を使う活動は脳に刺激を与えることができるので効果的です。

⑤人とのコミュニケーション

人との会話やお出かけ、散歩などは非常に重要です。マンネリ化した日常からも開放されますし、人との交流を通じて相手を気遣ったり、自身の存在価値の確認できたりなど脳に良い影響を与えてくれます。

終わりに~早期発見、早期の受診が最大の予防策

加齢と共に訪れる軽度認知障害(MCI)は、気を付けていてもなかなか防げるものではありません。しかし軽度認知障害とわかった時点で、早急に医療機関を受診し検査を受けることが、次のステージである認知症の予防につながるでしょう。 認知症は完治が極めて困難な病気ですが、心身ともに健康で、周囲の手を借りずに末永く暮らしていくために、少しでも異変を感じたら、まずは専門医の診察を受けることが重要です。

また日常生活を見直し、意識的に脳に刺激を与えるように心がけましょう。

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