介護のお役立ちコラム

美味しく正しい食事介助の方法と注意点|介護のコラム

美味しく正しい食事介助の方法と注意点|介護のコラム

更新日:2018.07.18
食事介助の方法と注意点.jpg ご自宅や介護施設などで過ごす高齢者にとって、1日3度の食事は大きな楽しみです。しかし、健康上の理由による食事制限がある上に、噛む力、飲み込む力が衰えていると、口に運ぶ量を一歩間違えば、大きな事故につながる場合もあります。
 
 
せっかくの食事を楽しく過ごしてもらうためにも、高齢者のことを知り、正しい食事介助の手順を知る必要があります。
 
 
今回は、高齢者家族と一緒に暮らす人たちに向けた、安全かつ楽しく、美味しく食べられる食事介助の方法をご紹介します。
 

食べることへの意欲を阻害するさまざまな要因

私たちが普段何気なく食べている物でも、身体機能が衰えてくると、若いときと同じ量、同じスピードで食べることが難しくなります。食事介助を始める前に、家族は高齢者の特徴を覚えておく必要があります。
 
 

顎力(噛む力)が弱くなる

歯で食べ物を噛み砕く力が弱くなり、硬い食品を食べにくく感じるようになります。その結果、軟らかい物を好んで食べるようになり、噛む力がますます衰えるようになります。実際にどのくらいの大きさ、硬さの物が食べられるのか、本人と相談をした上で与えられる食品、カットする大きさなどを決めるようにしましょう。
 
 

だ液の分泌量が減ってくる・のどの渇きに鈍くなる

口の中で物を噛めば噛むほどだ液は分泌され、嚥下(飲み込み)作用を助け、体内に取り込まれたときの消化も助けてくれます。高齢者の場合、だ液の分泌量が全体的に減ってくるため嚥下に大きな影響を与えます。特にせんべいや干しいもなど乾燥してパサパサした物が飲み込みにくくなり、無理に食べようとするとむせ返すことが多くなります。また、入れ歯の間に食べた物が詰まると歯垢の原因にもなります。またその一方で、高齢者はのどの渇きを感じにくくなる傾向にあります。
 
 

消化器官が衰えてくる

消化器官の能力が衰えてくると、食べた物が長い時間胃の中に留まるため胃もたれを感じやすくなり、その結果食欲不振に陥ってしまいます。食欲不振になるとますますだ液の分泌が抑制され消化作用を阻害します。
 
 
このように身体機能の衰えにより、食事を通常通りでは楽しむことができない場合があります。多くの人がそうであるように、食事を視覚、嗅覚、味覚など五感を刺激することで高齢者にも良い影響が生まれます。よく噛むことで脳が刺激・活性化され、だ液も分泌されるようになるため、口腔衛生も良化します。しっかりと食べることで胃腸の動きにも良い影響があるなど、高齢者にとって食事は楽しい時間だけではなく、身体機能を衰えを防ぐためにも非常に重要な行動なのです。
 
 

食事を楽しくスムーズに行う心構え

正しい食事介助の方法.jpg 仮に食欲があったとしても、咀嚼や嚥下といった能力に衰えが見られる場合、誤嚥による気管支炎を引き起こすリスクも高まるため、食事を提供する際にはいくつかの注意が必要です。また本人が好きな物、食べられる物ばかり与えていては栄養のバランスも偏ってしまいます。健康維持のために必要な食品の摂取が難しい場合、以下の方法を試みてください。
 
 
まずは食品をより細かく刻むことや、ミキサーなどでペースト状にして提供することが有効です。噛む力が衰えている場合、十分に軟らかくなるまで食品を煮るのもよいでしょう。
 
 
嚥下能力が衰えている場合、片栗粉や市販の「とろみ剤」を食品と混ぜ合わせるようにしましょう。特に水分補給で飲み物を与える際、液体は少しでも量を間違えたり、急いで飲ませようとしたりすれば誤嚥につながりやすくなります。お茶やスポーツドリンクにとろみを付ける液体用のとろみ剤もあるため、誤嚥が心配だという方はうまく活用したいところです。
 
 
また食事を提供する際、"見た目"も重要なポイントです。きざみ食やミキサー食では美味しそうに見えにくいこともあり、食欲を奪ってしまうことも考えられます。そのため、食事が美味しそうに見える工夫も重要になってきます。
 
 
高齢者の中には外食が好きな人も大勢います。医師からの食事制限がないかぎり、たまには外食したり出前を取って食べたりするのも良いでしょう。家族としても、食事を用意する手間から解放されるため、お互いの気分転換にもつながります。
 
 

食事介助の正しい手順〜食事の前にするべきこと〜

それでは実際の食事介助の方法・手順について触れていきます。まずは食事の前に気を付けておきたいポイントを紹介します。
 
 

食事前の声かけ

最初に、食事の時間であることをしっかりと伝えましょう。食事の直前までぐっすり寝ているケースもあるので、目を覚ましてもらうことは誤嚥の防止につながります。「今日のおかずはおじいちゃん(おばあちゃん)の大好きな〇〇ですよ!」といったように、メニューの説明することで食欲を刺激することも重要です。
 
 

部屋と身の回りを清潔にする

箸やスプーンを持つ前に手を清拭(せいしき)しましょう。洗面所まで歩くことが難しい場合は濡れたおしぼりで手のひらや指の間を丁寧に拭いてあげてください。食べ物をスプーンから落とし、衣服を汚してしまう恐れもあるので、首にかけるエプロン(前かけ)も用意しましょう。寝たきりやそれに近い状態の場合、生活臭がどうしても部屋に充満してしまいます。自室のベッドで食事をする場合、部屋の換気をしておくことも大切です。
 
 

口腔内を清潔にする

だ液の分泌量が減ってくると口内が乾いてしまうと雑菌の温床になります。十分な口腔ケアをおこなわないまま物を食べてしまうと、雑菌も一緒に体内に取り込んでしまうことになります。うがいまたは口腔ケア用のスポンジなどで口の中をきれいにしておきましょう。入れ歯の場合は、食事の前後に入念に洗浄することを忘れないように。
 
 

正しい姿勢を取る(上半身を90度に近い角度に起こす)

歩行が可能な場合、なるべくイスに座って家族と一緒に食事をしましょう。このような一家団らんの時間は、高齢者本人にとってリラックスできる大切な時間になります。食事の際にイスに座る大きな理由は、上体をできるかぎり90度に近い状態に保つことで、重力によって食べた物がスムーズに食道へと運ばれるからです。同時に誤嚥のリスクも大幅に軽減できます。歩行困難でベッドで食事を摂る場合、リクライニングで上体を徐々に起こし、本人が苦しくない角度を確認した上で食事介助にあたるようにしましょう。
 
 

食事介助の正しい手順〜食事中の介助方法と食後のケア〜

被介護者本人が箸やスプーンを持ち食事を取り分けたり、口に入る適量の大きさに切り分けられたりできる場合、介助にあたる家族は基本的に見守り、本人の動作がスムーズにいかないときに手助けをするようにします。しかし、独力での食事が難しい場合、以下の介助方法を実践してみてください。
 
 

介助者は被介護者の横に座る

介助者と被介護者が横一列に座り食事介助するのが基本です。同じ視点でテーブルを見渡せるため、より自然な位置関係で介助に臨めます。脳梗塞などで片麻痺の後遺症が見られる場合、介助者は麻痺のない側に座って介助すると安全です。対面に座った状態で介助をすると視線を気にしてしまうため、介助される側は監視されている気分になりどこか落ち着かないと感じてしまいます。
 
 

スプーンは下の角度から、嚥下できる適量で

次に介助者は、スプーンで食べ物をすくい被介護者の口に運ぶことになりますが、このとき被介護者がきちんと安全に飲み込める量にすることが大切です。同時に、被介護者の口の少し下の位置にスプーンを運ぶようにしましょう。スプーンの位置が高いと、被介護者は首が上を向いた状態で飲み込むことになるので誤嚥のリスクが高まります。
 
 

主食、副菜、汁物などをバランスよく交互に食べる

主食(ごはん)、おかず、野菜、味噌汁などバランスよく交互に運ぶようにしましょう。一つの食品を連続して食べると飽きが来やすく、楽しいはずの食事も味気ないものになってしまいます。また、途中でお茶や水による水分補給も忘れてはいけません。
 
 

被介護者のペースを見極め急かさない

高齢者は一概に食べるペースが遅いものです。被介護者のペースを把握しゆっくりと介助するようにしましょう。なかなか食事が進まないことに介助者はイライラしてしまうことがあるかもしれませんが、決して急かしてはいけません。焦って食べさせるとやはり誤嚥の可能性が高くなるばかりか、食事が楽しくないイメージを持ってしまいます。必ず高齢者のペースに合わせるようにしましょう。
 
 

食後の口腔ケア

食事が終わったあとは、歯磨きや口の中をゆすぐ、入れ歯を外すといった口腔ケアも重要です。口の中をすっきりと清潔にしてもらった上で休んでもらうようにしましょう。
 
 

終わりに

嚥下能力が失われた介護度の高い高齢者の中には、点滴や経管栄養(体の表面に開けた穴から流動食を流し込む)で栄養を摂取する人も大勢います。しかし、自分の口で好きな物を食べることは、その人に残された機能を最後まで生かすことでもあり、何より生きることの喜びを感じられる瞬間でもあります。幸せな老後を過ごすためには、家族のサポートによって、最後まで"食べる"ことを継続できるかどうかも大きく関わってくるのです。
 
 

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