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【医師監修】認知症は遺伝する? 発症しやすい素因や生活習慣など因果関係を探る|認知症のコラム

【医師監修】認知症は遺伝する? 発症しやすい素因や生活習慣など因果関係を探る|認知症のコラム

更新日:2021.12.08

【最終更新日:2022年2月8日】

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加齢とともに心配の種となる認知症。現在、高齢者の7人に1人が認知症と言われており、高齢者の増加に伴って認知症の人の数も増え続けるとみられています。こうした状況を受けて、今回の記事では認知症になりやすい人の素因や生活習慣について考えていきます。


【監修者】
矢島 隆二 医師

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脳神経内科・認知症・総合内科などを専門としている。新潟大学医学部卒業後、地域中核病院や大学病院などでの高度急性期医療から地域の総合病院まで幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症の研究も行い、医学博士も取得している。

現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点をおいた神経内科を主体とした医療を担っている。
神経難病やアルツハイマー病などの治験も行っているほか、講演や執筆の依頼も積極的に受けている。日本リハビリテーション医学会 認定臨床医の資格取得。


認知症と遺伝について

遺伝的な要因が関与している疾患はいくつもありますが、アルツハイマー型認知症においても、遺伝的な要因は大きく関係しています。アルツハイマー型認知症の発症には、生活習慣や身体疾患などの後天的な環境要因が40%程度影響を及ぼすとされる一方で、残りの約60%程度は先天的な遺伝要因によるものと指摘されています。

アルツハイマー型認知症の発症には、「アミロイドβ」と「リン酸化タウ」と呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積することが深く関係します。このアミロイドβの蓄積に直接的な影響を及ぼす遺伝子として、1990年代に発見された「APP」「PSEN1」「PSEN2」が知られており、アルツハイマー型認知症の原因遺伝子と表現されます。

これらの遺伝子に変異が生じると、アミロイドβの産生・蓄積が促されて「家族性アルツハイマー型認知症」を発症します。このアミロイドβを除去することを目的としたのが、「アデュカヌマブ」という2021年に米国で使用が認められた治療薬です。

また、上記3つの遺伝子ほど直接的な影響を及ぼすわけではありませんが、アルツハイマー型認知症の発症のしやすさに影響する遺伝子もいくつか知られています。これらを「感受性遺伝子」と言います。

アルツハイマー型認知症の代表的な感受性遺伝子の一つが「APOE」です。APOEの遺伝子には3つのタイプがあり、それぞれε(イプシロン)2、ε3、ε4と呼ばれます。ちょうど血液型にA・B・Oの3つのタイプがあるようなイメージで、すべての人がこのε2、ε3、ε4のいずれかを両親から一つずつ受け継いでいます。

両親からε3を受け継いでいる方を標準的とした場合、ε2を受け継いだ方はアルツハイマー型認知症を発症しにくく、ε4を受け継いだ方は発症しやすいことが明らかになっています。

ただし、アルツハイマー型認知症を発症するかどうかは先天的な要因のみで決まるわけではありません。認知症の疑いで医療機関を受診する人の多くは70~80歳代です。この年齢に達する頃には、遺伝以外の要因で認知症を発症していることも多いのです。

認知症とうつの関連

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様々な研究結果により、うつ病と認知症の関連が注目されています。うつ症状が認知症の前駆状態であることもあれば、うつ病と認知症が合併していることもあります。

また、うつ病で記憶力が低下してしまったために、「認知症っぽく見えてしまう」こともあります。このようにうつと認知症は互いに複雑に関与する病態であり、その判断には医療機関での精密検査が必要になります。

認知症と因果関係がある病気と生活習慣

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ここまで、遺伝や精神疾患と認知症の関連について説明しました。次は、生活習慣の影響と認知症の関係についてみていきましょう。

生活習慣病のなかには、認知症との因果関係が明らかになってきているものもあります。これらの生活習慣への対応として、世界保健機関(WHO)が2019年5月に、世界初となる認知症予防のためのガイドラインを公表しています。認知症と認知機能低下を予防するための具体的な介入方法をまとめた、初のガイドラインです。そのガイドラインを踏まえた対応も交えながら解説していきます。

運動不足

運動不足は認知症の発症リスクを上げることが指摘されています。対策としては、150分/週以上の有酸素運動や、75分/週以上の活発な運動が認知症の予防に良いとされています。ウォーキングなどの運動を毎日の運動に取り入れると良いでしょう。

偏った食事

偏った食事も認知症の発症に影響しています。そのため、様々な種類の食材をバランス良く日々の食事に取り入れましょう。雑穀や玄米、マメ・ナッツ類とともに、野菜と果物を1日あたり400g以上摂取することが推奨されています。

ただし1日に2,000kcal以上を摂取している人では、糖類を5%未満に、脂肪を30%未満に抑えることが望ましいです。脂肪の多い牛や豚などの動物性食品を抑えて、食塩は1日あたり5g未満に抑えましょう。

福岡県久山町で実施された研究では、「大豆・大豆製品、野菜、藻類、牛乳・乳製品、果物、芋類、魚」を摂取する重要性が報告されています。これらの食材を多く摂った人たちは、そうでない人たちと比べて認知症の発症リスクが低下したことが判明しているのです。

飲酒や喫煙

過度のアルコール摂取によって、脳が萎縮して認知機能が低下することがわかっています。また、喫煙も同様に、体を害するだけでなく、認知機能の低下にもつながっています。少しでも早い禁煙が認知症の予防につながります。

肥満(メタボリックシンドローム)

野菜不足かつ脂肪の多い食事が続くと、体重が増加し、動脈硬化や高血圧を引き起こす可能性が高まります。そして血管には大きな負担がかかってしまいます。中年期の肥満はとくに注意が必要なので、適正体重の維持を心がけましょう。

糖尿病

糖尿病を患っていると、アルツハイマー型認知症や血管性認知症を生じる危険性が高まることが知られています。血糖コントロールがうまくいくよう、日頃からかかりつけ医にしっかり診てもらいましょう。

脳血管疾患

脳の血管が破れて起こるくも膜下出血や脳出血、脳の血管が詰まる脳梗塞なども、認知症を引き起こす要因になり得ます。これらの脳血管障害はアルツハイマー型認知症の症候を目立ちやすくするほか、血管性認知症の原因にもなるため注意が必要です。

そのほか、内科的疾患

甲状腺機能低下症、ビタミンB群の欠乏などにより、認知症のような症状が出ることがあります。早期の治療によって改善も期待できるので、早めに医療機関で調べてもらうことが大切です。

生活習慣の見直しで認知症予防を

今回は、認知症になりやすい精神的素因や生活習慣などの要因について解説しました。認知症を予防するためには、まず認知症を他人事とせず、誰もがなり得る病気として正しく知ることが重要です。

さらに規則正しい生活を習慣づけて、ストレス解消をお酒やタバコなどの嗜好品に頼らないようにしましょう。

健康的な日常を心がけることが、認知症になる要因を減らすために重要です。

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