介護のお役立ちコラム

【医師監修】人工肛門・人工膀胱(ストーマ)とは?装置の交換や生活上の注意点なども解説|介護のコラム

【医師監修】人工肛門・人工膀胱(ストーマ)とは?装置の交換や生活上の注意点なども解説|介護のコラム

更新日:2021.04.05

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人間40代に差しかかると、体に起こる異変にあれこれ気づき始めるようになりますが、特に同世代における死亡原因のトップでもある悪性腫瘍(がん)には要注意です。ある程度がんが進行している場合、体の一部を切除するケースが多いですが、失われた機能は人工の物で補うほかありません。

今回は「ストーマ」と呼ばれる人工肛門・人工膀胱の役割や生活上における注意点などについて解説します。


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


がん患者の排せつ機能を受け持つ「ストーマ」の役割

大腸がんや膀胱がんなどにより、器官の一部または全体を摘出した場合、「ストーマ」と呼ばれる人工肛門、人工膀胱を体の外に取り付けて、排便を体外へと取り出し管理するようになります。手術により腸や尿管を直接体外へ露出させるため、ストーマ自体は赤い突起物のような形状をしていて、粘膜で覆われています。

人工肛門(消化器系ストーマ)には単孔式と双孔式の2種類があります。腸管を摘出した人の場合、基本的には単孔式による永久人工肛門を採用しますが、潰瘍性大腸炎や腸閉塞の手術の術後など、一定期間腸を休ませたい患者などには双孔式を採用します。双孔式はあくまで一時的な処置となるため、将来的には普段どおりの排便に戻ることができます。

ストーマを造設した人を「オストメイト」と呼びます。オストメイト人口も年々増えており、後述するバリアフリー面でも欠かせないキーワードとなってきていることから、この機会に「ストーマ」と同様にぜひ覚えてください。

体の一部となるストーマ装具について

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体外へ排出された便はストーマ用の装具を用いて管理することになります。これら装具は、直接皮膚と接する部位(面板)と、排出された便を溜める袋(パウチ)から構成されています。

面板はキャップの口のような形状をしており、その先にパウチを取り付けセットで用います。面板には皮膚と密着してパウチの中身や臭いが外へ漏れないようにする働きのほか、汗などの水分を吸収し便の皮膚への付着を防ぐ効果もあります。また、面板とパウチが一体となったワンピースタイプの物もあります。それぞれ使用感や取り扱い方法も異なるため、自分に合ったタイプのものを選ぶとよいでしょう。

排せつ物の管理について

直腸には大便を溜めて肛門へと押し出す役割があり、膀胱には尿を溜め尿管へと流す役割があります。各器官に便が溜まることで、便を体外へと排出させるよう脳に指令が働きますが、手術で器官を摘出した場合、便意が脳に伝わらないため自分の意思とは関係なく便がストーマから排出されます。

個人差はありますが、ストーマの交換は3~4日に1回とされています。交換時には汚れてもすぐにふき取りができるよう、ティッシュや濡らしたタオル、洗浄用の石けんを準備しておきます。使い終わったパウチは水洗いして、自治体の定める方法に従って廃棄処分します。排便のペースは体調や食事量によって変わってくるため、自分の排せつ周期をある程度把握しておき、定期的に交換できるようパウチやサニタリー用品を切らさずストックしておくようにしましょう。

覚えておきたい多機能トイレの使用方法

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溜まったパウチを自宅で処理する分には問題ないかもしれませんが、外出中や旅行先の慣れない環境で処理するケースも出てくることかと思います。そのようなときは車いすの人なども使用する多機能トイレを率先して使用するようにしましょう。多機能トイレの中でも、溜まった便を簡単に捨てることができ、ストーマやパウチの洗浄もできる「オストメイトトイレ」が急速に普及しています。

オストメイトトイレでは、個室内に便器とは別に洗浄台が設置されています。奥行きの狭い流しのような形状で、シャワーノズルが付いているタイプもあります。この洗浄台は比較的高めに設置されているため、立ったままパウチの中身を捨てることができます。これが一般のトイレで便器に捨てる場合、通常の便器の高さでは中腰に構えて捨てなくてはならないため、体への負担が大きくなるデメリットがあります。また取り外し時のトラブルで皮膚やストーマに汚物が付いた場合も、シャワーによって簡単に洗い流せるので安心です。

2006年に施行されたバリアフリー新法でも、オストメイト対応設備の設置義務対象が拡大され、大規模な商業施設や集合住宅の共用部のほか、観光地、ターミナル駅、空港、高速道路のサービスエリアなどでの設置が急速に普及してきました。

日常生活における注意点

ストーマ装具は体外に取り付けるため、つい他人の目が気になるところですが、少しゆったりとしたシャツやワンピースを着ることによってきちんと隠すことができるため、今までどおりにおしゃれを楽しむことができます。数日間外出する場合は、装具やサニタリー用品一式を携帯するようにしてください。普段使っている物と同じ装具がどこでも手に入るとは限りません。荷物が増えて面倒かもしれませんが、安心して旅を楽しむためにも必要なことです。

皮膚のトラブルには要注意です。面板の圧迫による血行障害や、汗や尿などで濡れた皮膚を放置するとかぶれの原因となります。ほかにも、保護用に使うテープの粘着剤の成分が原因で皮膚炎を起こすことも考えられます。また、そこから発生したカビによる細菌感染も考えられます。装具の管理をおこなう本人はもとより、関係する家族や看護師なども手指の消毒、ストーマ装具や衣服の洗浄を徹底しなければなりません。

"見えない障がい"を知らせるオストメイトマーク

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ストーマを使用していることを知らせるオストメイトマークというものがあります。ストラップ型のマークをかばんや衣服に付けるようにすれば、自らオストメイトであることを名乗りにくいケースで役立ちます。

施設の受付や総合案内でこのマークを見た場合は、速やかにオストメイトトイレへの誘導ができます。また、オストメイトは外見からはわかりません。パウチの洗浄で多機能トイレを使い外に出たところ、「健常者のくせに多機能トイレを使うな!」と咎められたケースもあるようです。こういった誤解を解いて安心してトイレを利用するためにも、オストメイトマークの徹底した周知が求められることでしょう。

オストメイトが受けられる減免措置

面板やパウチといったストーマ装具は使い捨てとなりますが、大腸や膀胱を切除した場合、永久にストーマ生活を送ることになるため購入費用も大きな負担となります。しかし、これら装具の購入は健康保険適用外となるため、すべて実費となります。

ただし、装具代は医療費控除の対象となるため、確定申告時に税務署へ届けるようにしてください。装具購入時に受け取ったレシート(領収書)も必要となるため、常に保管する習慣を付けましょう。

永久的なストーマを付けた場合、術後に身体障害者手帳を発給してもらうことでストーマ装具購入費用が支給されます。月額の上限があるほか、人工肛門か人工膀胱かによって支給額も異なります。身体障害者手帳を発給するかどうかも含めて、詳しくは市区町村の福祉課に相談してみてください。

終わりに

オストメイトになると、装置の交換に要する手間や自分の意思とは無関係に排便されることにストレスを感じるかもしれません。しかし、オストメイトトイレの普及もあり、正しく装置を使えれば健常者と何ら変わりない生活を送ることができます。失った体の器官は戻ってきませんが、今まで以上に楽しく暮らせるよう、周囲がサポートすることも大切です。

 

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