介護のお役立ちコラム

【医師監修】人工透析・血液透析とは?合併症や介護における注意点を解説|介護のコラム

【医師監修】人工透析・血液透析とは?合併症や介護における注意点を解説|介護のコラム

更新日:2021.04.09

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慢性的な疾患により日ごろから通院や投薬を繰り返している人は大勢いますが、ケアの頻度の高さや処置の複雑さの代表格と言えるのが「人工透析」です。現在日本では約34万5,000人の透析患者がいますが、これは国民の366人に1人にあたる計算となり、患者数も年々増え続けています。

今回は、人工透析療法の仕組みや日常生活における注意点などについて触れていきます。


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


重度の腎不全に対する療法「人工透析」

腎臓には体内の毒素を分解したり余分な水分を尿として排泄する役割があります。しかし、腎臓の機能が全体の10%以下に落ち込む重症腎不全では不要な老廃物により汚染された血液が体内を巡り、全身のむくみや尿の異常、高血圧といった症状に見舞われるようになります。

重度の腎不全になると、自然の治癒力で血液を浄化し、血液内の老廃物や余分な水分を尿として排泄することが不可能となるのです。そこで、血液を体外に取り出し腎臓の代わりとなる機械で浄化させた後、きれいになった血液を再び体内に戻す療法が「人工透析」になります。

腎不全を放置するとからだの中に老廃物がたまることで「尿毒症」を発症します。尿毒症になると、食欲不振や、頭痛、嘔吐といった症状がみられるようになり、やがてけいれんや呼吸困難、心不全に陥り、最終的には死の危険をともないます。

血液を体外に取り出し循環させる「血液透析」

人工透析には「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があり、日本の全患者の約97%が血液透析を選択しています。

血液透析を受けるにあたり日常的に血液の入れ替えをおこなうため、皮下に「シャント」と呼ばれる血液の出入口を作成します。利き手ではない方の手首近くに、静脈と動脈を接着する外科手術を行い、約1~2時間で完成します。血管の状態などでシャントをつくるのが難しい場合には動脈表在化やカテーテル、血管グラフトなどを使用する手術を行うこともあります。

治療ではポンプで血液を体外に取り出し、「ダイアライザー」と呼ばれる浄化器で不要な水分や老廃物と、リンやカリウムといった電解質を除去し、きれいになった血液を再び体内に戻します。

一方、腹膜透析ではカテーテルを腹膜に刺して濃度の高い透析液を体内に注入します。腹膜は微細な毛細血管によって構成されているため、一定時間が過ぎると余分な水分や老廃物を吸収した古い透析液が、浸透圧の差によって体外へと送り出されていきます。血液透析と比べて、複雑な装置を使用しないことや体への負担が少ないメリットがあります。ただし、腹膜透析では腹膜炎の合併症のリスクや腹膜透析を繰り返すことで腹膜が硬化し、透析を続けることができなくなるため、この治療法を継続できるのは約5年とされています。

透析患者のQOL維持のため、治療プロセスの幅も広がる

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人工透析患者を悩ませる最大の要因は、処置の頻度の高さと1回の治療における処置時間の長さです。人工透析は基本的には週3日ペースでおこなうことが多く、1回の治療に要する時間も4~5時間かかるため仕事や家事などの日常生活が大きく制限されてしまいます。

そのような中、少しでも患者の負担を減らしプライベートを充実できるよう、治療法も幅広いものになってきました。まだまだ、血液透析は通院によるものが一般的ですが、自宅にダイアライザーを設置する在宅血液透析を扱う施設も出てきました。感染症予防や機器の正しい取り扱いなど、本人はもとより家族や訪問する看護師なども正しい知識の習得や自己管理の徹底が必要となりますが、時間の制約など在宅で行うメリットも大きいといえるでしょう。

人工透析は終わることのない長い戦いです。就寝中に実施する夜間透析では、昼間の時間を有効に使うことが可能で、治療による精神的なストレス軽減や仕事に影響が出にくくなるメリットがあります。実際のところ、在宅や夜間透析は実施できる医療機関が限られてはいますが、少しでも患者の負担を和らげQOL(生活の質)を向上させるためにも、さらなる普及が望まれます。

人工透析で注意したい合併症の数々

人工透析の治療の際に起こりうる合併症だけでなく、腎不全に対する合併症のリスクもあります。ここでは人工透析患者が注意したい合併症の代表的なものを紹介します。

不均衡症候群

血液透析を始めて間もないころに起こりがちな症状です。体が透析に慣れていないため、脳の内圧が高くなると、透析終了後に頭痛、めまい、吐き気などといった症状がみられます。

血圧の変動

透析治療中に高血圧・低血圧に陥ることがあります。血圧異常を放置しておくと生活習慣病につながる可能性もあるため、治療中に悪心を覚えたときは、速やかに医師に報告するようにしましょう。

二次性副甲状腺機能障害

腎不全により、リンが腎臓で排泄されなくなり高リン血症になります。これによりカルシムやビタミンDといった栄養素が不足し、血液中のカルシウム濃度を上げようと副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。その結果、骨が溶け出すことで骨折しやすくなったり、動脈硬化が進みやすくなったりといった症状が現れます。

アミロイド骨関節症

透析治療によりアミロイドという物質が骨や関節に沈着し、全身の節々に痛みやしびれといった症状が出ることがあります。厄介なことにアミロイドは血液透析で浄化することのできない物質の一つです。そのため、日ごろからストレッチや軽い運動を取り入れ、予防に努める必要があります。

高カリウム血症

多くの食品に含まれるカリウムは腎不全の最大の敵とも言えます。カリウムを多量摂取すると、全身の倦怠感やしびれといった症状のほか、不整脈を起こすこともあるため大変危険です。重度の腎不全患者の場合、服薬によってカリウム値をコントロールすることが必要となります。

生活や介護における注意点

人工透析患者が日常生活で注意しなくてはいけない点はいくつもあります。第一にシャント部分のメンテナンスです。シャントは体の内部とつながる穴なので、感染症予防のためにも消毒を徹底し、常に清潔にすることが求められます。

利き手と逆の手に設置するのは、激しい動作によりシャントのずれを防ぐためです。シャント側の手に腕時計をしたり重いバッグを手首にかけたりしないようにしましょう。就寝時には、手首付近に体重がかかるような体位を取ることや、無意識に利き手でシャントをいじることのないよう注意しましょう。

厳密な栄養管理も求められますが、特に注意したいのがカリウムの摂取量です。カリウムは根菜などの野菜、バナナやドライフルーツなどに豊富に含まれています。なるべくカリウムを摂取しないよう心がけましょう。野菜についてはゆでるとカリウムが水に溶け出すため、加熱調理することを推奨します。

むくみの原因となる塩分と水分の摂取量にも気を配ります。塩分を摂ると自然に水も欲しくなるためダブルで注意が必要です。血管に負担がかかる飲酒・喫煙も極力避けたいところです。

あまり栄養管理に気を遣い過ぎると、食物繊維や水分が足りなくなり便秘になることがあります。食事で腸内環境を整えることを第一に考え、それでも改善されない場合は医師から薬を処方してもらうようにしてください。

人工透析対応可の老人ホームも増えている

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基本的に腎機能は低下することはあっても改善することはありません。重症腎不全に至ると人工透析導入となり、生涯通院治療を継続しなくてはなりません。高齢になると通院も一苦労ですが、透析治療患者を受け入れている有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅もあります。

提携する医療機関により定期的に問診が受けられるほか、看護師が常駐している施設もあるため、大きな安心感を得ることができます。加えて、通院にかかる時間と交通費が削減できるメリットもあります。

▼全国の人工透析受入れ可能な施設特集はこちら
https://www.sagasix.jp/theme/dialysis

終わりに

今回ご紹介したように、人工透析による時間や食事面の制限は実に大きく、患者が抱えるストレスは筆舌に尽くしがたいものがあります。治療に前向きになるためにも、家族は粘り強いサポートを続け、患者と一体となり日々の暮らしを支えてあげてください。

 

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