介護のお役立ちコラム

尊厳を傷つけない!正しい排泄介助の方法|介護のコラム

尊厳を傷つけない!正しい排泄介助の方法|介護のコラム

更新日:2018.06.14

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家族の介護を始めるにあたり、多くの人にとって悩みの種になるのが「排泄介助」ではないでしょうか?


育児を経験している人にとって、おむつの着脱は手慣れたものかもしれませんが、赤ちゃんと大人では体の大きさも異なり、手順も当然異なります。またより力も必要になってきます。


さらには長年一緒に暮らしてきた家族とはいえ、排泄物を目の当たりにするのは抵抗があるでしょう。しかし、介助を受ける高齢者本人は、介助者以上にデリケートな問題なのです。


今回は、高齢者の尊厳を傷つけないための、適切な排泄介助の方法や注意点について紹介します。

トイレを利用する介助について

まず自宅のトイレで排泄をする場合の介助方法を確認しましょう。介助する家族に出来ることにはどのようなことがあるのでしょうか? 具体的な手順はもちろんですが、介助の前にしっかりと心得ておかなければいけないこともあります。


まずは基本的な家庭のトイレでの排泄介助の手順を見ていきましょう。

【トイレでの排泄介助の手順】

①トイレまでの誘導
障害物がないか、など本人がしっかり歩けるかを、確認してください。必要がある場合は、歩行の介助をしましょう。本人の歩行ペースを崩さないように注意してください。



②衣服(ズボン、パンツ、おむつなど)の脱衣
基本的に本人が出来ることは本人に任せましょう。



③便座に座るまでの介助(移乗)
足腰が弱く、トイレに介護用の手すり等を設置していない場合は、転倒しないように介助をしましょう。



④排泄中は外で待機
排泄中は、本人が気にならないように介助者はドアの外で待機しましょう。その際にドアは少しだけ開けておき、異変に気づけるようにしましょう。



⑤排せつ終了の確認(声かけ)
排泄が終わったら、合図をかけてもらいましょう。なかなか合図がない場合は、外から声をかけて、状況を確認しましょう。しかし、焦らせたり、促すようなことは絶対にしないようにしてください。



⑥清拭(せいしき)
自身で清拭ができない場合は、すばやく手伝ってあげましょう。またこのときに排泄物を確認して、健康状態を把握するようにしましょう。



⑦衣服の着衣
自身で衣服を着ることができない場合は、介助をしましょう。



この一連の流れをスムーズにおこなうことが重要です。時間がかかるほど被介助者は羞恥心を感じ、尊厳が傷つけられてしまいます。最初はお互いに慣れず、失敗があるかもしれません。しかし、叱ることはせずに、回数を重ねて素早くできるようコツをつかむことが大切です。

尊厳を傷つけない

これまで独力でおこなってきた排泄行為の一部を、家族とはいえ人に見られるわけですから快く受け取る人はいません。


同時に介助者は決して不快な態度や言動を表してはいけません。不快な態度を見透かされてしまうと、介助者は羞恥心を強く感じるようになるばかりか、排泄という行為自体を罪に感じてしまい、心を閉ざしてしまう可能性があります。また、仮に排泄に失敗しても決して咎めることがあってはなりません。ますます自信を無くし人間不信に陥ってしまうかもしれません。逆にうまく行えたときは一緒に喜んであげましょう。

出来ることは自分でやってもらう

上記の排泄介助の手順はあくまで一例であって、被介助者が自立排泄できるのであればその部分はサポートする必要はありません。ただし安全に排泄をしてもらうためには、トイレとその周辺にはバリアフリーが必要となります。


まずトイレは座って用が足せる洋式でなくてはいけません。和式の場合は、便器の上に便座をかぶせる洋式タイプの簡易便座を購入するとよいでしょう。ほかにはトイレ個室内の手すり、ヒートショックを防ぐための温熱便座、温水洗浄も必要です。終わったあとの清拭や水洗も独力で出来るようならばやってもらうようにしましょう。


すべてに介助をしてしまい、指示を出してしまうと、本来の目的である自立状態からより遠くなってしまいます。

水分補給はこまめにする

一度、排泄で失敗してしまうと、同じ過ちを繰り返したくない一心で、極力トイレに行かないで済むよう水分補給を拒むケースが想定されます。しかし、水分補給を怠れば、脱水症状や便秘につながるため健康上よくありません。こういったリスクもきちんと説明し、これまでどおり水分を摂取してもらうよう努めましょう。


また繰り返しにはなりますが、失敗しても決して叱ったり、咎めたりはしないよう細心の注意を払ってください。

排泄のパターンを掴む

排泄で失敗しないためにも、家族は被介護者の排泄のタイミングを知っておくことも重要です。その時間を見計らって早めにトイレに誘導出来ればスムーズな排便が可能となるでしょう。ただしこのときも急かしたり、焦らせたりするような言動は禁物です。


また毎日同じ時間にトイレに行くような習慣ができると、リズムもつかみやすくなります。

ポータブルトイレや尿器を使用する場合の介助方法

人の手を借りながらも家庭のトイレで排泄出来ることは理想的かもしれません。しかし、寝たきりまたは認知症の悪化で便意・尿意の察知が難しい人の場合、自立排泄することが難しくなります。


また身体機能の衰えによって、トイレに到着する前に失禁してしまうケースも出てきます。こういった場合、居室やベッドの上でも排泄が出来る器具を用いて対処することになります。

ポータブルトイレの場合

簡易式の持ち運びができるトイレをポータブルトイレと言い、「トイレに座ることができる」「排泄のタイミングを自身で判断出来る」「短い距離の移動が可能」な方に向いています。また自立の方でも、夜間の排泄が多いなどの傾向があればベッドの近くにポータブルトイレを設置しておくと便利です。


すぐ移乗出来るよう、ベッドの真横に据え付けておけば排泄失敗のリスクを軽減出来ます。ポータブルトイレでもある程度の介助が必要な場合は、家庭用トイレの時と同様に、被介護者のプライバシーを尊重するようにしましょう。


また、もともとポータブルトイレはレジャーや災害時向けに開発されたものですので、四つ足で手すりも付いた介護向けのポータブルトイレを選んでください。

尿器(尿瓶)の場合

小便のみならば尿器を用いるのがもっともスムーズです。ベッドの策にひっかけておいて、尿意を感じたら手を伸ばし陰部にあてがうだけで済みます。尿器は男性用と女性用では形状が異なるので購入の際は間違えないようにしましょう。介助をする場合は、トイレットペーパーやタオルを敷くことでベッドを汚しにくくなります。ここでもできることは本人にやってもらうのが重要です。家庭用トイレを使用する場合と同様に、介助者に陰部が見えないようにするなどの配慮が必要です。


家族は毎朝、使用した器具を確認し、きちんと洗浄するよう努めましょう。また尿や便の色、形状は健康状態を知る大切な要素になるので、異変を感じたら病院へ行き医師の診断を仰ぐようにしましょう。

夜間の排泄〜ケア軽減のためにできること〜

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比較的重度の要介護者と暮らしている方にとって、夜間の排泄介助が悩みの種となっている方も多いのではないでしょうか?


要介護者が深夜にトイレに行くことは心配ですし、毎回介助をしていると疲労やストレスが溜まってしまいます。また要介護者自身も布団やシーツを汚してしまった場合、部屋に臭いが残ってしまった場合など、どうしてもその記憶が脳裏から離れず、安心して眠れなくなる人もいるようです。


それでは夜間の急な失禁を防ぐためにはどのようなことができるのでしょうか?

介助器具を使う

上記で紹介したポータブルトイレや尿器を常に部屋に設置しておくことです。それでもタイミングが合わない、深い眠りで尿意に気づかないことも考えられますが、失禁のリスクは大きく軽減出来るはずです。

就寝前に必ずトイレに誘導し、過度の水分摂取を避ける

夕食時や食後に多量の水分を摂取した場合、寝る前に一度トイレに誘導するようにしましょう。これだけでも幾分か失禁のリスクは軽減出来るはずです。

排便のタイミングを朝型になるようにコントロールする

人間の体の構造上、摂取した食べ物によって腸が刺激されると便意を感じやすくなります。また重力も排便に密接に関係していて、寝たままの状態よりも、上半身だけでも起こしているほうが食べた物が直腸へと流れやすくなります。排便をするタイミングには個人差がありますが、まずは朝食をしっかり決まった時間に、そして座った状態で摂るようになれば、排便を朝型にシフトすることが出来るでしょう。

おむつを着用する

排泄は生理現象ゆえ、どんなに対策を練っていても夜間の失禁を100%防ぐことは難しいものです。そのためおむつを着用しておけば家族も本人も安心です。


しかし、よく誤解しがちなのが、トイレや尿器の代わりとしておむつに用を足すように促すことです。現在、多くの高齢者が成人用の紙おむつを使用していますが、進んで着用したいと思っている人なんて一人もいません。寝たきりや重度の認知症でないかぎり、おむつはあくまでトイレが間に合わなかったときのためのセーフティネットと考えるべきでしょう。

終わりに ~トイレは出来る限り自分の力で

排泄という行為は人間の尊厳や羞恥心に大きく影響するものです。これから家族の介護を始める人でも、将来自分が介護される側になったときのことを考えると、決して人任せでなく、できるかぎりのことを独力で済ませたいと思うのが自然でしょう。


排泄は食事と同じで毎日の習慣です。決して怒ったり急かしたりするようなことはせず、本人の残存している能力をしっかりと見極めた上で、本当に必要な介助だけを提供してあげるようにしましょう。しかし、毎日のルーティンゆえ、排せつ介助自体を負担に感じてしまう人もいるようです。家族だけの介護に限界を感じるのであれば、介護サービスの利用や老人ホームへの入居を積極的に検討するようにしましょう。

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