介護のお役立ちコラム

【医師監修】認知症早期発見の手助けになる「VSRAD」とは?|認知症のコラム

【医師監修】認知症早期発見の手助けになる「VSRAD」とは?|認知症のコラム

更新日:2020.03.04

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認知症の中でもっとも罹患者が多いアルツハイマー型認知症。重症化を防ぐためには早期発見がカギとなりますが、全国の病院ではアルツハイマー型認知症診断の一助となる画像診断サービスの導入が始まっています。今回ご紹介する「VSRAD(ブイエスラド)」は短時間かつ低料金で検査ができることで高い注目を集めています。


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


手軽にMRI検査と一緒に実施できる「VSRAD」

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「VSRAD(ブイエスラド)」は、海馬傍回(かいばぼうかい:海馬の周囲に存在する灰白質の大脳皮質領域)の萎縮の程度を確認することができる画像診断装置で、大日本印刷とエーザイが共同開発しました。

撮影した画像と健康的な状態の海馬傍回を照らし合わせることで、萎縮の具合が判明できるのです。英語の「Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer's Disease」の頭文字を取って名付けられました。

現在、脳ドックなどではMRI(磁気共鳴画像診断装置)で脳の状態を検査しますが、海馬傍回の体積は非常に小さく、従来の画像診断だけでは脳の変異を見逃してしまうことも少なくありませんでした。そこで、MRI検査と合わせてVSRADを実施することで、アルツハイマー型認知症診断の正確性を補うことが可能になりました。

一般的に、認知症の発症を正確に調べたい場合、PETやSPECTなどの核医学検査という選択肢もあります。この場合、放射性医薬品といって放射線がでる薬剤を体内に注射し、薬の動きを撮影します。微量とはいえ放射線物質を取り入れるため、少なからず被爆というかたちで体に負担が生じます。また保険適用外診療であることから、1回の検査で数万円の個人負担が生じます。

しかし、VSRADでは被爆はせず、人体への負担は少なくうけることができます。保険診療で行うMRIのオプションとしてVSRADを行うことで費用も低額にすることができます。金額は病院によって異なりますが、中には無料オプションで実施可能な施設もあります。

VSRADを受ける上での注意点

VSRAD(ブイエスラド)を導入済みの病院やクリニックも増えてきましたが、検査を受ける上での注意点があります。

第一に、あくまでVSRADは海馬傍回の萎縮具合を調べるためのツールであって、脳の萎縮が確認できただけで認知症と診断できるわけではありません。そして、VSRADの結果に異常がみられなくても認知症を発症している可能性もあります。

また、アルツハイマーだけでなく前頭側頭型認知症やピック病でも海馬傍回に萎縮がみられるため、VSRADの結果だけでアルツハイマー型認知症と断定することはできません。

検査を受けられる年齢制限もあります。50歳未満の若い脳ではVSRADの検査結果が不規則となり正確性に欠けるため年齢制限を設ける施設があるのです。

前項で説明したとおり、MRI検査とセットでの実施が原則となります。基本的にVSRADを単独で実施している病院はあまりありません。同時に、MRI検査を実施できない人(心臓ペースメーカーなどの体内金属がある方、閉所恐怖症など)の実施も不可能です。

検査結果は4段階で評価

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VSRAD(ブイエスラド)の検査時間はMRI撮影の時間と合わせてトータルで30分ほどです。前述のPETやSPECTでは、放射性医薬品が体内に行き渡るまで安静にする必要があり、撮影後は薬の効果が減弱するまでの待ち時間を設ける必要があります。事前の待ち時間に1時間程度、撮像に20分程度、撮像後の休憩に30分程度とトータルで1時間半から2時間程度の検査時間を要します。また、検査前数時間の絶食も必要となるため、体への負担ばかりでなく色々とストレスを感じる人もいるかもしれません。

検査の結果、海馬傍回の萎縮は「VOI萎縮度」という数値で表れます。萎縮度が0から1未満の場合、アルツハイマー型認知症の可能性は低いとみられます。萎縮度が1以上2未満と若干の萎縮が確認できる場合、今後の経過観察と引き続きMRI検査が必要となります。

萎縮度が2以上3未満と強い萎縮がみられる場合、アルツハイマー型認知症を発症している可能性は高まります。そして、萎縮度が3をオーバーした場合、ほぼ確実に認知症を発症しているとみられ、認知症の治療が必要になります。

最後に

さまざまな普及啓発によって認知症への関心が高まっていますが、やはり早期発見が肝心です。会社や自治体が実施する健康診断でも脳ドックを実施しています。今回ご紹介したように、VSRADは低額かつ人体への負担が少なく受けられるメリットがあります。

認知症が不安だという人は、いつもの健康診断にVSRADのオプションを加えて検査してみてはいかがでしょうか?

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