介護のお役立ちコラム

【医師監修】ピック病の特徴的症状について|認知症のコラム

【医師監修】ピック病の特徴的症状について|認知症のコラム

更新日:2017.04.19

「突然、怒り出すことが増えてきた」「女性のお尻や胸に触れるような痴漢行為をするようになった」「万引きをするようになった」など、今までとは明らかに違うご家族の様子を感じたことはありませんか?

このような症状が見られるピック病は認知症の一種ですが、私たちのよく知る認知症とは違います。ピック病は、人の人格までも変えてしまうような症状があります。今回はこのピック病について詳しくご紹介いたします。


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


日本国内に1万人以上!?前頭側頭型認知症のひとつ、ピック病

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ピック病は、若年性アルツハイマーと同じく、40~60代と比較的若い世代が発症する「初老期認知症」の代表的疾患です。

脳の前方にある前頭葉と側頭葉が萎縮する「前頭側頭型認知症」のひとつで、「ピック球」と呼ばれる脳の神経細胞の塊が前頭葉と側頭葉にできて生じます。「人間らしさ」を一気に奪う病気で、理性的な行動をとれなくなるのが特徴です。

例えば、感情の障害、意思の欠如、運動性言語障害、判断力低下、記憶低下などが現れます。そのため、一部の症状から、うつ病、統合失調症などの精神疾患と誤診されることも少なくありません。

現在、日本国内には1万人ほどのピック病患者がいると推定されていますが、この病気を診断できる医師がまだ少ないこともあって実際の数はずっと多いとみられています。本人は病気である認識がまったくないため、周りが変化に気づいてあげることが必要です。

具体的には、以下のような症状が現れます。

ピック病の代表症状

・万引き、盗難

・怒り、暴力

・社会的ルールを無視する

・痴漢行為

・決まった時間や場所などで同じ動作を繰り返し行う

・不潔でも気にならなくなる

・無気力

・料理、洗濯などの生活能力の低下

・暴食、拒食、食べられないものを食べようとする

・人の物まねをする

・同じ場所を周回、どこへ向かっているかわからず徘徊

・失語、言語理解力の低下

ここからは、もう少し詳しくピック病の症例について説明していきましょう。

症例--ピック病では人格障害が大きく現れる

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人格障害

ピック病のもっとも特徴的な症状は「人格の変化」です。ピック病になると理性や感情に障害が出てしまい、怒りっぽくなったり、他人を思いやる気持ちがなくなったり、善悪の判断をつけられなくなかったり、正しい行動をとることが難しくなってしまいます。

その結果、暴力や万引き、痴漢などの反社会的な問題行動を躊躇なくおこなうことが増えていきます。今まで温和だった人がある日突然怒りっぽくなるなど、今までとはまるで違う人格に変わってしまいます。

周囲を無視したりバカにするような態度をとったり、自己中心的な行動をするようにもなります。また、社会的なルールに従わなくなるため、セクハラや、万引き、他人の家に侵入することも。病院でも、いきなり診察を拒否したり、不真面目に答えたりします。

時刻表的行動

「時刻表的行動」といって、散歩などを決まった時間におこなう(決められた時刻表に従うような)生活をするようになります。この行動を止めようとするといきなり怒りだして、暴れまわる可能性があります。

常同行動・反響言語

毎日同じものを食べ続けたり、甘いものや濃い味付けなど嗜好の好みが変化したり、同じ言葉を何度も繰り返したり、他人の言葉をオウム返しにすることがあります。

言語障害

アルツハイマー病でも共通する症状で、物を見せても名前や使い方がわからなかったりします。また、自分から言葉を発することが難しくなると失語症になってしまいます。

ピック病に効果のある薬はまだ開発されていない

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ピック病を診断する際は、病院でCTやMRIで脳の萎縮の確認や、脳への血流を測定する検査などをおこないます。診断してピック病であることが判明したとしても、ピック病を改善する薬はいまのところ開発されていません。

その代わりに、盗癖、常同行動、異食のような異常行動を含む症状には、ドーパミンの抑制効果がある薬が処方されます。また、意欲の低下、落ち込み、無気力といったうつ症状に似た症状には、興奮性を高める薬が処方されます。

ただしピック病は認知症のひとつであるため、根本的な治療はできません。

ピック病は、認知症の分類に含まれますがアルツハイマー病よりも認知機能や記憶の機能が保たれています。そのため、認知症患者として扱うのではなく、ピック病の特徴をよく理解して接することが大切です。

病気への理解が何よりのケアにつながる

ピック病は、いきなり人格が変わったり、社会に反逆的な行動をとったり、決まった時間にある行動をしないと気が済まないなど、認知症のなかでも少し変わった病気です。

ピック病のケアとしては、よい「常同行動」を逆手にとってケアする方法があります。毎日同じ道を散歩する習慣をつける、行動の順序など本人の生活習慣に入り込まない、立ち寄りやすい場所に予め声がけをしておく、万引き対策のために料金の前払いをするなどの方法で問題を未然に防ぐことができます。

ピック病の場合、病気への理解こそが何よりの負担軽減につながるのです。

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