介護のお役立ちコラム

【医師監修】パーキンソン病の症状進行と原因|認知症のコラム

【医師監修】パーキンソン病の症状進行と原因|認知症のコラム

更新日:2017.05.17

私たちの体を蝕むさまざまな病気。医学が発達した現代、薬や高度な医療技術によって、今まで治療困難とされてきた病気がいくつも改善されるようになってきました。しかし、加齢による体の衰えとともに、要介護状態を引き起こす、治療困難な病気がまだたくさん存在するのも事実です。

手足の震えなどが出る「パーキンソン病」も、高い確率で要介護状態につながる病気のひとつ。もし家族に体の拘縮(こうしゅく/関節を動かしにくくなった状態)や歩行困難、体が小刻みに揺れるといった症状が見られるようなら、それは病気の予兆を知らせるサインかもしれません。そしてこのパーキンソン病、実は認知症との深い関係性があるのです。

今回の記事では、パーキンソン病とはどんな病気なのかに加え、パーキンソン病から派生する認知症について解説していきます。


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、脳の異常のために身体に障害があらわれる病気です。手足の震えに代表されるパーキンソン病の症状には、主に以下のような症状があります。

1. 無動(むどう)

動きがすばやくできなくなる症状です。また、歩くときに足が出なくなったり、話し方に抑揚がなくなり声が小さくなったりするなど、日常生活に支障をきたすようになってしまいます。字が小さくなることも、この症状の特徴です(小字症)。

2. 静止時振戦(せいしじしんせん)

何もしていないときに震えが起こる症状です。片方の手や足の震えから発生するケースが多いとされています。睡眠中は震えが収まりますが、目覚めると震えがはじまります。1秒間に4~6回ほど震えるのが特徴となっています。

3. 筋固縮(きんこしゅく)

肩、膝、指などの筋肉がかたくなり、スムーズに動かしにくくなります。顔の筋肉がこわばって無表情に感じられるようになり、痛みを感じることもあります。

具体的には、他人が関節を動かすとギシギシと一定的および持続手に抵抗を感じる「鉛管様強剛(えんかんようきょうごう)」と、ガクガクと歯車が噛み合うように規則的な抵抗を感じる「歯車様強剛(はぐるまようきょうこう)」の症状があります。上肢では歯車様強剛、下肢や頸部では鉛管様強剛になることが多いと言われています。

※「鉛管」とは、なまりで作った管(くだ)のこと。主にガスや水道の工事用に使われます。

4. 姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)

身体のバランスがとりにくくなり、転びやすくなります。歩いていると止まれなくなる、方向転換をするのが難しいなどの症状が特徴的です。症状が進むと、首が下がったり身体が斜めに傾いたりすることもあります。転倒によって骨折をすることがないように、注意が必要です。

おもに50~65歳の年齢層に頻発する病気ですが、40歳前後や、逆に70歳以上になって発症する人もいます。40歳未満で発症する場合は若年性パーキンソン病とも呼ばれています。

発症率は約1,000人に1人程度といわれており、現在日本では約20万人のパーキンソン病患者がいると推定されています。詳しい原因はわかっていませんが、5~10%とごくわずかながら、血縁者に発症者があり遺伝が原因で発症する人がいることも確認されています。

パーキンソン病はゆっくりと進行

パーキンソン病は、時間をかけてゆっくりと進行します。パーキンソン病の進行の度合いは「ホーン・ヤールの重症度分類」で評価され、全部で5つに分類されます。具体的には以下の5つです。

1度

症状は片側の手足のみに震えや筋肉のこわばりが現れます。日常生活への影響はごく軽度です。

2度

症状が両側の手足に現れます。多少の不便さがありつつも、従来どおりの日常生活を送ることができる状態です。

3度

小刻みに歩く、すくみ足がみられるなどの歩行障害や姿勢反射障害が現れます。姿勢反射障害とは、倒れそうになった時や方向転換の時に、反射的に姿勢を直すことができずに転んでしまうような障害のことです。活動がやや制限されますが、自立した日常生活を送ることが可能です。

4度

立ち上がることや歩きづらさといった強い症状が両側の手足に現れ、自力での生活が困難になります。日常生活の一部で介助が必要です。

5度

一人で立つことが困難となり、車椅子での移動や寝たきり状態を余儀なくされます。この状態だと、全面的介助が必要です。

パーキンソン病の原因は?

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パーキンソン病は、中脳の「黒質(こくしつ)」と呼ばれる部位の神経細胞が壊れることによって起こります。この黒質は、人間が元気で活発に生きていくために必要な、感情、学習、意欲に深くかかわる神経伝達物質「ドーパミン」を分泌する機能があります。この細胞が壊れることによってドーパミンの分泌量が減り、体の各器官への情報伝達がうまくできなくなります。

なぜ黒質が減少するのか、まだ完全にわかっていません。しかし、パーキンソン病の患者の脳を調べると、ドーパミンを作る神経細胞などに「レビー小体」というタンパク質の塊ができていることがわかっています。レビー小体とは神経細胞のなかに現れるもので、αシヌクレイン(アルファシヌクレイン)という特殊なタンパク質からできています。

パーキンソン病は認知症にもつながる?

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認知症もパーキンソン病と同様、脳の神経細胞が壊れることで発生します。記憶が不得手になり、直近のできごとも思い出せなくなってしまうのです。幻覚や徘徊、暴力といった行為をしてしまいます。

パーキンソン病と認知症は異なる病気ではあるものの、パーキンソン病患者の3割が認知症であるというデータがあるなど、その関連性は高いです。またパーキンソン病患者は、そうではない人と比べて4倍~6倍程度、認知症を発症するリスクが高まります。

パーキンソン病患者が認知症を併発すると、介護負担の増加による経済的支出が増えるなどの恐れがあり、医療機関への早めの受診が必要です。

以下では、パーキンソン病から認知症へ、あるいは認知症からパーキンソン病へつながる2つの病気について説明します。

「認知症を伴うパーキンソン病(PDD)」:パーキンソン病から認知症へ

パーキンソン病では、運動機能障害だけでなく、記憶障害など認知機能の低下もみられます。このようにパーキンソン病を発症した後に起こる認知症を「認知症を伴うパーキンソン病( Parkinson disease with dementia 以下PDD)」と呼びます。一般の(認知症を伴わない)パーキンソン病と比べ、高齢になるほど発症率が高くなります。

PDDでは、記憶障害などの認知機能の低下のほかに、アパシー(無気力)、うつ状態、睡眠障害、妄想、幻聴といった認知症同様の症状が現れます。実際に、PDDの診断後12年で60%、20年では実に80%が認知症を発症すると報告されています。

「レビー小体型認知症」:認知症から運動機能障害へ

パーキンソン病と酷似しており、パーキンソニズム(「手足の震え」「筋肉の緊張」などの運動機能障害)が現れる認知症として、「レビー小体型認知症」が挙げられます。

レビー小体型認知症は軽い物忘れのような中核症状から始まり、やがて妄想・幻聴、体の拘縮や歩行困難へと悪化していく認知症で、アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症と並んで三大認知症のひとつに数えられます。大脳皮質の神経細胞内にレビー小体が付着し、神経細胞が減少することによって起こる病気です。

一般に、運動機能障害が起こったのち、1年以上経過してから記憶障害などの認知症が発症した場合はPDDに分類されます。しかし、認知症の症状が起こってから運動機能障害が起こったときや、認知症の症状と運動機能障害が1年以内に併発したときは、レビー小体型認知症と分類されています。

ただ、病理学的にはPDDとレビー小体型認知症は同一の疾患と考えられています。 いずれにせよ、パーキンソン病と認知症は極めて密接に関連している病気だといえるでしょう。

パーキンソン病の診断方法

診察について

無動や筋固縮などがパーキンソン病の代表的な症状ですが、これらと似た症状はパーキンソン病以外の疾病でも現れることがあります。これまでにさまざまな診断基準が提唱されていますが、自覚症状、神経所見、臨床検査所見、鑑別診断、診断の判定、参考事項を基本としています。

さまざまなアプローチが試されてはいるものの、残念ながら100%の確率で診断できる検査方法は今のところ存在しません。実際のところパーキンソン病を裏付ける症状と、パーキンソン病以外の病気の裏付けとなる症状を対照しながら、除外要因を探し当てていきます。

SPECT(スペクト)検査について

認知症の早期発見に寄与しているSPECT(スペクト)検査もパーキンソン病診断に一役買っています。SPECTは造影剤を体内に点滴で流し込み、脳の血流を図る検査方法です。これにより、従来の検査方法では判らなかった脳内のドーパミン神経の変性、脱落の程度を察知することができるようになりました。また、2014年には保険診療の適用も認められています。

治療方法は「薬物処方」と「リハビリ」

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パーキンソン病は、薬物治療と運動機能維持訓練(リハビリ)が主な治療法となります。 薬物治療は、脳全体のドーパミン量を増加させて抑うつ的な気分を解消させるドーパミン作動性薬剤を使う手法が主です。現在では、数種類の薬を処方することで、より高い効果が望めるようになりました。しかし薬には副作用のリスクもあるため、医師が定める用量・用法をしっかりと守ることが大前提です。

リハビリでは、歩行訓練や簡単な動作・作業を繰り返しおこない、ADL(日常生活動作)の維持に努めることが重要です。病気の進行がゆるやかな時期は、本人の自主性に任せたトレーニングでもよいかもしれませんが、終末期に近くなるほど運動機能障害が顕著に現れます。医師や理学療法士の指導を受けて、安全で体調面にも配慮したリハビリを実践しなければなりません。

パーキンソン病は予防できるのか?

パーキンソン病は遺伝による発症も考えられるため、確かな予防方法は存在しません。もしできることがあるとしたら、好きなことをして、よく笑い運動をする。日々の生活をポジティブに生きることで体内のドーパミンの分泌量が増え、結果的にパーキンソン病の予防につながるのかもしれません。

家族介護が難しくなったら......外部の介護サービスの活用を

認知症を伴う・伴わないにかかわらず、パーキンソン病は完治が困難な難病です。また、PDD・レビー小体型は妄想や幻聴、睡眠障害や暴力行為なども症状として現れるため、介護する側の疲労が著しく増加する可能性もあります。

家族介護だけに限界を感じた場合、外部の介護サービスを柔軟に利用しながら無理のないケアに努めていきたいところです。認知症につながることも少なくないパーキンソン病。その発症や進行には十分に気をつけましょう。

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