介護のお役立ちコラム

高齢者とテクノロジーを結ぶ「Agetech(エイジテック)」とは?|介護のコラム

高齢者とテクノロジーを結ぶ「Agetech(エイジテック)」とは?|介護のコラム

更新日:2019.11.06

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世界の主要先進国は高齢化社会を迎えています。ITの進歩によって私たちの暮らしは豊かになりましたが、これらテクノロジーは高齢者の見守りや介護のためには欠かせないツールとなってきています。今回は、高齢者向けのテクノロジーである「Agetech(エイジテック)」について触れてみたいと思います。

アメリカでも高齢者にかかる社会コストが増大している

"高齢者向けのテクノロジー"と言ってもその存在は多岐にわたります。介護や安否確認など、これまで人が行ってきたものを省力化、オートメーション化する技術もあれば、身体に装着しモニタリングにより健康状態を管理する技術。高齢者自身が操作をして日常生活の負担を減らす技術などもあります。

IT革命の発祥地であるアメリカは、国土も広く車社会のため、いつでも気軽に声をかけられる日本のような密な近所付き合いが成立しにくい面があります。そのため、室内カメラによる安否確認やモニターを介して医師が健康状態を確認する問診。タブレット端末などを用いて欲しい食材や日用雑貨を注文するデリバリーシステムなどが整備されつつあります。また、外出する場合もライドシェア(自家用車の相乗り)サービスが普及しているため、端末から利用を申し込むビジネスモデルが一般的なものになっています。

現在アメリカでは、ヘルスケア関連の支出がGDP(国民総生産)の18%を占めるようになり、その数字は今後さらに伸びるとも言われています。そのような中、アマゾン、グーグル、アップルといった名だたるIT企業もヘルスケア分野への進出を始めたほか、できたばかりの小さなベンチャー企業の躍進と彼らを積極的に支援する投資家の存在も目立ちます。

これらはすべてITの発達によって可能になったサービスであり、高齢者の生活サポートにおいて、Agetech(エイジテック)は欠かせない存在になっているのです。

展示会などでも目立つようになった、日本発のAgetech

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アメリカだけでなく日本の市場でもAgetech(エイジテック)関連の商品やサービスが活発な動きを見せています。これらは各社のプレスリリースや記者発表会、展示会などで一般向けにも情報公開されています。日本最大級の展示会である「国際福祉機器展」(主催:一般財団法人 保健福祉広報協会)では約550もの企業、団体が出展しており、近年はAgetech(エイジテック)の出展が目立つようになりました。

代表的なものに、人感センサーによる徘徊予防システムがあります。ベッドの脇にマット型のセンサーを敷き、その上に荷重がかかるとセンサーが感知して、その情報が登録先の端末に伝わる仕組みです。このため夜中に認知症高齢者が立ち上がり徘徊しようとすると、マットに着地した時点でセンサーが稼働するため、家族や介護職員は徘徊を事前に察知することができます。

ほかにも、直接身体に装着するウェアラブル端末といったタイプもあります。トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社が展開する「DFree」は排せつのタイミングを事前に知らせてくれるツールです。デバイスを下腹部に装着し専用アプリと連携させます。デバイスは超音波を発信し膀胱の膨みを察知します。この情報が連携先の端末に知らされるため、前もって高齢者をトイレに誘導させることができ、トイレの失敗をなくすことが可能になるのです。

安否確認や身体介助だけでなく、AI(人工知能)によって高齢者とコミュニケーションを図るためのAgetech(エイジテック)も存在します。人体型ロボットとしては、ソフトバンクが手がけた「Pepper(ペッパー)」の登場が記憶に新しいところだと思いますが、実際にPepperを導入した介護施設もあります。人体型や歩行可能なロボットでなくとも、テーブルや膝の上に乗せられるサイズのぬいぐるみ状のロボットもあります。感染症などの問題から高齢者が室内でペットを飼うことは難しいかもしれませんが、その点ロボットなら安心。愛くるしい見た目もあって、高齢者に人気を博しているようです。

Agetechの課題は「高齢者でもわかりやすい」「使いやすい」

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Agetech(エイジテック)で得られた情報を管理、分析するのは主に家族や介護士など周囲の人たちです。しかし、実際に製品やサービスと距離が近いのはほかならぬ高齢者自身なのです。そのため、高齢者にとってわかりやすく、使いやすい製品やサービスである必要があり、今後Agetech(エイジテック)が成長分野になっていくために欠かせない課題でもあります。

例えば、製品には必ずマニュアルが存在しますが、IT機器の使用に慣れていない高齢者がまずはどうやって使い方を覚えるのかといった問題があります。映像や音声で使用方法をガイドする直感的なアプローチが望ましいかもしれませんが、Wi-Fiが使用できる環境をユーザー自身が整備することも求められますし、コンテンツの再生の仕方がわからない可能性もあります。また、定期的に充電や消耗部品の交換が必要な製品の場合、衰えた視力や筋力で遂次細かい手作業をしなくてはなりません。

家族はもちろん、ホームヘルパーや地域ボランティアなどが、機器の使用方法を指南したり定期的にメンテナンスしたりするなど、周囲のAgetech(エイジテック)に対する理解とサポート体制を強化していかなければ、せっかくのテクノロジーも宝の持ち腐れになってしまうでしょう。

一般家庭での普及はまだ先の話

日本ではAgetech(エイジテック)という言葉はまだ一般的に知られてはいませんが、私たちの生活の中で定着しつつあるテクノロジーが、福祉においても十分応用できることがわかりました。しかし、今回取り上げたAgetech(エイジテック)の製品やサービスは導入コストが掛かることから、一般家庭での普及はまだ先になりそうです。今後は補助金の給付など、国や自治体からの支援も含めどのように普及していくのか、見守っていきたいところです。

■参考記事
高齢者を支えるAgeTech(エイジテック)が米国で話題、課題とメリットはどこに?_ビジネス+IT
英国で高齢化対応技術"AgeTech"への投資が活発に_日経バイオテクONLINE
離床センサー_製品情報_株式会社テクノスジャパン
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