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死亡リスクが2倍? 口腔機能が低下する「オーラルフレイル」とは

死亡リスクが2倍? 口腔機能が低下する「オーラルフレイル」とは

公開日:2019.05.08

オーラルフレイルとは

口腔内のケアを怠ることは、口臭の原因になるだけではなく、健康面でも大きな被害をもたらします。特に一人で過ごす時間の多い高齢者の場合、知らぬ間に口内環境がどんどん衰え、重大な病気を引き起こす可能性もあるのです。それでは、どのような改善策が望ましいのか、以下で見ていきましょう。

見落とされがちな口腔内の筋力の低下

人間は年を取ると体のあらゆる機能が衰えてきます。「立つことが難しくなり歩くスピードも遅くなる」「視力が悪くなり老眼鏡が欠かせなくなる」「耳が遠くなり車のクラクションや踏切の音に気づきにくくなる」など、実にさまざまな現象が考えられますが、意外と見落とされがちなのが口腔機能の衰え。口の中に少しでも悪い予兆が見られると次々と負の連鎖を引き起こし、最終的には命の危険も考えられるのです。こういった口腔機能の衰えを「オーラルフレイル」と言います。

「オーラルフレイル」は負のスパイラル。将来の介護リスクが高まる

オーラルフレイルは将来の介護リスクが高まる

一口にオーラルフレイルと言ってもどのようなケースが考えられるでしょうか? まずは筋肉の衰弱によって咬合力(こうごうりょく=噛む力)が衰えてきます。噛む力が衰えると、硬い食べ物を咀嚼することが難しくなり、よく噛まないまま飲み込むことによって消化不良となって胃腸への負担が大きくなります。次第に噛むことが億劫になり、食事も噛みやすく軟らかい食べ物中心の生活へと変わっていき、ますます筋力は衰えてしまうのです。そればかりか、食習慣が悪化することで栄養バランスも崩れてしまいます。

加齢とともに歯が抜けることもオーラルフレイルに関係しています。歯の本数が少なくなることで当然噛む力は弱くなります。一般的に歯の本数が20本を下回ると咬合力の低下が著しくなると言われています。歯の欠損については入れ歯で補うことができますが、やはり装着したときの不快感などもあって、これも食習慣に悪影響を与える要因と言えるでしょう。

人間は噛むことによってだ液が分泌されますが、だ液には食べ物の消化を助けてくれる作用があります。同時に口腔内に溜まる雑菌の繁殖を防ぐ効果もあるため、だ液量の減少もオーラルフレイルを加速させる一因になります。

そして栄養が不足すると脳や全身の筋力が衰え始め、外出機会の減少や体の不調が見られるようになります。口にはもう一つ「しゃべる」という重要な役割もありますが、引きこもりがちになり、家族や友人と話す機会が減ることで口腔機能が十分に活用されず、会話を通じて得られる脳や心への刺激が少なくなり、意欲の低下につながります。

こういった状態が長引けば要介護状態に近くなることは明白で、加えて栄養失調や感染症といったリスクも増大してきます。東京大学高齢社会総合研究機構が実施した研究によると、オーラルフレイルによって4年後の要介護や死亡リスクは、健康な人の2倍以上に高まると結論づけています。

オーラルフレイル改善プログラムの内容

オーラルフレイル改善プログラムの内容

それではオーラルフレイルを予防するためにはどのようなアプローチが望ましいのでしょうか? 一般社団法人神奈川県歯科医師会が作成したパンフレットの内容をもとに紹介します。

無意味音音節連鎖訓練

オーラルフレイルの有無を確認する方法の一つに滑舌があります。特に、唇をしっかり閉じることによって発音する「パ行(パピプペポ)」。舌を前歯の裏側に付けて発音する「タ行(タチツテト)」。舌を喉の奥の方向へ引っ込めて発音する「カ行(カキクケコ)」。これらを発音するときの唇や舌の動きは、噛む力や飲み込む力に大きくかかわっています。

スムーズに発音できない場合、3つの文字の中に該当する文字を組み込んで発音するトレーニングが可能です。例えば「カ」の発音が難しい場合、

練習1:カタダ カタデ カタド カアド カエド カオド(「カ」を最初に持ってくる)
練習2:マアカ マオカ マウカ アエカ アイカ アオカ(「カ」を最後に持ってくる)
練習3:アカア オカオ ウカウ エカエ イカイ ウカア(「カ」を真ん中に持ってくる)

といった具合に発音を続けていきます。1→3の順番で発音が難しくなってくるので、慣れたら少しずつ難易度を上げて取り組んでみましょう。

早口言葉

誰もが子どものころに遊んだ早口言葉でも、舌や頬、唇の筋肉を鍛え、口の動きが活性化されます。

練習:「赤巻紙、青巻紙、黄巻紙」「東京特許許可局」「隣の客は、よく柿食う客だ」など

舌圧トレーニング

舌の筋力を鍛えるトレーニングです。器具などを口にくわえた状態で先端部分を舌で押すようにします。通販などで「舌圧トレーニング器具」が販売されているので、ぜひチェックしてみてください。

開口運動

大きく口を開き10秒間静止します。その後口を閉じ10秒間休憩します。これを朝と晩で5回ずつ繰り返します。これによって舌骨上筋が鍛えられ、食道の周りの筋肉を強化できます。ただし、顎関節症や脱臼の恐れがあるので決して無理はしないでください。

またガムを噛むことも顎の運動につながり、気分もリフレッシュできます。しかし、ガムは誤嚥(ごえん)につながる恐れがあり、口内のいたるところにくっついて取り除きにくいため注意が必要です。

オーラルフレイルゼロを目指した「8020運動」とは?

厚生労働省と日本歯科医師会では、年を取っても自分の歯で食事ができる状態でいることを目指した「8020運動」を1989年(平成元)から提唱しています。序盤でお伝えしたとおり、20本以上の歯があれば噛む力は維持できると考えられています。そこで「80歳で20本以上の歯を保つ」というコンセプトからこの名前が付けられました。

スタート当初の達成率はわずか数%程度でしたが、現在では40%を超えるほど効果が表れてきました。その背景には歯みがきの徹底による虫歯や歯周病の減少があります。同時に、介護予防プログラムの一環で口腔ケアをレクチャーする機会が増えてきたことで、高齢者とその家族を中心に意識が高まってきたのです。日本歯科医師会では、8020運動にオーラルフレイルの理念を加えて、さらなる健康長寿を後押しするよう普及啓発活動に力を入れていく予定です。

口腔ケアをしっかりと行って介護予防を

噛むこと、飲み込むこと、しゃべること。何気ない日々の行為であっても、すべては健康を保つための重大な要素です。高齢家族と暮らす人はもちろん、自らもきちんとした口腔ケアをおこない、健康増進そして将来の介護予防に努めていきましょう。

■参考記事
口腔機能の低下予防...健康悪化・孤立防ぐ
オーラルフレイル①~フレイル・オーラルフレイルを予防し健康長寿を目指しましょう~|一般社団法人神奈川県歯科医師会
オーラルフレイルハンドブック(歯科専門職向け) | 神奈川県健康推進課/一般社団法人 神奈川県歯科医師会
オーラルフレイルについて - 北海道歯科医師会
健康寿命延伸のキーワード、「フレイル」「オーラルフレイル」とは

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