介護のお役立ちコラム

【医師監修】アルツハイマー型認知症とは?まず押さえたい基礎知識を網羅|認知症のコラム

【医師監修】アルツハイマー型認知症とは?まず押さえたい基礎知識を網羅|認知症のコラム

更新日:2016.09.21

数ある認知症の中でも特に発症の割合が高いのが、アルツハイマー型認知症。その名前はよく知られていますが、実際どのような症状なのか、どのような原因で発症するのか。この記事で解説していきます。


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は、脳が少しずつ萎縮していき、認知機能が低下していく病気です。脳は海馬から徐々に萎縮し、アミロイドが沈着(アミロイド斑)、神経細胞にはタウ蛋白という蛋白が蓄積します。このような異常蛋白の沈着は症状がでる10年以上前から徐々におきているといわれています。

認知症患者の約4割を占める、このアルツハイマー型認知症。まだ兆候はなくとも、これから先、あなたの家族やあなた自身が発症する可能性もあるのです。

【進行度別】アルツハイマー型認知症の中核症状と行動・心理症状

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認知症の症状は発症前期(軽度認知障害)、初期、中期、末期と緩やかに進んでいき、次第に症状は悪化していきます。主に見られる症状としては、記憶障害や迷子の原因となる見当識障害、料理の手順などがわからなくなる実行機能の障害、判断力が低下して同じものを買ってしまう障害、などです。

また、アルツハイマー型認知症には「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」が表れます。「中核症状」は記憶障害や見当識障害などからなり、「行動・心理症状」は妄想、徘徊、不安、焦燥、うつ状態、せん妄、暴力行為などからなります。特に行動・心理症状の発症にはご家族との関係性など環境要因の影響も強く、一人ひとり症状は異なります。

では、以下で病気の進行度に合わせて起こる中核症状と行動・心理症状について見ていきましょう。

発症前期<軽度認知障害>(本格的な発症の10年以上前から出ることも)

<中核症状>
・物忘れ

<行動・心理症状>
・不安、抑うつ

初期(発症から1~3年)

<中核症状>
・近時記憶の障害(他の刺激を受けた後まで、新しいことを覚えておくことができなくなる)
・実行機能障害(抽象的な思考や、複雑な行為の計画・実行・中止ができなくなる)
・時間の見当識障害(日時がわからなくなる)
※ただしご高齢の方で、数日・数年程度の時間の認識の誤りは必ずしも病的ではありません。

<行動・心理症状>
・やる気、自発性の低下(アパシー)
・物盗られ妄想

中期(発症から5〜9年)

<中核症状>
・遠隔記憶(数年から数十年の記憶)の障害
・場所、人物の見当識障害(今いる場所や、自分が誰なのかわからない)
・失認(対象を認識できない)、失行(簡単な行為ができない)、失語(言語使用ができない)

<行動・心理症状>
・鏡兆候(鏡に映った像を自分と認識できない)
・徘徊、迷子
・興奮、多動

末期(発症から10年〜)

<中核症状>
・記憶障害(全般)
・人格の変化
・室外套症候群(寝たきりで行動・発話がない)

<行動・心理症状>
・不潔行為(便をさわる)

アルツハイマー型認知症になる原因

上で述べたアミロイド斑は「アミロイドβたんぱく」という物質のかたまりです。アミロイドβたんぱくは、本来は分解され、脳から排出されていきます。しかしながら、年齢を重ねると分解機能が衰えて排出されず、神経細胞に溜まってアミロイド斑となり、これが神経細胞を殺傷し、情報伝達が正常に行われなくなってしまうのです。これがアルツハイマー型認知症の原因と言われています。

アルツハイマーかも!?と思ったら。10のチェックリスト

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ここからはアルツハイマー型認知症かどうか診断するためのチェック項目として、アメリカのアルツハイマー病協会の「アルツハイマー病を疑う10の症状」をご紹介します。家族や自分がもしかしたらアルツハイマーかもしれないと思ったときには、このチェック項目をぜひ参考にしてみてください。

1.物忘れがひどい
・最近覚えたことを忘れる
・同じことを何度も聞く
・ちょっとしたことを覚えるときでもメモや家族に頼る

2.計画を立てたり問題を解決することを難しく感じたりする
・レシピ通りに調理ができない
・月々の請求書の支払いができない
・集中力が落ちるため、以前より仕事が遅くなる

3.慣れたことでも、最後まで完了できにくくなる
・慣れた場所でも運転できない
・慣れたゲームのルールを忘れる
・金銭管理ができない

4.時間や場所について混乱する
・日付や季節、時の経過を忘れてしまう
・自分が今どこにいるのか、どのようにしてそこまで来たのか思い出せない

5.視覚的・空間的な関係を理解しにくくなる
・読書や距離の判断、色の理解ができない
・鏡に映っているのが自分だとわからない

6.話したり書いたりする言語能力に問題が生まれる
・会話に入ったり、ついていったりすることができない
・同じ話を繰り返す
・ものの名前を間違える

7.物を置き忘れて探せなくなる
・物をいつもと違う場所に置く
・自分の行動をさかのぼれなくなる
・誰かが自分の物を取ったと非難する

8.判断能力が低下する
・誤った判断を繰り返す
・身体をきれいにすることに興味がなくなる

9.仕事や社会活動から離れ、引きこもる
・追いかけていたスポーツチームへの興味を失う
・趣味をやめてしまう
・人と関わるのを避けるようになる

10.気分や性格が変わる
・混乱する、うつ状態になる、不安になる、疑い深くなる
・知らない人に会ったり、慣れた場所以外に行ったりすると混乱する

以上の10個のチェックリストに心当たりがあったら、早期に病院での診断を試みましょう。

アルツハイマー型認知症の治療について

アルツハイマー型認知症の根本的な治療方法は現在ありません。そのため、リハビリテーションや介護によって本人が快適に過ごせられるよう、介護していくことが求められます。

具体的な療法には、幼少期に触れた玩具や口ずさんだ歌などを介し、人生を振り返る『回想法』があります。また、デイサービスやグループホームなどでの会話やゲームを行うことで、頭と心を活性化させることも必要です。

薬物による療法も行われています。「ドネペジル」「ガランタミン」「リバスチグミン」「メマンチン」の4種類が、現在日本で承認されており、症状によっては抗うつ薬や抗不安薬などが用いられます。

家族がアルツハイマーになってしまったら~まずは相手を尊重すること

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では、家族がアルツハイマー型認知症になってしまったら、どのように接していけばいいのでしょうか。

ひとつは、本人の尊厳を傷つけないようにすることです。アルツハイマー型認知症に多い"記憶障害"は、家族ももちろんですが本人にとっても非常にショックな出来事です。病状が進行するにつれて、自分が病気であるという認識は薄れていきますが、症状が出始めたばかりのころ(軽度認知症害)は、まだ自分が病気だと明確に意識しないまでも違和感があります。そのため「なぜこんなことも憶えておけないのだろう」と、自分自身にイライラしてしまうのです。

そんなときに、家族が「なんでそんなことも憶えてないの?」などと言ってしまったらどうでしょう? 本人の心をひどく傷つけてしまい、本人の居心地が悪くなって徘徊などの行動・心理症状につながってしまいます。病院からの指示に従いながら、ゆっくりと付き合っていきましょう。

様子がおかしいと感じたら通院を

アルツハイマー型認知症の症状からチェックリスト、家族の対応までまとめてきましたが、これは一般的な例で、実際の症状は人それぞれ。チェックリストに当てはまったからといって絶対にアルツハイマー型認知症とは言えませんし、逆に気づかないうちにアルツハイマー型認知症が進んでいることも考えられます。

「家族の様子が最近おかしいな」「最近物忘れがひどいな」といったことを感じたら、病院で一度きちんと検査をすることをおすすめします。もしアルツハイマー型認知症と診断された場合でも落ち着いて、ありのままの家族を受け入れるようにしましょう。

【参考文献】
『専門医が教える認知症』(朝田隆、幻冬舎)

認知症疾患診療ガイドライン2017

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