介護のお役立ちコラム

【医師監修】注意したい高齢者の肺炎リスクについて|介護のコラム

【医師監修】注意したい高齢者の肺炎リスクについて|介護のコラム

更新日:2020.05.15

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染が猛威を振るっていますが、すでにニュースなどで報じられているとおり、ウイルスは肺に多大なダメージを与える可能性があります。特に心肺機能が衰えている人にとって、生死にかかわる大きな問題となります。今回は、細菌やウイルスの侵入によって引き起こされる肺炎について、その病状や予防策などを講じてみたいと思います。


【監修者】
白金台おがわクリニック院長 小川惇郎(おがわ じゅんろう)

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日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本抗加齢医学会抗加齢医学専門医 北里大学医学部卒業後、北里大学内分泌代謝内科へ入局。平塚共済病院、川崎市立井田病院、北里大メディカルセンターへ出向。その後、北里大学病院 内分泌代謝内科、NTT東日本関東病院を経て、2017年11月から、白金台おがわクリニック院長を務める。


風邪と症状は似ているが、重症化する可能性が高い

肺炎の原因としては「細菌性肺炎」が最も多く、様々な細菌の中で「肺炎球菌」が原因となることが多いです。また、その他ウイルスや、マイコプラズマ、クラミジアなども原因となります。人間の体から分泌される唾液には免疫作用がありますが、体調不良などで唾液分泌が低下すると、感染しやすくなってしまいます。

肺炎で見られる症状は、せき、発熱、たん、喘鳴といったもので、これらは一般的に風邪の症状と酷似しているため、発見が遅れてしまうケースが多々あります。風邪も同じく細菌やウイルスによる病気ですが、鼻やのどといった上気道に炎症が起きるため、肺炎とは異なります。

風邪とよく似た症状でありながら、肺炎はより長期化する傾向にあるため、安静にしていても息苦しいなどの症状が改善されない場合、一刻も早く病院へ行かなくてはなりません。風邪は放っておいても治るケースがありますが、肺炎の場合は重症化する可能性が高いため注意が必要です。

高齢者が特に注意したい「誤嚥性肺炎」

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通常は空気感染(飛沫感染)によって細菌やウイルスは人から人へとうつりますが、高齢者が発症する肺炎はその限りではありません。

一般的に高齢者は飲み込む力や吐き出す力に衰えが見られます。飲食物などを口に入れた際、誤って気管に入り込んでしまうことを「誤嚥(ごえん)」と言いますが、細菌を含んだ飲食物が気管へ侵入し、肺炎を引き起こすこともあるのです。これを「誤嚥性肺炎」と言います。

高齢者の死亡原因の第1位が肺炎であり、そのほとんどのケースが誤嚥性肺炎とみられています。また、虫歯や歯周病が進行すると、口腔内の雑菌が増加し、誤嚥性肺炎を発症することも考えられます。口腔ケアは介護の重大なテーマと考えられていますが、その裏には、このような命にかかわる大変危険なリスクもあるのです。

高齢者ほど重篤になりやすい、新型コロナウイルスにも注意

現在流行している新型コロナウイルスは、年齢や性別関係なく、日を増すごとに感染者数の増加が見られます。それでも厚生労働省の発表によると、高齢者の方で基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患など)のある人ほど、重症化しやすいとされています。

日本では、2020年2月に大型クルーズ船内で起きた集団感染により多数の乗客が新型コロナウイルスに罹患しましたが、当初、死亡した人の多くは70歳以上の高齢者だったことは記憶に新しいことかと思います。現在、日本政府は国民に対し、行動の自粛を呼びかけています。いつどこで、誰がウイルスを持ち込んでくるかわからない状況に、常にさらされている危機感を持たなくてはなりません。

肺炎の治療法

肺炎の治療法について、一般的な細菌性肺炎であれば、抗菌薬を投与することになります。病原体も決して一つではないため、特定するためには、問診、レントゲン写真、血液検査、喀痰検査などをおこないます。

投薬後、快方に向かわない場合は再度検査することになりますが、この時点で肺炎以外の別の病因であることも想定されます。また薬によって副作用が出ることもあるため、医師の指示に従い、容量、用法をきちんと守ることも大切です。

肺炎を防ぐため、本人そして家族ができること

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治療は重要ですが、それ以前に肺炎にならないよう予防に努めることはもっと重要なことです。基本的なことですが、帰宅後のうがい、手洗いの厳守。部屋を定期的に換気するなど徹底してください。ドアノブや照明のスイッチなど人の手が触れる箇所の消毒も効果があります。

身体介助にあたる際の家族も注意が必要です。衣服や食器類を清潔に保つこと。食事介助の際は介助者の手が相手の口腔内に触れる可能性が高いので、特に注意が必要です。入れ歯の脱着の際も同様です。取り出した入れ歯も、洗浄剤に浸して清潔に保管することも厳守してください。

通所介護(デイサービス)などを利用している高齢者の場合、出先から細菌やウイルスを持ち帰ってくることも考えられます。上記のとおり予防に徹することは大切ですが、予防することは、接触した相手を感染させるリスクを減らすことにもなります。自らが加害者になる可能性があることも肝に銘じて行動してください。

最後に

猛威を振るう新型コロナウイルスですが、新薬の開発に急いでおり、やがては終息に向かうことでしょう。しかし、肺炎に罹患するリスクは常につきまとうものです。一人ひとりが自己管理を徹底することで肺炎になるリスクは大きく減らすことができるはずです。まずはうがいや手洗いなど、できることから始めるようにしてみてください。

 

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