介護保険の基礎知識 介護保険の基礎知識

さまざまな介護サービスを、1~3割の自己負担で受ける
ことができるのが「介護保険」です。

介護保険制度とは?仕組みをわかりやすく解説

介護保険とは、介護を必要とする方を社会全体でサポートし合う仕組みのことです。
しかし、実際に自分が高齢となり介護を受ける、または高齢の家族を介護するという状況に直面するまでは、日常生活のなかで介護保険について詳しく理解する機会は少ないのではないでしょうか。

そのため、病気や怪我で自分や家族が倒れ、介護保険サービスをいざ利用する必要性が生じたとき、その利用方法がわからず慌ててしまうことも多いのです。

そこで本記事では、介護保険の仕組みや対象者、保険料、介護保険サービスの内容、利用方法などについて詳しく解説します。

目次

介護保険とは?

介護保険制度とは、要介護認定を受けた被保険者が実際にかかる費用の1~3割負担で介護に関わる各種サービスを利用できる公的保険です。

こちらでは、その制度の仕組みや考え方、医療保険との違いなどを見ていきましょう。

介護保険の仕組み

コラム画像_介護保険制度のしくみ.jpg

介護保険は、保険者を自治体、被保険者を40歳以上の住民としています。
介護保険サービスを利用する際、料金の1~3割を被保険者である利用者が支払うことで、残りの7~9割が公費負担(公費と保険料から負担)になります。

現行制度では、自己負担額の割合は利用者の所得に応じて決められています。その割合については、「介護保険負担割合証」で通知されます。 所得が一定の基準より高い人は2~3割負担ですが、実際には大半の人が1割となっています。
※介護保険負担割合証...前年の所得を基に負担割合が決定。そのうえで、要介護・要支援の認定者や事業対象者に対して原則毎年7月に送付されるもの

なお、介護保険の被保険者として保険料の支払い義務が発生するのは「40歳から」です。一方、介護保険サービスが利用可能となる年齢は「原則65歳以上」となっています。

ただし、後述する特定疾病に該当する場合は、40~64歳でも介護保険サービスの利用が可能です。

▼参考サイトはコチラ
今治市『介護保険負担割合証が交付されます』

介護保険制度の財源の内訳について

理論上、保険制度とは共助を基本とし、被保険者が支払う保険料のみを財源とするのが原則です。

しかし、国内で高齢者や要介護者の数が急速に増えている現在、介護保険料だけでは現役世代(40~64歳)の負担があまりにも大きく、制度が維持できません。そのため、公費(税金)が投入されています。

その具体的な割合を見ると、介護保険制度の財源は、介護保険料が5割、公費が5割(国が25%、都道府県12.5%、市町村12.5%)という構成です。

コラム画像_介護保険の財源構成.jpg

▼参考資料はコチラ
厚生労働省『介護保険制度をめぐる最近の動向について』

介護保険の基本的な考え方

介護保険制度は、2000年度にスタートしました。
その制度が策定される際、理念として3つの考え方が提示されています。

【介護保険の3つの基本理念】
●自立支援
●利用者本位(利用者主体)
●社会保険方式


次で、それぞれ詳しく見ていきましょう。

●自立支援
自立支援とは、「高齢者ができるだけ自分の力で生活できる状態」を目指して必要なサポートを行うことを意味しています。

「介護」というと、食事・入浴・排せつなどの生活介助や掃除・洗濯などの家事など、身の回りのサポートをまるっと行うイメージをもつ方が多いのではないでしょうか。

しかし、必要以上の支援は、本人が自分でできることまで奪ってしまい、心身を衰えさせる恐れがあります。

介護保険サービスの目的は、利用者の介助・サポートだけではなく、あくまで利用者の自立につながるものでなければならない、というのが、自立支援の基本原則です。

●利用者本位(利用者主体)
介護保険サービスの内容は、家族などの介護者が決定するのではなく、利用者自身の意思・選択によって総合的に利用できるものだとする考え方です。

もちろん、サービス利用にあたっては介護者の意向を反映する必要はあります。しかし、最終的にどのサービスをどのくらい利用するのかを選び、決めるのは利用者本人であるべきというのがこの考え方です。

●社会保険方式
社会保険方式とは、保険に加入した人が支払う保険料を財源とし、条件を満たした人に対してその財源から給付を行う方法を指しています。

公的保険のなかには、社会保険方式のほかに税方式などがあります。税方式とは、保険制度の財源を全額公費(税金)でまかなう方法のことです。

しかし介護保険は原則として社会保険方式が取られているため、被保険者は介護保険料を支払わなくてはなりません。

ただし前述の通り、社会保険方式であるものの、介護保険料だけでは維持できないというのが実状です。介護保険の財源には公費(税金)も投入され、保険料と税金の組み合わせによって制度が運用されています。

社会保険との関係

前述の通り、介護保険は社会保険の一つです。
介護保険に加えて、以下のような制度も社会保険方式が取られています。

・健康保険
・国民年金保険、厚生年金保険
・労災保険
・雇用保険


いずれも国民の生活を保障することを目的とした保険制度です。法律に基づき、対象者は保険料の支払いが義務とされます。そしてその保険料を支払っている国民が、受給手続きをしたうえで、必要な公的サービスや現金・手当を受給できるという仕組みなのです。

ただし、介護保険では雇用保険のような現金の支給は行われず、介護保険サービスとしての現物給付が行われます。

健康保険(医療保険)との違い

介護費用の軽減を目的とする「介護保険」と医療費補てんを目的とする健康保険(医療保険)は、同じ社会保険です。一方、その利用方法や条件は以下のように大きく異なります。

介護保険 健康保険(医療保険)
保険給付 要介護認定を受ける必要がある 保険証の提示で自動的に保険が適用される
対象者 原則65歳以上(特定疾病に該当する場合は40歳~64歳も可) 年齢は問わない
サービス内容 自治体により異なる 基本的には全国共通
給付上限 要介護度により異なる 上限はなし

介護保険料の支払い開始時期と保険料は?

次に、介護保険料の支払い開始年齢や介護保険料の計算方法などについて、掘り下げて見ていきましょう。

介護保険料の支払いは40歳から

介護保険の被保険者の種類には、大きく分けて2つあります。
65歳以上が対象となる「第1号被保険者」と、40歳から64歳までの医療保険加入者が対象となる「第2号被保険者」です。

支払い開始のタイミングについては、それぞれ以下の通りです。

・第1号被保険者...65歳の誕生日から
・第2号被保険者...40歳の誕生日から


介護保険料の計算方法

次に介護保険料の金額について見ていきましょう。
第1号被保険者と第2号被保険者とでは、保険料や支払い方法が異なります。

●第1号被保険者(65歳以上)の場合
保険料は、原則として年金からの天引きによって支払われます。
支払先は、保険者であるそれぞれの自治体です。

第1号保険料の金額は、本人の前年度の所得や自治体の状況によって決められる「介護保険料基準額」と「保険料率」を使って計算します。

介護保険料 = 介護保険料基準額×保険料率


そのため、住んでいる地域によって金額は異なります。
実際の支払い金額は、2018年度~2020年度の全国平均を見ると月5,869円です。介護保険制度が始まった2000年度~2002年度では2,911円のため、約20年間で2倍程度にまで上昇していることがわかります。

●第2号被保険者(40~64歳)の場合
第2号保険料は、健康保険の保険料と一緒に徴収されます。健康保険組合や共済などに加入している会社員や公務員の方であれば給料から天引き、国民健康保険に加入している自営業の方であればその保険料とあわせて支払う形になります。

・国民健康保険に加入している自営業者の場合

医療保険+介護保険で計算される国民健康保険税は世帯ごとに決められ世帯主に課されるため、全員分をまとめて支払うことになります。

介護保険料の算出方法は次の通りです。

介護保険料=所得割+均等割+平等割+資産割

※所得割...前年の世帯所得から基礎控除額33万円を控除した金額に、税率を掛けたもの
※均等割...所得が0円でも発生する保険料負担で、介護保険加入者数に応じて計算される金額
※平等割...世帯単位で課される金額
※資産割は固定資産税の金額×税率で計算される金額

また、居住する市区町村によって実際の金額は変わり、平等割や資産税割がないケースもあります。

・健康保険組合や共済などに加入している会社員・公務員の場合

介護保険料の算出方法は次の通りです。

介護保険料=標準報酬月額または標準賞与額×介護保険料率


標準報酬月額は、4月から6月の平均報酬額が、都道府県ごとに作成されている「標準報酬月額表」にあるどの等級に該当するかで決定されます。

東京都の場合、4~6月の平均報酬額が32万5,000円だとすると、標準報酬月額は32万円とされます。介護保険料率は、所属する組合ごとに異なるので確認しておきましょう。

たとえば全国健康保険協会(協会けんぽ)だと、介護保険料率は2022年3月分(5月2日納付期限分)では1.64%とされています。標準報酬月額が32万円であれば、介護保険料は「32万円×1.64%=5,248円」と算出されるわけです。

また標準賞与額は、賞与の総額の1,000円未満を切り捨てた金額です(年度上限は573万円)。
たとえば、協会けんぽに所属し、年2回の賞与で、6月に100万円、12月に200万円の賞与が出たとしましょう。この場合、6月は「100万円×1.64%」=1.64万円、12月は「200万円×1.64%」=3.28万円が介護保険料となります。

介護保険を支払わないとどうなるの?

年金受給額が月に18万円以上であれば年金から自動的に介護保険料が天引きされるため、支払いを滞納することはあまりないでしょう。一方、年金受給額が18万円未満の場合に納付書による支払いを求められ、指示通りに行わなかった場合は滞納となります。

介護保険料を滞納した場合、納付期限が過ぎてから20日以内に督促状が送付されます。その際、督促にかかった手数料の支払いと延滞料が発生する旨が通知されます。手数料と延滞料の金額は自治体によって異なります。
納付期限を過ぎてから、1か月未満の場合は年率約4.3%~、1か月以上の場合は14.6%を延滞料として徴収するケースが多いようです。

滞納期間が長期化すると、その期間に応じてペナルティが変わってきます。

●滞納期間が1~1年半の場合
介護保険サービス利用時に、利用料金の全額を負担する必要があります。
滞納分を納付したうえで領収書を窓口に提出して返還申請することで、保険適用分が返還されるという仕組みです。

●滞納期間が1年半~2年になる場合
介護保険給付が一旦止まるので、介護保険サービス利用時は全額負担となります。保険適用分として支給されるはずの介護保険給付は、介護保険料の滞納分に回されます。
後日、保険適用分の返還を申請しても、本来受け取れる金額は戻ってきません。

●滞納期間が2年以上
介護保険サービス利用時の自己負担額が、所得区分上では1割の人であっても3割まで上昇します。納付期限から2年以上過ぎると、それ以後は保険料の納付ができなくなり、保険給付の差し止めを受けることもあります。
それと同時に、「高額介護サービス費」の払い戻しもできなくなるので注意しましょう。


【関連記事】
介護保険料を滞納していませんか?ペナルティと対応方法

介護保険の対象者と利用にあたっての条件は?

介護保険の利用対象者と利用条件は、介護保険制度において厳密に規定されています。健康保険(医療保険)のように、保険証さえ持っていればどこの病院でも適応されるわけではありません。

次では、介護保険の対象者、要支援・要介護の認定基準、介護保険で対象となる疾病(特定疾病)、介護保険被保険者証などについて詳しく解説します。

介護保険の原則(被保険者)

前述の通り、介護保険には第1号被保険者と第2号被保険者がいます。
第1号被保険者は65歳以上の方、第2号被保険者は健康保険(医療保険)に加入している40~64歳までの方です。

保険料の支払い義務はどちらの被保険者にもありますが、サービスの利用対象となるのは第1号被保険者のみです。

要支援・要介護の認定基準とは?

役所に要介護認定を申請した場合、その結果は大きく次の8段階に分けられます。

・自立
・要支援1
・要支援2
・要介護1
・要介護2
・要介護3
・要介護4
・要介護5


「自立」とは、自力で日常生活を送ることが可能で、介護保険サービスによる支援が必要ないとみなされた場合に下される認定です。自立の方は介護保険サービスの利用ができません。

要支援と認定されるのは、日常生活をほぼ自力で行うことが可能であるものの、将来的に要介護状態に移行する恐れがあり介護予防に取り組む必要があると判断された場合です。要支援1と要支援2の2段階があり、要支援2は要支援1よりも、自力でできることが少ない状態と言えます。

要介護の認定は、日常生活における食事、入浴、排せつといった基本的な動作を自力で行うことが難しく、誰かの介助が必要な場合に下されます。たとえば、食事を一人で食べられない、入浴時に自分で体を洗えない、一人だと排せつを失敗してしまうことが多い、といった場合などです。

要介護は1~5の5段階があり、心身状態が悪化していて、介護に必要な時間が長くなるほど段階は高くなります。要介護5の段階だとほぼ1日中寝たきりであり、日常生活のすべての動作に介助が必要で、意思疎通も困難なケースが多くなっているようです。

介護保険で対象となる疾病(特定疾病)

要介護認定の申請を行えるのは、原則として65歳以上の第1号被保険者です。

しかし、以下の16の特定疾病に該当する場合、40~64歳の第2号被保険者でも要介護認定を受け、介護保険サービスを利用できます。

  • ・がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)

  • 筋萎縮性側索硬化症きんいしゅくせいそくさくこうかしょう

  • 後縦靱帯骨化症こうじゅうじんたいこっかしょう

  • ・骨折を伴う骨粗しょう症こつそしょうしょう

  • 多系統萎縮症たけいとういしゅくしょう

  • ・初老期における認知症

  • 脊髄小脳変性症せきずいしょうのうへんせいしょう

  • 脊柱管狭窄症せきちゅうかんきょうさくしょう

  • 早老症そうろうしょう

  • 糖尿病性神経障害とうにょうびょうせいしんけいしょうがい糖尿病性腎症とうにょうびょうせいじんしょうおよび糖尿病性網膜症とうにょうびょうせいもうまくしょう

  • 脳血管疾患のうけっかんしっかん

  • 進行性核上性麻痺しんこうせいかくじょうせいまひ大脳皮質基底核変性症だいのうひしつきていかくへんせいしょうおよびパーキンソン病

  • 閉塞性動脈硬化症へいそくせいどうみゃくこうかしょう

  • ・関節リウマチ

  • 慢性閉塞性肺疾患まんせいへいそくせいはいしっかん

  • ・両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症へんけいせいかんせつしょう

介護保険被保険者証とは

65歳の誕生日を迎えて第1号被保険者となった方、あるいは40歳~64歳の第2号被保険者の方で、特定疾病により要支援・要介護認定を受けている方には、市町村から介護保険負担割合証とともに「介護保険被保険者証」が交付されます。

介護保険被保険者証は、介護保険サービスの利用対象者であることを証明するもの。要介護認定の申請時にも必要です。

発行にあたり申請は不要で、市町村から郵送されてきます。

介護保険で受けられるサービスは?

介護保険サービスにはさまざまな種類ものがあり、大きく次の4つに分けられます。

・介護保険サービスの利用計画を相談できる「居宅介護支援サービス」
・自宅などで利用できる「居宅サービス」
・介護保険適用で施設に入居できる「施設サービス」
・介護施設・事業所と同じ地域の住民を対象とする「地域密着型サービス」


以下で、各サービスの概要についてご紹介しましょう。

居宅支援介護

介護支援専門員(ケアマネジャー)が、要介護認定を受けた本人およびその家族と相談しながら、介護保険サービスの利用計画書であるケアプランを作成します。

また、介護保険サービスの効果を調べるモニタリングの作業を行ったり、各種サービス事業者間の調整役となったりすることで、より質の高いサービスを利用できるようにサポートを行うものです。

居宅サービス

自宅やサービス付き高齢者住宅などで利用できる介護保険サービスで、次の4つに分類されます。

●訪問サービス
介護の専門職が、要支援・要介護認定を受けた人の自宅などを訪問して提供するサービスです。

【例】
・訪問介護
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション

●通所サービス
自宅やサービス付き高齢者住宅などで生活する要支援・要介護認定者が、施設・事業所に通うことで利用するサービスです。

【例】
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)

●短期入所サービス
施設・事業所に利用者が短期間だけ宿泊できるサービスです。

【例】
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

●その他のサービス
上記のほか、次のようなサービスも利用できます。

【例】
・特定施設入居者生活介護
・福祉用具貸与、福祉用具販売
・居宅介護住宅改修費
・居宅療養管理指導

施設サービス

介護保険適用にて入所できる、以下のような施設です。入居後は手厚い介護を受けながら生活できます。

●特別養護老人ホーム(特養)
原則要介護3以上の人を入居対象とし、入居後は手厚いケアを受けることができます。

●介護老人保健施設(老健)
集中的にリハビリに取り組める入所施設です。病院を退院後、すぐに自宅での生活を送ることが不安な場合などに利用できます。

●介護療養型医療施設
病院の療養病床などで、医療依存度が高めの方を対象とする入所施設です。2024年3月末を期限(介護医療院への移行期間)としてすでに廃止が決まっています(2022年8月時点)。

●介護医療院
介護療養型医療施設に代わる入所施設として、2018年に創設されました。2022年3月末時点では、全国で677の施設が開設されています。

地域密着型サービス

介護施設・事業所と同じ地域に住んでいる方のみを利用対象とするサービスです。具体的には、次のようなサービスがあります。

【例】
・小規模多機能型居宅介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・認知症対応型通所介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護

介護保険サービス利用時の自己負担割合は?

次に、介護保険サービス利用時の自己負担額がどのように決まるのかを見ていきましょう。あわせて、施設入所で介護保険適用外となる住居費や食費を軽減できる「負担限度額認定」についてもご紹介します。

介護保険サービス利用時の自己負担割合はどれくらい?

現行の制度では、介護保険サービスを利用した場合に支払う自己負担額は、収入に応じて1~3割のいずれかに該当します。

●自己負担額3割となる人
次の(1)と(2)の両方に該当する方は、3割負担になります。

(1)前年の合計所得金額が220万円以上
(2)前年の合計所得金額と年金収入の合計額について
   ・同一世帯で65歳以上が一人の場合は340万円以上
   ・同一世帯で65歳以上が二人以上の場合は463万円以上


●自己負担額2割となる人
次の(1)と(2)、または(3)と(4)を満たす方は、2割負担になります。

(1)前年の合計所得金額が220万円以上
(2)前年の合計所得金額と年金収入の合計額が
   ・同一世帯で65歳以上が一人の場合は280万円以上340万円未満
   ・同一世帯で65歳以上が二人以上の場合は346万円以上463万円未満


(3)前年の合計所得金額が160万円以上220万円未満
(4)前年の合計所得金額と年金収入の合計が
   ・同一世帯で65歳以上が一人の場合は280万円以上
   ・同一世帯で65歳以上が二人以上の場合は346万円以上


上記のいずれにも該当しない方は、1割負担となります。

負担限度額認定とは

本来、介護施設に入居あるいはショートステイを利用した場合、介護保険サービスの対象外となる住居費や食費などは全額自己負担になります。しかし、負担限度額認定制度を利用することで、それらの費用を軽減できるケースがあるのです。

低所得者を対象としているため利用者は限られますが、対象となれば出費を抑えられます。条件に該当するかどうかは自治体の介護保険課などで確認してみましょう。

一方で、有料老人ホームは対象外なので注意してください。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省『介護保険施設における負担限度額が変わります』

民間の介護保険とは?

介護保険制度に基づく公的な介護保険だけでなく、民間企業が提供している介護保険もあります。

公的介護保険と民間の介護保険の違い

40歳以上で自動的に加入する公的な介護保険と違い、民間の介護保険は年齢の制限がなく、任意でいつでも加入可能です。 保険料にもさまざまなプランがあり、自分の収入に合わせた納付が可能です。

なお、民間の介護保険は現金給付が基本です。要介護認定などを受ける必要はなく、要件を満たせば介護費用として所定の現金が給付されます。

メリット・デメリット

民間の介護保険に加入するメリットは、現金を受け取れる点です。
契約内容により、要介護・要支援状態になったときに介護資金の一部として現金が受け取れるので、いざというときに備えたい人には適しているでしょう。

また、公的介護保険の対象にあたらない方でも、民間の介護保険であれば要件さえ満たせば給付を受れ取れる点も特長だと言えます。

デメリットとしては、公的介護保険の保険料に加えてさらに民間保険の保険料を支払う必要がある点があげられます。

また、民間の介護保険のなかには公的介護保険と連動して給付条件を定めている場合もあります。その場合、介護保険制度が改正されると民間の介護保険の給付条件が一緒に変わってしまうこともあるので注意が必要です。

介護保険制度ができた経緯と今後について

最後に、介護保険制度が施行されるまでの経緯と、今後の動きについてご紹介します。

制度ができた経緯・成り立ち

日本における老人福祉制度は1960年代に始まり、1970年代には老人医療費の無料化が行われました。しかしその結果、社会的入院や寝たきりの高齢者が増加。社会保障費としての医療費が増大しました。

1990年代に入ると高齢化が急速に進展。それまでの老人福祉制度、医療体制では将来的な介護問題に対応できないことが明確になり、新たな制度を構築する必要が生じたのです。

1990年代後半からは、核家族化や介護者の高齢化に対応するべく、必要なサポートや自立支援を目的とした新制度成立に向けた動きが進み、2000年に介護保険制度が成立。高齢者の介護を、社会全体でサポートする新たな仕組みが導入されたわけです。

3年に一度改正される

介護保険制度はニーズの変化に合わせて見直しの必要があることから、原則として3年ごとに改正が行われています。

2000年の制度施行から現在に至るまでの改正の傾向としては、介護予防への取り組みを重視するようになったこと、地域資源で高齢者をケアできる仕組みを導入していったこと、などがあげられます。

【関連記事】
介護保険法改正、2021年と2024年の内容は?

日常生活支援総合事業など要支援の方への対応も強化

2017年4月からは、介護予防・日常生活支援総合事業(通称:総合事業)がスタート。
「要支援」認定を受けた場合、以前は国が定めた全国一律の基準で「介護予防訪問介護サービス」「介護予防通所介護サービス」が提供されていました。

2017年度からは、この2つのサービスが自治体の総合事業へと移行。地域の実情に応じた多様なサービスを提供できるような改正が行われたのです。

総合事業で提供されるサービスは、要支援1・2の認定を受けた方に加えて、認定を受けていない方でも自治体が策定した基本チェックリストで事業対象者と判定されれば利用できます。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省『介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン』

介護保険外サービスも増えていく

介護保険外サービスとは、介護保険が適応されず利用者がサービス料金の全額を自費で支払う介護サービスのことです。

介護保険適用のサービスは、利用者が日常生活を送るうえで最低限必要なケア・サポートを提供するのが基本です。一方の介護保険外サービスでは、豊かな人生を送るための支援を行っています。

たとえば、次のようなサービスがあります。

・食事を自宅に届けてくれる食事宅配サービス
・自宅に来て散髪・整容(洗顔や整髪など)をしてくれる訪問理美容サービス

身だしなみを整えることで自信がつき、前向きに過ごせるようになります。 また、身体を清潔に保つことで菌の繁殖を防ぐ効果もあります。

また、介護保険適応範囲内の訪問介護では、植木の水やりやペットの散歩などの生活援助は原則行えません。しかし、介護保険適用外サービスとしてのもの(たとえば家事代行や生活支援)であれば依頼できます。

全額自己負担なので費用はかかりますが、今後ニーズはさらに高まっていくと予想されます。

介護保険制度をうまく活用して無理なく介護を

介護保険制度は、高齢者の生活や自立を支援するための制度で、保険者を自治体とし、被保険者を私たち地域住民としています。

介護保険制度を定める介護保険法は3年ごとに改定が行われ、社会の実状やニーズにあった内容となるように継続的な検討が行われています。

介護保険について行政の最新の動きに関する情報を当サイトなどで収集をしておいて損はありません。 なお、介護保険サービスには福祉系と医療系のサービスがあります。福祉系サービスを利用した場合はその半額、医療系サービスを利用した場合はその全額が医療費控除の対象です。

介護費用を捻出するうえでは、節税も大事になってきます。医療費控除を活用しながら、賢く介護保険サービスを利用しましょう。

 
ページトップ