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口のケアを怠ると認知症になりやすい!? オーラルフレイルの危険性と予防について|認知症のコラム

口のケアを怠ると認知症になりやすい!? オーラルフレイルの危険性と予防について|認知症のコラム

更新日:2020.12.02

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認知症予防のための情報や商品が世にあふれていますが、意外と見落としがちなポイントとして、口腔ケアの重要性が説かれています。噛むことや飲み込む機会が少なくなることで、脳への刺激が減少し認知症になりやすくなるためです。

今回は、口腔機能の衰えである「オーラルフレイル」が引き起こす症状や認知症との関連性について触れていきます。

体の自由も意欲も奪われていくオーラルフレイルの危険性

オーラルフレイルとは「Oral」(口腔)と「Frailty」(虚弱)を組み合わせた造語で、歯周病やだ液の分泌量の低下といったあらゆる悪条件が重なることで口腔内の機能が低下し、従来どおりの食事ができなくなるなど心身両面で衰えがみられる現象を指します。一度オーラルフレイルが始まると負のスパイラルに陥り、近い将来介護が必要になるほど悪化していきます。

「フレイル」という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、老年症候群にみられる症状である「虚弱」や「衰弱」を表す名称として、日本老年医学会が2014年に提唱を始め徐々に定着してきました。

例えば、咬合力(噛む力)が衰えてくると、硬い食べ物を咀嚼することが難しくなります。やがて、食事も噛みやすい軟らかい食品主体へと変わっていくことでますます筋力は衰えていきます。人間は噛むことによってだ液が分泌されますが、だ液には食べ物の消化を助けてくれる作用があるため、よく噛まないまま飲み込むと消化不良で胃腸への負担も大きくなります。

こうして食べることが億劫になると、やがて食欲もなくなり、だ液の分泌量も減っていきます。だ液には口腔内に溜まる雑菌の繁殖を防ぐ効果もあるため、だ液量の減少によって歯周病を発症し、やがて歯が欠損してますます自由に食事ができなくなるなど負のスパイラルは広がっていくばかりです。

オーラルフレイルゼロを目指した「8020運動」

厚生労働省と日本歯科医師会では、年を取っても自分の歯で食事ができる状態でいることを目指した「8020(ハチマルニイマル)運動」を提唱しています。一般的に、歯の本数が20本を下回ると咬合力の低下が著しくなると言われていることから、「80歳で20本以上の歯を保つ」ことを目標にこの名前が付けられました。

歯みがきの重要性を説き、毎日高齢者に実践してもらうことで虫歯や歯周病リスクを低減できます。また、介護予防プログラムの一環で口腔ケアをレクチャーする機会が増えてきたことで、高齢者と暮らす家族に対してもオーラルフレイル予防への意識が高まってきました。2016年の調査結果では8020運動(80歳で20本以上の歯を保つ)の達成率は51.2%でした。もともと2022年までに50%に到達することを目標としていましたが、6年も前倒しで達成したことは、着実にオーラルフレイル予防への意識が浸透してきた結果と言えるでしょう。

オーラルフレイルと認知症の関係性

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口腔機能の低下は認知症とも密接に関係しています。これまで説明したとおり、咀嚼機能が弱まることで健康は阻害されますが、同時に噛む機会が減り脳への刺激が少なくなることで脳血流量は減少します。専門家による研究結果では、咀嚼することで前頭部に15%以上血流量が増加することが報告されています。

また、咀嚼機能の低下により食べられる食品が限られてくることで、健康でいるために必要な栄養素が脳へ吸収されず、認知機能が衰えていくことがあります。

さらに、歯周病が悪影響を与えることもあります。歯茎の炎症部分から細菌毒素などが発生し、血液を介して神経損傷を引き起こすためです。体内に炎症箇所があると、血管が障害されて動脈硬化が始まるため、これも認知症になる危険因子をはらんでいると言えます。

そして、社会との接点が断たれることも認知症の進行と深く関係しています。オーラルフレイルになると体調不良のみならず、歯の欠損による外見やしゃべり方の変化を気にして、人前に出たくなくなる(=自信の喪失)恐れがあります。自宅に引きこもりがちになり人と話す機会がなくなると、ますます脳へ受ける刺激が少なくなり認知症悪化に拍車がかかるのです。

オーラルフレイルのチェック項目

オーラルフレイル予防のためには、まずは自分の口の中の状態を知ることから始まります。以下、日本歯科医師会が定めたオーラルフレイルのチェック項目をもとに自身の口腔内の状態をチェックしてみてください。

質問項目

はい

いいえ

半年前と比べて、堅い物が食べにくくなった

2

0

お茶や汁物でむせることがある

2

0

義歯を入れている

2

0

口の乾きが気になる

1

0

半年前と比べて、外出が少なくなった

1

0

さきイカ・たくあんくらいの堅さの食べ物を噛むことができる

0

1

1 日に 2 回以上、歯を磨く

0

1

1 年に 1 回以上、歯医者に行く

0

1

合計の点数が

0~2 点 オーラルフレイルの危険性は低い
3 点 オーラルフレイルの危険性あり
4 点以上 オーラルフレイルの危険性が高い

出典:東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島勝矢

オーラルフレイルの予防方法

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日ごろの心がけでオーラルフレイルは確実に予防することは可能です。主な予防法は以下のとおりです。

歯みがきを習慣づける

8020運動でも触れたとおり、日々の歯みがきはオーラルフレイル予防の最たる基本です。できれば毎食後の1日3回、最低でも就寝前1回の歯みがきを習慣づけるようにしてください。また、歯ブラシを動かすことは手指の運動にもなるため、認知症予防にも効果的です。

定期的に歯科検診を受ける

歯周病や虫歯といった歯の病気は、いざ患ってしまうと完治するのに時間がかかります。そのため、定期的に歯科を受診し、病気の早期発見に努めるとともに、歯科医からのアドバイスも守るようにしてください。可能ならば3か月に1度くらいの頻度で受診するようにしましょう。

滑舌の機能を鍛える

口を大きく開けて言葉を発することも重要なトレーニングとなります。

「パ行(パピプペポ)」... 唇をしっかり閉じることによって発音する
「タ行(タチツテト)」... 舌を前歯の裏側に付けて発音する
「カ行(カキクケコ)」... 舌を喉の奥の方向へ引っ込めて発音する

この3行を意識的に発音すると効果的です。また、「東京特許許可局」「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ~」などの早口言葉を練習するのもよいでしょう。

バランスのよい食事を心がける

健康でいるための基本はやはり食事です。栄養バランスを考慮した食事を1日3食、なるべく決まった時間に取るようにしましょう。その際は、自分の歯でしっかりと食べ物を咀嚼すること。義歯(入れ歯)の場合でも同様です。

終わりに

食べることとしゃべること。口を使わずに人間は生きてゆくのは難しいものです。それだけにオーラルフレイルによって健康と自由を奪われてしまうのは、とても辛いことなのです。認知症予防のためにも、日々の口腔ケアを徹底しオーラルフレイル予防に努めてください。

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