介護のお役立ちコラム

介護うつにならない・ならせないために、今一度見直したい

介護うつにならない・ならせないために、今一度見直したい"家族"としての役割|介護のコラム

更新日:2016.11.07

長期にわたり年老いた家族の介護にあたっていると、急な疲労や虚無感に襲われ、不安で何事も手につかなくなったり、夜眠れなかったりといった症状に陥ることがあります。こういった症状は一般的に「介護うつ」と呼ばれ、介護者ならば誰でも陥る可能性をもっています。

近年、介護の疲れやストレスによって、家族が寝たきりの高齢者を殺害してしまうといった悲しいニュースが続いています。このような事件は、介護者の憂うつな状態が改善されないまま、その延長で起こる悲劇と言えるでしょう。

今回は、介護に携わる家族にどのような負担が生じるのかその現実と、介護うつにならないための改善策を見ていきましょう。

介護うつの症状

介護うつとは、その名のとおり、介護が原因で発症するうつ状態を指します。ある程度の期間、家族の介護に携わっていると「こんな生活がいつまで続くんだろう?」といった将来への漠然とした不安を感じるようになります。

また、介護を受ける方が認知症の場合、本人のために行っているはずの介護を嫌がられたり、ひどいケースでは暴言や暴力となって介護者に降りかかってきたりします。

こういったことが積み重なり「献身的に尽くしているのに報われない」といった虚無感を覚えるようになると、やがて介護うつを発症してしまうのです。 介護うつの状態になると、「朝起きても気分が優れない」「趣味の時間も楽しんで取り組めない」「作業にも集中できない」といった症状が現れます。普段明るく社交的な人でも、別人のように抑うつ的になってしまう可能性が十分にあります。

特に、介護離職などをして家にひきこもりがちになり、介護者と被介護者ふたりの関係ができてしまうと、誰にも相談できずストレスだけが日々積み重なっていくのです。

夫/妻ひとり、子どもひとりに介護を集中させてはならない

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年老いた家族の介護にあたる場合、主たる介護者はその配偶者または子どもになります。介護が必要な年齢に達するころには、子どもはすでに独立しているケースが多く、やはり配偶者が主な介護者になるでしょう。

厚生労働省の調査によると、被介護者のいる世帯の64.1%は家族・親族が同居いており、介護者は、配偶者27.5%、子ども20.9%、子どもの配偶者15.2%と発表されています。男性が30.6%、女性が69.4%の比率です。ちなみに、同居以外では事業者13.3%、別居の家族など9.8%が被介護者のお世話をしています。

しかし女性(妻や娘、嫁)が夫(父親や義父)を介護する場合、体位変換ひとつとっても体力的に負担が大きいものとなります。さらに重度の認知症で夜中に暴れたり暴力を振るったりといった症状が見られるケースでは、女性が男性を取り押さえるには限界があります。「こんな思いをしてまで介護しなければいけないのか......」と精神的にも肉体的にも傷つき、介護うつの引き金となってしまうでしょう。

また、夫と妻の両方とも介護が必要な場合あるいはどちらかが亡くなっている場合は、子どもが主たる介護者になります。ここで注意したいのが、きょうだいがいる場合、ひとりに介護の負担を集中させないようにすることです。もちろん、これは配偶者が介護をする際にも言えることです。 ひとりに介護が集中した場合、「なぜ私だけが面倒を見なければいけないのか......」という不満を抱え、介護うつになる可能性が非常に高くなります。

編集部に寄せられた声のうち、ある家庭では、両親と同居している長男が骨折した父親の通院介助を週に数回、休日返上で行っていました。見かねた長女(両親と別居)が帰宅した際、気を遣って「気晴らしに一緒に食事でも行こう」と誘ったところ、長男は「そんな悠長なことを言っているヒマがあったら少しは手伝え!」と姉を怒鳴りつけたそうです。普段の状態なら「俺のことを気遣ってくれているんだな」と思うところですが、介護によるストレスは冷静な思考や相手の気持ちを推し量る思考さえも失わせてしまうのです。

現実的に、遠方よりは近くに住む子ども、息子よりは娘が主たる介護者となるケースが多いようですが、きょうだい全員に不公平が生じないよう、誰もが納得する形で介護に携わることが理想です。

「相談」「情報収集」「介護サービス」「介護施設」......介護うつ予防のためにできる4つのこと

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人に相談する

一番は、親しい友人や近所の人に、自らが抱えている悩みを打ち明けることです。家庭の事情を人前で話すのはなかなか勇気のいることですが、高齢化が進み、介護が必要な人が増えている世情からも、意外なところで共通の悩みを抱えた人と出会えるかもしれません。

情報を集める

インターネットの普及により、数々のWebサイトで認知症や介護についての情報を得られるようになりました。新聞や週刊誌も同様です。最近は福祉・介護を専門に扱うメディアも増え、経済誌などでも特集される機会が多いほどです。

知らなかっただけで、実は国の制度を利用して経済的な援助を受けられたり、またストレスへの対処法もわかるかもしれません。正しい知識は、介護うつを乗り越える「力」となります。

さがしっくす」でも認知症や介護に関する様々な情報を発信しています。ぜひ参考にしていただければ幸いです。

介護サービスを利用する

どうしても介護がひとりの手では負えない場合、介護サービスを積極的に利用しましょう。昼間受け入れてくれる通所介護サービス(デイサービス)、冠婚葬祭などで家を空けなくてはいけないときなどに1日単位で利用できる短期入所生活介護(ショートステイ)などが代表的なサービスです。

被介護者の介護度によって利用できる日数・時間が異なるので、ケアマネジャーと相談して適切な利用プランを作成しましょう。

【関連記事】
「要介護2」ならデイサービスは週何回? 要介護度(要支援1~2・要介護1~5)別の利用サービスまとめ|介護のコラム

介護施設を利用する

もし、思い悩んでしまった家族がいたら、老人ホームなどの介護施設への入居を選択肢に含む方法もあります。

アクサ生命が要介護状態になったときに介護を受ける場所について子世代、親世代それぞれの意見を聞いたところ、以下の結果が出ています。

●子世代と親世代それぞれの想定
40代・50代で、親の介護経験がない人に対する、「自分の親が要介護状態になったらどこで介護を受けてほしいと思うか」の回答は、介護施設(老人ホームなど)38.4%、親の自宅32.4%、医療施設(病院など)8.4%。

一方、60代・70代の親世代に、自身が要介護状態になったらどこで介護を受けたいと思うかの回答は、(自身の)自宅36.4%、介護施設(老人ホームなど)34.0%、医療施設(病院など)13.4%。

●親世代の希望
60代・70代で、自身が要介護状態になったときに「自宅での介護を望む」人に対する、「もし、子どもから介護場所として 介護施設(老人ホームなど)を提案されたらどのように感じるか」回答では、自宅や家族と離れるのは寂しい83.2%、迷惑をかけてしまうので仕方がない82.6%、介護施設を利用してもいい59.2%。

離れていても、ちょっとしたメッセージが家族を助ける

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もしあなたが、介護が必要な家族から遠く離れていて、なかなか手伝えなくてもできることはあります。それは、介護をしている家族と密に連絡をとることです。

これも編集部に寄せられた声のひとつです。レビー小体型認知症の夫をもつ主婦がいて、遠方に住む3人の息子たちに頼ることなく自宅で介護にあたっていました。ときに不条理なことを言われたり、急に暴れる夫をなだめたりと、心身ともに疲れ切った状態でした。

しかしLINE(スマートフォンで利用できる通信ツールのひとつ)を始め、日々の介護のなかで起こった出来事を絵文字や写真と一緒に息子たちに送ることでだいぶ気持ちが楽になり、ストレスも軽減できたと言います。

こうした、気軽に使える通信ツールも、介護者の精神的負荷(ストレス)を和らげる重要な役割を担っているのです。

家族間でのすり合わせと思いやりが肝要

介護はひとりで抱え込むには重すぎる問題です。決してひとりの家族に責任を押しつけるのではなく、できることとできないこと、そして自分はどこまで携われるのかを家族の間で話し合うことが大切です。

たとえ自分が直接介護をできなくとも自分以外の家族の事情を理解するよう努めることは最低限の責任であり、家族が介護うつ状態になることなく健康でいられるために必要なことなのです。

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