介護のお役立ちコラム

入居者のよいところを見つける「ニヤリホット」とは?|介護のコラム

入居者のよいところを見つける「ニヤリホット」とは?|介護のコラム

更新日:2019.07.10

ニヤリホットとは

老人ホームに高齢者を預けている家庭ならば、「毎日退屈に過ごしているのではないか?」と、入居者のことがつい気がかりになってしまうことがあるでしょう。入居者は実際、ベッドの上で過ごす時間も多く、変化に乏しい環境から塞ぎ込んでしまう人も少なくないようです。しかし、スキルの高い介護士は常に入居者の動向に目を配り、本人の可能性を見つけて励まし、日々の意欲を高めるための努力を怠りません。今回は、そんな介護の現場を希望に満ちたものにするための取り組みをご紹介します。

発想の転換で、高齢者のやる気や可能性を見出す「ニヤリホット」

高齢者のやる気や可能性を見出す「ニヤリホット」

老人ホームなどの高齢者施設で、毎日の暮らしの中で思わずニヤリと笑顔がこぼれる瞬間や、ホッと心が温まるエピソードなど、入居者のよいところを見つけ出す取り組みを「ニヤリホット」と呼びます。

ニヤリホットは、長谷工グループが運営する有料老人ホーム「ライフ&シニアハウス井草」(東京都杉並区)が始めた取り組みです。同施設では、日々起きるニヤリホットを現場職員が記録に残し情報共有をしていましたが、取りまとめた内容が書籍化されたり、新聞などでもたびたび取り上げられたりして一躍その名前が有名になりました。

ニヤリホットは、もともと製造現場や建設現場などで用いられる「ヒヤリハット」から派生した言葉です。さまざまな危険が潜む重工業などの製造現場では、あやうく大事故につながるようなヒヤリとする場面が多く存在します。ヒヤリハットは、働く人の間でそういった危険予知をきちんと認知するときに用いられるものですが、医療や介護の現場でも同様に使われてきました。

例えば、車いすから自力で立ち上がろうとする人を見たとき、誰もが転倒リスクを思い浮かべることでしょう。これはヒヤリハットに該当しますが、「自力で立ち上がろうとしている。やればできるんだ!」と思わずうれしくなってしまうのがニヤリホットです。まさに発想の転換と言えますが、入居者たちと毎日密に接する介護士たちにとって、こういったやる気や可能性の発見は大切なコミュニケーションのツールになります。

ニヤリホットが生み出す効果

他人のよいところを見つけて褒める。ごくシンプルな取り組みかもしれませんが、たった一つのニヤリホットによって、場の雰囲気が好転することも考えられます。

例えば、今までできなかったことが本人のやる気や努力によって少しずつできるようになってきたら、きちんと声に出して労をねぎらいます。シャイな人は謙遜するかもしれませんが、褒められて嫌な気持ちになる人はいません。周囲の入居者も巻き込んで賞賛してあげれば、本人はますます自信がつくでしょうし、ほかの高齢者たちも「よし自分も頑張ろう」と発奮してくれるかもしれません。

よく介護現場で働く職員は「高齢者から教わることはたくさんあって刺激になる」と口にしますが、入居者の中には実に多彩なスキルや知恵を持った人が大勢います。仕事や日常の会話の中で、これらの技能が力を発揮する場合があります。

例えば、ある施設でエントランスに飾る花や掛け軸などの装飾品をどうしようかという話が出たとき、一人の入居者の女性が「では、私が書いてあげる」と筆と墨汁で、さらりと揮毫(きごう)してしまいました。あまりの達筆さに、以後定期的にその女性にエントランスに飾る作品を書いてもらうようにしたそうです。実はその女性、かつて都内にある料亭で女将として働いていて、毎日の献立を毛筆で書いていた経験がありました。気難しくプライドの高い入居者として職員の間で知られていましたが、これを機に、書道に使命感とやりがいを感じてもらえるようになり、介護士との日々の会話もスムーズにいくようになったと言います。

会話を切り出すときの注意点

ニヤリハットを生み出す会話の注意点

ニヤリハットにつなげるために、現場の介護士たちは常に考え、工夫しています。まずは取りかかりとなるコミュニケーションが重要になりますが、これにはいくつかの注意点があります。プロの介護士だけではなく、長年一緒に暮らしていた家族でも気を付けなければいけないところです。

時代背景や育った環境などを考慮する

高齢者とひとくくりに言っても、70歳と90歳とでは育った環境や時代背景は大きく異なります。その人の生まれ育った環境、世代ごとの価値観などを考えて接しなくてはなりません。

例えば「新型スマートフォンの発売」が話題になった場合、高度経済成長期に現役だった70代は大量生産・消費に抵抗のない世代のため、「良い物が出たのなら買い替えた方がいい」と同調してくれる人が多いかもしれません。一方で、戦争を経験している今の90代は質素倹約を重んじるため、「物はできるかぎり大切に使いなさい」と諭されて、相手を嫌な気持ちにさせてしまうかもしれないのです。

戦争の話をこちらから切り出すのはNG

戦争は辛く悲惨な思い出ばかりです。みだりに戦争時代の話を聞こうとすれば、悲しい思い出がフラッシュバックしてしまい、暗い気持ちにさせてしまいます。相手から切り出してこないかぎり、家族や介護士から戦争の話を持ち出すのはタブーと考えてください。

基本的に聞き手に徹する

基本的には、相手の会話の中からその人の興味などを見つけ出すことができます。ひと通り話を聞き出して、その人の話に合う小ネタや質問などを用意して次回のコミュニケーションにつなげることが可能です。

会話を盛り上げるためのあいづちは重要

相手が話をしているときに、冷めた口調で「ハイハイ」と返事をしていると、「ちゃんと話を聞いているのか」と不審に思われてしまいます。少し大げさなくらいにあいづちを打つことで、相手は自分に興味を持ってくれていると安心します。また、話が終わったときには「勉強になりました」「いろいろ教えてくれてありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えることも大切です。

より良い介護の現場をつくるために

褒めること、感謝を伝えることでその場の雰囲気は確実によくなり、人間関係も円滑になります。介護士が「お客さまは神様」の精神で丁重に接するホスピタリティも重要ですが、立場の垣根を超えて素直に相手を認め一緒に喜んであげることは、より良い介護の現場をつくるために必要なことなのです。

■参考文献
『介護の現場で使える 会話の引き出し便利帖』布施克彦著 翔泳社

■参考記事
お年寄りも働く人も笑顔に! "ニヤリ・ホット"で職場づくり_ HELPMAN JAPAN
当社独自の取り組み"にやりほっと"が書籍化!|長谷工シニアホールディングス

 

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