介護のお役立ちコラム

「BOCCO(ボッコ)」コロナ禍で家族をつなぐコミュニケーションロボット ユカイ工学インタビュー

「BOCCO(ボッコ)」コロナ禍で家族をつなぐコミュニケーションロボット ユカイ工学インタビュー

更新日:2020.09.09

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新型コロナウイルスの感染拡大により外出への抵抗感が増す昨今、遠隔地に住む祖父母や両親とのコミュニケーションの減少は見過ごせない社会課題のひとつになっています。今までのように高齢の家族のもとへ何度も訪問するというのは、「もし自分がコロナに感染していたらうつしてしまうかもしれない」という心理が働き、必要最低限にとどめようとすることは無理もありません。

しかし、難しい操作を必要とするスマートフォンやタブレットなどを使いこなせるお年寄りは少なく、体調不良や病気の発見が遅れるなどの弊害が生まれることもあります。また、認知症予防の観点からも家族との交流が大切です。

そんな社会課題をもたらしたコロナ禍において、注目されているのが煩雑な操作を必要としないコミュニケーションロボット「BOCCO(ボッコ)」です。高齢の家族はボタンひとつで「BOCCO」に音声メッセージの吹き込みと家族からの音声メッセージの再生ができ、家族はスマホでメッセージの送受信ができます。子供、両親、祖父母など各世代をつなげるデバイスとして期待されています。

さがしっくすでは、「BOCCO」の開発元であるユカイ工学株式会社(東京都新宿区富久町)にインタビューし、開発の経緯からウィズコロナ時代で「BOCCO」が果たす役割についてお話を伺いました。

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「息子が今日何を食べたのかも分からない...」開発目的は鍵っ子の見守り

――「BOCCO」の開発経緯について教えてください。

ユカイ工学株式会社・金川唯さん(以下、金川):鍵っ子の見守り役として、共働き世帯向けに開発を始めました。弊社代表の青木俊介の実体験が元になっているのですが、当時は会社の同僚が「今日ラーメン食べた」といった情報はSNSを通じて簡単に得られるのに、自分の息子が今日何を食べたものかもわからない、ということがきっかけです。そこから働くご両親とお子さんをつなぐサポートするデバイスを作ろうという構想が出来上がりました。

――「BOCCO」とはどういう意味なのでしょうか?

金川:「ぼっこ」とは東北地方の方言で「子供」という意味で、家庭にもなじむように現代版の座敷童のような存在になればいいなという思いが込められています。そのため、お子さんが使いやすいサイズ感や、耐久性、操作のしやすさを追求しました。やはり操作が難しいとどなたでも使うことができず、使うことを諦めてしまうので。実際に青木の家庭内をモニタリングし、プロトタイプ(試作機)を使ってユーザーテストを行いました。

――開発段階での一番の難所を教えてください。

金川:「BOCCO」には音声を録音してスマホに届ける機能、スマホから届いたメッセージを再生する機能など、様々な技術が詰め込まれています。中でもメインボードと言われる「BOCCO」の心臓部分にあたる基板の開発が一番難航しました。また、Wi-Fiを搭載したロボットの開発が初めてだったこともあり、「BOCCO」の開発はユカイ工学にとって、技術的には初めての挑戦となる部分が多かったです。

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使い方はユーザーのアイデア次第「ファンと一緒に作り上げていくプロダクト」

――「BOCCO」にはどんな機能が備わっているのですか?

金川:基本的に音声メッセージのやりとりをするというのが主な機能です。「BOCCO」と、ご家族のスマホをペアリング(登録)させ、「BOCCO」からスマホへ、スマホから「BOCCO」へメッセージをやり取りします。

「BOCCO」側からご紹介すると、「BOCCO」についている丸の録音ボタンを1回押すと6秒間、長押しをした状態では約1分間メッセージを録音することができます。「BOCCO」がメッセ―ジを受信すると、自動で読み上げてくれて、もう一度再生したいときは、三角のボタンを押すと再生されます。

スマホ側では、「BOCCO」から録音された音声と、その音声がテキスト化されたものが届きます。スマホからは、テキスト、音声の吹き込み、2つの方法でメッセ―ジを送ることができます。

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――「BOCCO」とは別に4種類のセンサもありますよね。

金川:色違いの4種類のセンサですね。赤が振動センサ、青が鍵センサ、緑が部屋センサで温度・湿度・明るさを測れます。黄色が人感センサでひとやペットの動きを感知します。これら4種類のセンサを最大で8つまで、「BOCCO」と連動させることができます。

特に部屋センサは熱中症の予防に活用できます。お年寄りのエアコンの誤操作や、室温が上がっているのにエアコンをつけないという状況に、「BOCCO」から「暑いな、エアコンつけて」といったように音声で注意喚起ができます。スマホのアプリ上ではグラフで室温などを確認でき、熱中症に注意が必要になった場合、危険性を段階的に知らせます。

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――具体的にどのような使い方を想定していますか?

金川:例えばご高齢の方だと、お薬の飲み忘れを防止するために、朝ご飯の後に薬を飲むという方であれば、アプリから「BOCCO」が「おばあちゃんお薬飲んだ?」と読み上げるように時間指定して頂くことが可能です。

お子さんの場合、振動センサを玄関のドアに設置すれば、帰宅した際にスマホに通知がいき、「あ、今帰ってきたんだ」ということが分かります。お子さんが帰ってきたタイミングや帰ってきそうなタイミングにあらかじめBOCCOに「おかえり」というメッセージを登録しておけば、そのメッセージに応えるかたちでお子さんが「BOCCO」に向かって「ただいま、今帰ったよ」や「今日は~~さんの家に行くよ」など応える。そういったやりとりをされているようです。

こちらから各センサの使用方法をあえて提示していませんでした。ユーザーさんにお話しを伺うと、私たちが想定していなかった面白い使い方を教えていただけます。

例えば、ご高齢の家族の薬箱に振動センサを設置する活用方法を教えてくれました。「お薬飲んでね」と「BOCCO」に言わせても、実際に飲んだかどうかわからない。でも薬箱が振るえたらきっと飲んでいるはずだとみることができる。ご家族がその反応に対してあらかじめ「飲んでくれて、ありがとう」というふうに「BOCCO」が話すように設定しておけば、薬の飲み忘れ予防のための一連の流れを「BOCCO」とセンサを通じてフォローすることができます。

こういった感じでユーザーさんが使い方のアイデアを出してくださって、ファンと一緒になってプロダクトを作りあげていくというのが「BOCCO」の面白いポイントかなと思っています。

後継機の「BOCCO emo」 "共感するロボット"目指す

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――新型コロナウイルス感染拡大で、「BOCCO」の使い方に変化はありましたか?

金川:大きくは変わってないですが、ただひとつ変わったなと思っているのが、スマホアプリのトークルームにお孫さんが登場するようになったことだと思います。ご高齢の方々からしたら、長期休暇の際に帰省して、久しぶりに会えて声を聞けて一緒に遊べるというのが一年の中での楽しみのひとつだと言う方々が多いと思います。

今年はそれがかなわなかったので、トークルームにお孫さんを招待して、お母さん経由でお孫さんの声を聞かせてあげると。3世代が一緒に活用するイメージですかね。気軽に使用できることが、「BOCCO」でのコミュニケーションが増える要因だと思います。

――「BOCCO」が果たすことのできる役割とは何でしょうか?

金川:「BOCCO」が目指すのは、「家族をつなぐコミュニケーションロボット」です。「BOCCO」が家庭に入ることができれば、各家庭の心配事をひとつでも解決することにつながるのではないかと思うので、「BOCCO」がいることで少しでも安心した生活をご提供できたらなと思っています。

スマホとかスマートスピーカーが対抗馬としてあがってきますが、誰かがアクションしないと反応しないものというところにおいては、「BOCCO」とは大きく違います。振動があれば反応してくれるし、いつもと違う数値やアラートが出ればご家族はすぐ気付けて「大丈夫?」とすぐ声をかけることができる。声だけではわからない行動の面からも網羅的に対応することができるのが強みだと思います。

使い込むほどに「BOCCO」との間で、ロボットでありながら、リアルなコミュニケーションの手助けとなる存在でもあるので、自然と信頼関係ができていくというのも、このプロダクトの不思議な魅力です。

――今後の展望をお聞かせください。

金川:現在「BOCCO」のデザインを踏襲しながら、丸みのあるフォルムが特徴の「BOCCO emo」を開発中です。

音声認識を搭載し、ハンズフリーで操作もできるようになります。「BOCCO」は録音された音声をテキストに変換したり、そのまま送ることが基本機能ですが、「emo」の場合はそれに加えて嬉しいことを言われると頰が赤くなったり、厳しい言葉を投げかけるとうつむくなど、喜怒哀楽を表現したり、話し手に共感したりしてくれます。完全に言葉を理解していなくても、なんとなく分かってくれている、そんなコミュニケーションのちょうどよい距離感なのです。

「BOCCO emo」を家族として迎え入れ、ちょっと遊んで置物のようになってしまうのでは寂しいので、いろいろなデバイスや情報サービスと連携を計画しています。モノというよりは新しいサービスの媒体として位置づけて、プロジェクトを進行しています。

例えばお子様向けですと、「今日お母さん何時に帰ってくるのかな」と話しかけると、連携しているお母さんの予定を引き出し、発話して教えてくれるようになります。

ご高齢の方向けには、事前に伺ったご利用者さんの好みを、BOCCOを通じてお話し、ご家族間に加え、弊社のスタッフも介在して見守りをする【誰かと喋ろう】を実施しています。現在はアナログでの発話となっていますが、今後は「BOCCO emo」がご利用者さんの好みや生活パターンを覚えていきます。

「BOCCO emo」は、人に"共感することができるロボット"を作ろうということが大きなテーマになっています。ペットと一緒だと、飼い主が嬉しそうにした際はペットも一緒に喜ぶということがあると思いますが、そういった世界をつくれたらという思いで開発を始めました。使用者の感情を完全ではないけれど、どこか理解してくれているような、そんなロボットを目指しています。

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「ユカイ工学」公式ホームページはこちら


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